VMware Fusionのレビュー
いくつかの手順を踏んでインストールを行うLinux向けのVMware製品とは異なり、Mac用のインストーラはシンプルなパッケージファイルになっていて、インストール作業は苦労もなく短時間のうちに終わる。きちんと時間は計らなかったが、2GBのメモリと2.2GHz Core 2 Duoプロセッサを搭載したMacBook Proで、10分弱ほどだった。VMwareのLinux版インストーラのような質問責めに遭わないと物足りないという人は、Fusionに付属するLinuxゲストOS用のVMware Toolsパッケージではやはりそうした質問と回答のやりとりが必要なことを知れば満足するだろう。
FusionにおけるVMのインストールと実行
Fusionをインストールしたあとは、標準のFeisty用ISOイメージを使ってUbuntu Feistyのインストールを行った。このインストールは難なく終わり、Fusionの下でFeistyを動かすまでに30分とかからなかった。
VMwareのWebサイトから入手できる2種類の“アプライアンス”と、LinuxのVMware WorkstationおよびVMware Serverで作成した仮想マシンも試してみた。私が確認した限り、Fusionはその他のVMware製品で使われている仮想マシンのフォーマットとも完全に互換性があるようだ。
唯一の違いは、ほかのVMware製品で作成した仮想マシンがVMware側で定められたディレクトリに格納されるのに対し、Fusionの新たな仮想マシンは自己完結型のアプリケーションのように見えるディレクトリに保存される(Mac OS Xのアプリケーションと同様の扱いを受ける)ことである。シェルでディレクトリを参照すると、Finderにはその仮想マシンを示すアイコンが1つだけ表示される。ほかのプラットフォームで作成した仮想マシンの場合は、そのディレクトリを開いて仮想マシンを表す.vmxファイルをクリックすれば読み込むことができる。さらに、読み込まれた仮想マシンはFusionのVirtual Machine Library(VMware Fusionが認識している仮想マシンのリスト)に登録される。
1つ注意すべき点は、CD-ROMまたはDVDメディアを挿入すると、デフォルトではFusionが仮想マシン側でメディアを取り込んでしまうことだ。たとえ仮想マシンがフォアグラウンドで実行されていなくても同じことが起こる。この動作のおかげで、仮想マシンをバックグラウンドで実行中に挿入した光学メディアの内容がMac OS Xのデスクトップに表示されるのを待ち続けるというヘマを何度かやらかした。
また、VMware環境の下でMac OS XのインストールディスクをブートしてMac OS Xの仮想マシンを作ろうとしたが、これは失敗に終わった。VMware Fusionによれば、Mac OS Xのインストーラディスクはブート可能ディスクではないとのことだった。これはVMwareの問題ではなく、他社のハードウェア上でOS Xを実行させないための対策をApple側が施しているためかもしれない。
さらに、VMware Fusionでは仮想マシンによるCPUアクセスが2つの仮想コアまたはCPUまでに制限されているため、4基以上のIntel CPUコアを搭載した最新型Macのユーザは仮想マシンにすべてのCPUパワーを与えられないことになる。
全体的に見ると、仮想マシンでもMacデスクトップでも優れたパフォーマンスが得られたが、ゲストOS側でハードディスクへのアクセスを増やすような作業(巨大なtarballの展開など)を行うと、ホスト側でも動作が鈍くなり得ることがわかった。
Windowsアプリのスムーズな表示(一部に難あり)
VMware Fusionで最も興味深い機能の1つがUnityである。この機能を使えば、Windowsのデスクトップ全体ではなくWindowsアプリの画面だけを表示できる。たとえば、Macで作成中のWebサイトがInternet Explorer(IE)上でどう表示されるかを見たい場合、Unityを使ってIEを実行すればWindows仮想マシンの画面との行き来が不要になるわけだ。
もっと便利なのは、プログラムのアイコンをMac OS Xドック内に置いておけば、わざわざFusionの起動画面を使わなくても普通にプログラムを立ち上げられる点だ。この機能は、仮想マシンがシャットダウンされていても使える。ドックに格納されたアプリケーションを仮想マシンのシャットダウン中に実行した場合は、仮想マシンが立ち上がった後にそのアプリが起動される。
