ガートナー、データセンターの発熱/スペース問題が深刻化すると警告

 「データセンターでは、熱対策と設置スペースの減少がますます大きな問題になる」という短期予測を、このほどガートナーが明らかにした。

 米国ガートナーのリサーチ担当副社長であるラケシュ・クマール氏は、11月20日にロンドンで開かれた同社の「Data Center Technology Summit」に出席し、「6年前に収束した最後の技術ブーム以降、設計の見直しを図ってこなかった大半のデータセンターでは、x86チップ搭載の安価なサーバがこのまま追加され続けると大きな負担になる」と警鐘を鳴らした。

 データセンターの多くでは、サーバ・ラックの数が増えるにつれて、必然的に空きスペースが減少し、電力や冷却装置の必要性は大きくなり続けている。

 また、大量にエネルギーを消費するデータセンターの操業が、環境に与える悪影響に注目が集まるようになったことで、政府も新たな規制の制定に動き始めている。

 「つまるところ、消費電力、冷却装置、設置面積のバランスが問題なのだ。従来のデータセンターは、今や時代遅れとなってしまった」(クマール氏)

 ガートナーは、データセンターを運用している組織は今後12〜18カ月以内に、発熱や冷却、電力不足の問題を解決するために、何らかの対策を講じる必要に迫られると見ている。

 4年前の段階では、1つのラックに1台のスタンドアロン・サーバを収納し、各サーバが2キロワットの電力を消費するというケースが多かった。だが今日では、標準的なラック内のスペースの50〜80%をブレード・サーバが占め、1ラック当たり15〜30キロワットの電力が消費されていると、クマール氏は説明する。

 ここに冷却のための電力が加わることで、状況はさらに複雑化する。クマール氏によると、1台のサーバを冷却するには、同サーバが消費する電力の1.2〜1.3倍のエネルギーが必要になるという。サーバが発する熱を気にして、ラックにサーバを満載しないIT管理者が多いのも、その理由からだ。

 サーバ・ラックの下で冷気を循環させる床冷却やエア・コンディショニングも、サーバの発熱量が大きすぎて役に立たなくなってきている。そもそも既存のデータセンターでは、冷気を送り込むべきサーバの下に、ケーブルやワイヤをはじめ、その他の得体の知れない物体が詰め込まれており、通気が阻害されてしまっているという現状がある。

 サーバ冷却装置を製造しているアメリカン・パワー・コンバージョンのピーター・ハナフォード氏は、「データセンターでは万事が万事、『こんなところに隙間があるじゃないか。ビールでも隠しておこう』といった調子だ。クリスマス・ツリーをサーバの下に収納していた強者も知っている」と苦笑した。

 こうしたすべての障害物が、エネルギーの浪費につながる。ガートナーの見積もりでは、電力コストがIT予算の10%以下に抑えられていたとしても、現状を放置すれば20%、30%と上昇していくという。実際に昨年からこちら、電力コストは上がり続けており、こうした傾向が収まる気配も当分は見えそうもない。

 ただし、クマール氏は、「チップ・ベンダーからサーバ・ベンダー、ソフトウェア・メーカーに至るまで、あらゆる関係者が消費電力および発熱の抑制に取り組んでいるのは明るい兆しである」とも付け加えている。

 データセンターの電力問題は、最終的にはITの成長を止めかねない深刻なものであり、新製品の開発やデータセンターの再構築などを通して解決を図ろうと、巨額の投資が行われているのが現状だ。

 政府もこうしたITに関する問題に関心を深めている。ガートナーでリサーチ担当副社長兼チーフを務めるスティーブ・プレンティス氏は、環境に配慮したITを求める社会の声にこたえるため、政府が大量のエネルギーを消費しているユーザーに高額な税金を課したり、現状にそぐわない法律を改正したりする可能性があると指摘した。

 「政府が何らかの対策を早急に講じることは確実だが、それですべての問題が解消するわけではない。われわれは、自己規制していくほうが効果が上がると考えている」(プレンティス氏)

(ジェレミー・カーク/IDG News Service ロンドン支局)

提供:Computerworld.jp