米国Citrix幹部に聞く――“XenSource買収”の意義と展望――「買収の目的は、仮想化によるインフラの俊敏性向上にあり」

 先ごろ、米国Citrix Systemsによる米国XenSourceの買収計画が発表された。それを機に、Network World Online米国版では、同社のCSO(最高戦略責任者)、ウェス・ワッソン氏への単独インタビューを行い、XenSource買収の目的と展望を聞いた。以下、その内容を報告する。

――CitrixによるXenSourceの買収は、ユーザー企業にいかなるメリットをもたらすのか。

 例えば、ユーザー企業のCIOやITマネジャーに「最優先の課題とは何か」という質問を投じると、決まって返ってくる答えがある。それは、「ビジネスの変化に俊敏に対応できるITインフラをどう築くか」というものだ。

 われわれが、XenSourceを買収した理由は、まさにこの課題を解決することにある。すなわち、XenSourceの仮想化技術によって、Citrixが提供するインフラの「柔軟性」や「俊敏性(アジリティ)」が高められるというわけだ。

 例えば、XenSourceの技術と当社のテクノロジーの融合によって、ハードウェアやプロセッサの違いを意識することなく、アプリケーションの配置を自由に決めたり、自在に変更したり、ITインフラ上の各コンポーネント間でダイナミックにやり取りさせたりすることが可能になる。これにより、いかなるシステム上の変更にも俊敏に対応できるインフラが実現されるのだ。

――買収のタイミングはなぜ「今」なのか。

 Citrixが描いているビジョンは、「あらゆるアプリケーションをダイナミック、かつセキュアに、しかもハイ・パフォーマンスで配信できる、コスト効率の高いインフラを提供する」というのもだ。

 このビジョンを具現化するうえで、仮想化の技術が非常に重要になるとの認識はかねてからあった。また、1年ほど前から、われわれの顧客やチャネル・パートナーの間でも、当社の「仮想化分野への参入」を望む声が高まってきた。そうしたことが、XenSourceの買収という今回の決断につながったわけだ。

 もちろん、われわれには、仮想化の技術を独自に開発する、または、仮想化技術のライセンス供与を受けるといった選択肢もあった。しかし、仮想化の市場や技術の動向を入念に分析した結果、XenSourceを買収するのが最善の策であり、それを行うタイミングは今しかないと判断したのだ。

――XenSourceの技術は、Citrixのビジネス/製品にどのようなかたちで統合されていくのか。

 まず、XenSourceの技術の中で、サーバの仮想化技術は、バックエンド・アプリケーションの領域に特化したもので、そのビジネスの形態を変化させる必要はない。つまり、サーバの仮想化に関するXenSourceのビジネスは、今後も継続して行われ、Citrixはその推進力として機能することになる。

 ただし、デスクトップの仮想化という領域では、XenSourceの技術と現行のCitrix製品のシナジー効果が大きく発揮されると見ている。

 これは私の予測だが、デスクトップ仮想化の市場は、今後3年から4年で3,000万~4,000万ドル規模へと拡大するはずだ。そして、XenSourceの技術とCitrix製品の統合によって、われわれは、この有望な市場で大きなビジネス・チャンスが得られると確信している。

 デスクトップ仮想化のソリューションで重要なのは、シンプルさや経済性を実現することと、エンドユーザーに対して、魅力的な体験を提供することだ。

 例えば、デスクトップOSを単にデータセンター内の仮想マシンに配置しただけでは、問題を解決したことにはならない。

 デスクトップOS/アプリケーションをユーザーの手元にきちんと届け、優れたユーザー体験を提供して、初めて、デスクトップ仮想化というソリューションが完成すると言えるのだ。

 その点で、XenSourceの仮想化技術である「Xen」テクノロジーと、OSストリーミング機能や仮想デスクトップ・システムを備えた「Citrix Desktop Server」を統合すれば、企業のエンドユーザーに素晴らしい体験が提供できると確信している。

 また、Microsoftの調査によると、Windowsアプリケーション・デリバリのためのインフラ製品である当社の「Presentation Server」は、今日におけるWindows Serverワークロードの10%を占めているという。

 この製品が、Xenテクノロジーで形成された仮想プラットフォーム上で動作するようになれば、当社のチャネル・パートナーや顧客は大いに満足するだろう。

――XenSourceの買収で、Citrix製品の販売網に何らかの変化はあるのか。

 XenSourceは、エンタープライズ向けの製品「Xen Enterprise 4.0」をリリースし、ITベンダーとしての地歩を固めたばかりだ。とはいえ、彼らはすでに、約350社に上るチャネル・パートナーと、およそ650社の企業顧客を抱えており、彼らと契約しているパートナー企業の大半は、Citrixのパートナーでもある。

 言うまでもなく、当社のパートナーの中で、XenSourceの技術・製品に関心があるところは、XenSourceの製品を扱えるし、無償版の「XenExpress」をダウンロードして試すこともできる。

 XenSourceの買収手続きは、今年第4四半期半ばに完了する予定であり、今年10月末に米国で開催する計画の「Citrix iForum」でも(その時点では買収は完了していないが)、XenSourceの製品・技術に関するロードマップをより詳細に示すつもりだ。

(デニス・ドゥビー/Network World オンライン米国版)

提供:Computerworld.jp