FSFがソフトウェア特許に反対するドキュメンタリー映画「Patent Absurdity」を公開
フリーソフトウェアを支援する非営利団体であるFree Software Foundation(FSF)は4月19日(米国時間)、ソフトウェア特許問題についてのドキュメンタリー「Patent Absurdity」(特許とその不条理さ)を公開した。米国で起きたビジネスモデル特許に関する裁判「Bliski事件」を中心にソフトウェア特許反対者と支持者の両方の意見を収録した映画で、専用Webサイトで視聴できる。
Patent AbsurdityはFSFがスポンサードし、映像ディレクターのLuca Lucarini氏によって撮影・制作された約30分のドキュメンタリー映画。ビジネスモデルに対して特許を取得しようと試みたBliski事件を中心に関係者の声を収録している。
Bliski事件はビジネスモデルを特許として認めるか否かを巡って争われたもので、Bernard Bliski氏によって出願されたビジネスモデルに関する特許が争点となっているため「Bliski事件」などと呼ばれている。連邦巡回控訴裁判所(CAFC)は2008年10月、特許庁側の「却下」という判断を支持する見解を示したものの、Bliski氏側は連邦最高裁に上訴、まだ一連の問題の決着は付いていない。Bliski事件はビジネス特許だが、プロセスの特許という点でソフトウェア特許に影響を与えると見られている。
映画では米国特許法の変遷と背景を説明しながら、数学アルゴリズムに特許を適用できるかどうかについて、関係者の意見を聞いている。Software Freedom Law CenterディレクターのEben Moglen氏、FSF創始者のRichard Stallman氏、「Patent Failure」著者のJamese Bessen氏などが解説を加えており、米Microsoft、米IBM、米Oracle、米Appleなどの企業は、当初は特許を防御目的で利用していたが、特許数と特許訴訟が増え、次第に積極的に取得するようになったことが分かる。
賛成派としては、2009年11月初めに米ワシントンD.C.で開かれた口頭弁論を聴講するBernard L. Bilski氏自身やBilski氏の弁護士も登場し、ビジネス手法で特許を得ることで研究開発への投資を保護するなどと主張する。
これに対し、非営利団体Public Patent FoundationのDan Ravicher氏は、「特許がカバーする範囲があいまいであり、このあいまいさが萎縮効果を生んでいる」と問題点を指摘する。また、Stallman氏は「17世紀にリズムパターン、楽器の組み合わせなどの音楽コンセプトで特許が可能だったら、どうなっていただろうか?」と問いかける。「18世紀の作曲家ベートーベンは交響曲を作曲できなかっただろう」とStallman氏は述べる。
Patent AbsurdityはCreative Commons BY-NDライセンスの下で公開、フォーマットはOgg Theoraを利用した。専用Webサイトより視聴、ダウンロードが可能。
Free Software Foundation
http://www.fsf.org
「Patent Absurdity」
http://patentabsurdity.com/