VMware、サーバ組み込み型の仮想化ハイパーバイザを発表――仮想デスクトップの管理ソフト「VDM2」も今年中にリリース

 米国VMwareは9月10日、同社のフラッグシップ製品である仮想化ハイパーバイザ「ESX Server」のサーバ組み込みタイプを発表した。主要ベンダーのサーバ・ハードウェアに組み込まれ、今年末までに発売される予定だ。

 組み込み専用の「ESX Server 3i」は、いわゆるシン・ハイパーバイザと呼ばれ、まずはDellやIBM、HP製のサーバに組み込まれて出荷される。仮想化ハイパーバイザをサーバに組み込むことのメリットには、ハイパーバイザのインストール作業が不要になること、仮想インフラストラクチャの展開・運用管理が容易になることなどがある。

 VMwareのヨーロッパ担当マーケティング・マネジャー、トミー・アームストロング氏によると、ESX Server 3iの起動は「わずか数分」で済むという。「ESX Server 3iが起動したら、サーバから管理者パスワードとIPアドレスを求められるので、あとはそれらを入力すれば、仮想マシンを走らせる準備が整う」(アームストロング氏)

 VMwareはESX Server 3iを「汎用OSを持たない唯一のハイパーバイザ」と説明、汎用OSのメンテナンスに伴う手間から管理者を解放するとアピールしている。「ハイパーバイザの機能を損なうことなくOSだけを排除したことで、サイズは32MBに抑えられている。これは、(OSの)サービス・コンソール排除によるところが大きい」とアームストロング氏。システム管理については、同社の仮想化インフラストラクチャ管理ツール「VirtualCenter」を介してアクセス可能だ。

 仮想化ハイパーバイザを前もってサーバに組み込んでおくという方法には、操作のシンプルさに加え、信頼性とセキュリティが向上するというメリットもあるようだ。

 同社マーケティング・マネジャーのラグー・ラグラム氏は、「当社はESX Server 3iをサーバ・ハードウェアに直接統合するためパートナー各社と協力してきた。サーバの電源を入れてフル機能のハイパーバイザに直接ブートするだけで、仮想化の利点をだれでも簡単に享受できる。仮想化がシンプルになり、大手から中小に至るあらゆる規模のユーザーに受け入れてもらえると思う」と語った。

 ESX Server 3i上には上述のVirtualCenter以外にも、仮想マシンの移動を実現する「VMotion」や分散リソース・スケジュール管理機能「Distributed Resource Scheduler(DRS)」、高可用性ソフト「High Availability(HA)」、バックアップ・ツール「Consolidated Backup」といった「VMware Infrastructure 3(VI3)」の各製品を展開できるという。

 ハードウェア・ベンダーではESX Server 3iを組み込んだサーバを2007年末までに発売し、2008年いっぱい販売するとしている。IBMはすでに自社製品を発表している。

VirtualCenterと緊密に統合されたVDM2

 VMwareは、ESX Server 3iと同時に「Virtual Desktop Manager 2(VDM2)」も発表した。

 VDM2は、VI3を使って仮想デスクトップの運用管理を一元化する「Virtual Desktop Infrastructure(VDI)」の一部であり、VirtualCenterと緊密に統合されている。VDIはサーバ上の仮想マシンを介してユーザーにデスクトップ・イメージを送り、VDM2はエンドユーザーのロールと特権に応じて所定のデスクトップにリモート・クライアントを接続する。

 VDM2は現時点ではベータの段階にあり、今年末までには正式版がリリースされる見込みだ。

 VMwareのデスクトップ事業部担当ディレクター、ジェリー・チャン氏は、デスクトップの管理方法が変わりつつあることを強調する。「ユーザーは、デスクトップ基盤の管理方法を、従来よりも効率的な運用管理を可能にする一元的なデスクトップに変えつつある。仮想デスクトップにすれば、これまでサーバ・アプリケーションでしか実現できなかった信頼性、データ保護、ディザスタ・リカバリの機能を利用できる。また、多くの場所やデバイスからデスクトップに柔軟にアクセスできることも魅力だ」(同氏)

 調査会社IDCによると、デスクトップ仮想化ソフトの売上げは2011年までに20億ドル近くまで増える見通しだ。IDCのジョン・ハンフリー氏は、デスクトップ・コンピューティングでの仮想化ソリューションを、この数年で最もエキサイティングな技術革新の1つとみている。

 「クライアント・コンピューティングの仮想化により、エンドユーザーへのコンピューティング・リソースの提供を大幅に効率化することが可能になった。そのうえ、VDIなどを使うことで、今までどおりのユーザー・エクスペリエンスを提供しながらも、デスクトップの管理を一元化しデータのセキュリティとユーザーの生産性を改善できる」(ハンフリー氏)

(マネク・ドューバーシュ/Techworld オンライン英国版)

米国VMware
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提供:Computerworld.jp