クリエイティブ・コモンズ、ライセンスの標準表現方式を推進

 もしCreative Commons(CC)にこの件に関する何らかの発言権があるとしたら、ライセンス記述のための機械可読な記法である「Creative Commons Rights Expression Language(ccREL)」はすぐにもWebにおける標準になるだろう。ccRELはCCがWorld Wide Web Consortium(W3)の協力を一部受けつつ数年前から開発を進めてきたものだ。その仕様はCCの4人のメンバーによって概説書にまとめられ、技術とパブリック・ドメインの関係を調査する欧州のサイトCommuniaで公開されている。CCはccRELのプレゼンテーションを計画する一方、ccRELの必要性を積極的に説いて回っている。CCの最高技術責任者Nathan Yerglerも、最近バンクーバーで行われたOpen Web Conferenceで、Linux.comを相手にその熱意を遺憾なく発揮してくれた。

 前記の概説書によると、開発の目標はライセンスを記述するための一貫性のある構造を持ち、さまざまなマークアップが使え、多様な媒体に適用でき、オンライン作業の発達や作者あるいは利用者の必要性の変化に応じて容易に変更できるだけの柔軟性を備えた構造を追求したという。

 この標準化活動は、適用範囲は限られているものの、重要性は高い。ライセンスを正確に規定するものであること、また、ライセンスごとに独自に定義するのではなく、ライセンス用のすべてのマークアップ言語を包含しうるものを目指しているからだ。さらに、構造に一貫性があるということは、ライセンス情報を取り出す際、各言語用に個別のツールを用いる必要がないことをも意味する。

 Yerglerは、ccRELを言語と呼ぶのは技術的には「あまり適切ではない。おそらく、ccRights Expression, Vocabulary, and Recommendationsと呼ぶ方がより正確だろう」と言う。つまり、ccRELは言語としてよりも定義としての性格が強いのだ。とは言っても、名称の変更を検討するには遅すぎるようだが。

 そうした構造を作ろうというCCの活動の基礎には、Resource Description Framework(RDF)がある。RDFはメタデータ(埋め込まれているオブジェクトに関する情報)を記述するためのW3仕様の一つで、Webの次の発展段階に向けたW3の計画において鍵となる部分だ。

 当初はRDF/XMLというRDFのXML版を使ってライセンス構造の開発が試みられたが、構造が冗長で、情報の抽出に一貫性や拡張性を持たせるのは困難だった。「当初は、メタデータをHTMLコメントの中に入れていた。当時はそれが最善の方法に思えたのだが、今となっては最善策ではない理由は山ほどある。パーサーはコメントを任意に削除できるし、人間は普通コメントを見ない。ソフトウェアを公開する場合、多くは、すべての山括弧をエスケープすることは置いておくにしても」。明らかに、別の方法が必要だった。

 その結果、2004年になって、CCはW3と協力してRDFaに取り組み始めた。RDFaは、人間にも機械にも情報が読めるように既存のHTML構造をできる限り残し若干の補足を加えたRDFスキーマだ。Yerglerによれば、RDFaはW3に認められる「最終」段階にあるという。CCは、現在、当初採用したRDFを正式に排除している。

 RDFaでは、ライセンスで想定される2つのプロパティー、すなわちWorkプロパティーとLicenseプロパティーが規定されており、Workプロパティーではライセンスを定義しなければならない。CCライセンスの場合、ステートメントには、一般に、適用されるCCライセンスの種類を規定するLicenseプロパティーが含まれることになる。このほか、タイトルなどのWorkプロパティーや管轄裁判所などのLicenseプロパティーを自由に加えることができる。

 Yerglerによると、必要最小限のみを規定することから生まれる柔軟性には、CCが「著作権情報の唯一正しいレジストリー」――CCはそうなることを望んでもいないし、そう主張する能力もない――となるのではなく、ライセンスの利用者自身が盛り込む情報を決定できるという利点があるという。そして、重要なことは、利用者(人間であれ、クローラーであれアグリゲーターであれ)がコンテンツに関して問う質問――「再利用するには?」「商用目的での利用は?」「派生物を作成できるか?」「再利用した場合の帰属は?」など――に速やかに解答できるようにすることだという。

 「もちろん、そうした点に関する判断は、人間の方が機械より本来的に得意だ。たとえば、GeoCitiesよりも誰かが自分の所有するドメイン上で公開していることの方を信用するだろう。これは、現在のGeoCitiesに関して人が持つ心理的傾向によるものだ。しかし、我々が提案する仕組みによりさまざまな材料が得られ、それを判断の出発点とすることができる」

今後

 ccRELについて、CCはかなりの自信を持っているようだ。「我々は数年来さまざまな意見を聞いて十分に検討してきたし、ライセンスの実際に関する膨大なデータも持っている」

 ともあれ、次のステップはccRELの利用促進であり、その成否が明らかになるのは数年後のことだ。Yerglerは「今、評価方法を検討しているところだ。漠然とした感触ではなく『我々は目的を達した』と言えるようにしたい」と言う。Yerglerら概説書の執筆者たちは今後数か月にわたってさまざまなカンファレンスでプレゼンテーションを続け、またツールのメーカーには実装を支援し、コンテンツ・サイトにはccRELを使うよう促していくことになる。Yergler以外の執筆者は、CCボード・オブ・ディレクターズのメンバーHal Abelson、CCテクニカル・アドバイザリー・ボードのメンバーBen Adida、CCバイスプレジデントのMike Linksvayer。

 ところで、Yerglerによると、ccRELにはすでに受け入れられつつある兆候があるという。「これまでの勧告より順調だ。普及に役立ちそうなWebサイトがccRELやその実装方法に関心を持ち始めている。しかし、ソフトウェアでもコンテンツでも、ライセンスを提供しているほかの団体が、そのライセンスをccRELで記述してくれるようになればそれが真の成功だと思う。そうなれば大きな成功だ」

 すでに、YerglerらCCのメンバーは、Free Software Foundationと、YerglerがCCよりも「フリー」の意味を限定的に考えていると言うフリー・カルチャー団体Freedom Definedに接触している。ただし、話し合いはまだ予備的段階だ。

 CCライセンスをさらに限定的にせよという意見や、逆に緩和すべしという意見もある。Yerglerは「個人的には、我々は中間を狙ってかなり良い仕事をしたと思う。両極端にいる人は怒るだろうが。我々の仕事に完全に満足する人がいたとすれば、おそらく、一方に寄りすぎているのだ」

 ともあれ、ccRELの採用を促進するためにやるべきことは山積している。今、言えることは、Creative Commonsは決然とスタートを切ったということだけだ。

Linux.com 原文