IBM、データセンターの省電力化に年間10億ドルを投資――「Project Big Green」の下、2010年までに電力効率を2倍に

 米国IBMは5月10日、データセンターの省電力化に年間10億ドルを投資すると発表した。2010年までに、自社および顧客のデータセンターの電力効率を2倍に高めることを目指している。

 現在、コンピュータ・ハードウェアのランニング・コストの5割程度を電力コストが占めると言われている。このまま電力消費の抑制策を講じなければ、この割合は2011年までに70%程度に上昇する見通しだ。

 データセンターでは、サーバやネットワーク機器、ディスク・ドライブ、テープ自動化デバイスなどの稼働に加え、これらの機器の過熱を防ぐための冷却にも電力が使われる。また、ブレード・サーバの普及は、サーバの消費電力と冷却負荷の増大につながった。非構造化データやディスク・ベースのVTL(仮想テープ・ライブラリ)の利用が広がっていることも、ストレージの消費電力と冷却ニーズの拡大をもたらしている。

 IBMは、世界中に総面積800万平方フィート(約74万平方メートル)を超えるデータセンターを持っている。顧客のデータセンターの構築と運用も行っており、2006年には中国だけで20カ所のデータセンターの設計を行った。

 こうしたことから、同社は省電力化への取り組みが不可欠と判断、「Project Big Green」と呼ばれるプロジェクトの下で、データセンターにおける電力効率の向上を図るという。

 IBMが10日に発表した省電力化への取り組みは以下のとおりだ。

  • 消費電力を増やさずにサーバの処理量を増やすため、仮想サーバの利用を拡大する
  • 未使用時にサーバを自動的に省電力モードの待機状態に切り替える
  • 冷却設備は必要な場合にのみ電源を入れる
  • 液体冷却キットの発熱を利用して発電し、後で使用するために蓄電する
  • 熱工学と3Dモデリングを利用して、データセンターの冷却空気の流れを最適化する

 IBMは2010年までに、電力使用量を増やさずにデータセンターのコンピューティング能力を2倍に高めることを目指している。これは、年間で50億キロワットの節電に相当する。

 米国フォレスター・リサーチのアナリストであるクリストファー・マインズ氏は、IBMの取り組みについて、「省電力型のプロセッサやサーバを販売することよりも広範なインパクトがある」と高く評価している。

他社の省電力対策

 データセンターの省電力化に力を入れているのはIBMだけではない。例えばSun Microsystemsは、2012年までに温暖化ガスの排出量を2002年の水準より20%削減することを目標に掲げている。また、省電力型データセンターとして、運送用コンテナ内にデータセンター設備を設置した「Project Blackbox」を提唱している。

 またヒューレット・パッカード(HP)も、 2010年までに電力使用量を20%削減するとしている。具体的には、同社所有のデータセンターを米国内3カ所に集約することで省電力化を図る計画だ。同社は現在、高温な場所だけを冷却することでデータセンター空調システムの駆動電力を削減する技術の開発にも取り組んでいる。

 今年2月には、データセンターのエネルギー効率改善に共同で取り組むIT業界の非営利団体「グリーン・グリッド」も活動を開始した。同団体の参加企業には、IBMやSun、HPのほか、Dell、AMD、Intel、EMC/VMware、APCなどが名を連ねている。

 政府もデータセンターのエネルギー効率改善を後押ししている。例えば米国議会は2006年12月、データセンターの電力消費に関する上院法案3684を可決した。同法では、環境保護庁が省電力型サーバの普及を促進し、電力使用に関する調査を行うことが定められている。

(クリス・メラー/Techworld.com オンライン米国版)

米国IBM
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提供:Computerworld.jp