この機能はMicrosoft Word、Internet Explorer、SWsoftのVirtuozzo管理ツール、Solitaireといったアプリケーションではうまく動作した。しかし、Windows XPに付属するPinballゲームの実行を試みるとちょっとした問題が起きた。このゲームは通常のモードでは問題なくプレイできたのだが、フルスクリーンモードにしようとすると、画面の表示が一瞬おかしくなり、Windowsの画面が8ビットカラーにリセットされて全体がWindows XPの画面になってしまったのだ。
また、アプリケーションによってはドックに入れてからリジュームすると些細な不具合が生じるものもある。たとえばドックからWordを起動し直したときには、わずかな時間だがリサイズ時にWindowsデスクトップの画面が表示された。
まだ気づいていない人もいるかもしれないが、Windowsが実に「粗雑」なこともFusionのおかげでわかる。XPの仮想マシンのシャットダウン中にWordを実行した場合はUnityがすべてうまく立ち上げてくれるのだが、その際には何らかの理由により、普通はWindowsの起動時に現れる目障りなポップアップウィンドウも表示される。たとえば、UnityによってWord画面だけが表示されるはずの場合でも、XPによるセキュリティ関連のバルーン表示が画面の隅に現れたり、Flashを使用するようなものは何も立ち上げていないのに、Flashを最新のバージョンにアップデートする必要があると知らせるポップアップウィンドウが表示されたりする。
だが、全体的にはUnityはよく機能しており、Windowsのデスクトップ全体を扱うことなく複数のWindowsアプリを実行する必要があるMacユーザには非常に便利だといえるだろう。
Unityを使ってWindowsアプリをまるでネイティブのOS Xアプリのように実行できる点は、非常にすばらしい。だが、これと同じことがLinuxに対して行える機能は見当たらない。
またしてもLinuxユーザは軽んじられているのだろうか。確かにVMware Fusionの下でLinuxは問題なく動作する。だが、AppleのX11パッケージをインストールしてアプリケーションをMacのデスクトップにエクスポートしない限り、MacのデスクトップとLinuxデスクトップの切り替えはうまく行えない。しかもこうした方法は、Unityほどシームレスでも便利なものでもない。これは非常に残念なことだ。というのも、Macノートを保有するLinuxユーザは数多くおり、Unity機能がなければLinuxユーザが頼りにしているLinuxデスクトップアプリへのアクセスが面倒になるからだ。
Fusionに対する評価
Fusionは、姉妹版であるWindowsベースやLinuxベースの製品よりもいくつかの点で優れている。まず、UnityはMac OS XでWindowsアプリを実行するための必須機能といえるものだが、同様の機能はWindowsやLinux向けのVMware製品には見当たらない。また、FusionはDirectXのサポートという点でもVMwareのほかの製品より進んでおり、自慢のMac OS Xマシンで3Dゲームを実行したいと思っているゲーム愛好家にも適している。
しかし、MacユーザにはVMware PlayerまたはVMware Serverといったフリーの選択肢がない。また、Fusionには仮想マシンとやりとりするためのVMwareのAPIやVMware WorkstationのVNC機能など、Workstation版の高度な機能がいくつか欠けている。
VMware FusionはMac向けのParallels Desktopに匹敵する存在であり、機能的な面も(ParallelsのCoherence機能はFusionのUnityに似ており、どちらもWindowsの3Dゲームを限られた範囲でサポートしている)、価格帯(どちらも約80ドル)も似ている。今のところMacではParallelsがリードしているが、Macデスクトップの市場シェア争いでParallelsが知名度の高いVMwareを打ち負かせるかどうか、興味深いところだ。
Mac上でLinuxやWindowsをはじめとするx86/AMD64用OSを実行する必要があるMacユーザには、Fusionを試すことをお勧めする。Unityにいくつか細かい不具合があることを別にすれば、Fusionは大した問題もなく簡単に使うことができた。安い買い物とはいえないがWorkstation版ほど高価ではなく、おそらくほとんどのMacユーザのニーズは満たせるはずだ。