クリエイティブ・コモンズ、過去の著作権譲渡契約の解除を手助けする支援ツールを公開

もしかしてあなたは1981年に不利な形で書籍出版の契約を結んでしまって、 いまだに激しい後悔の念に苛まれていたりはしないだろうか。 そんなあなたに朗報がある。 米国著作権法には意外な盲点があり、 Creative Commons (以下、組織/プロジェクトとしてのクリエイティブ・コモンズをCCと略記)のTTTの助けを借りて、 あなたの原稿の権利を奪回し利益を得ることができるかもしれない。 TTTはウェブベースのツールで、著作権譲渡契約を解除するために必要とされる法律の迷宮から 作品の作者が抜け出すのを手助けするために作られた。 CCは現在、TTTのベータテストを ccLabs サイトで行なっている。

米国著作権法では、 作品の作者が過去に (おそらく経験不足から、あるいは法的な助言を受けることができずに) 署名の上で譲り渡してしまった権利も取り戻すことができるということが規定されている。 しかし何年もの間に著作権法へ無数の変更が行なわれたことにより、 この規定は「細部に宿る神」となってしまっている。

例えば 「買い取り契約の仕事」による作品や委託を受けて制作された作品に関しては 一般的に著作権譲渡契約を解除することはできない。 しかし1978年に、このことについての規定の具体的な定義が変更された。 その結果、 規定された期間を経過した後には、ほとんどの場合たいていの作品に関して 譲渡契約を解除することが可能となった。 ただしここで、作品の制作年月日、出版年月日、契約年月日のすべてが関係してくる。

TTT(Termination of Transfer Tool)(著作権譲渡契約解除支援ツール) は現在のところ、 インタラクティブなQ&Aセッションという形で提供されている。 TTTを開始すると、 日付や契約内容(必要な場合には法的な文言)などを質問する形で、 あなたの状況に関する詳細をステップごとに逐一確認してくる。

そしてもしあなたが著作権譲渡契約を解除することができる要件に合致した場合には、 TTTはあなたの情報をPDFファイルへとまとめて出力してくれる。 そこであなたはこのPDFを印刷の上、 あなたの街の弁護士事務所に持って行くと良い。 一方あなたが著作権譲渡契約を解除することができる要件に合致しない場合には、 TTTはその理由を示し、CCのウェブサイト上にある適切な 定義FAQ を 指し示してくれる。

CCは、 あなたが著作権譲渡契約を解除するための権利を行使するための 法的な手続きに関与することはしないし、 今後も関与する計画はない。 けれどもCCは作者が権利を取り戻すための手続きを手助けしてくれる弁護士の紹介制度を 設けたいとしている。 ただしこの制度は今のところはまだ計画だけで実現はしていない。

現時点ではTTTは「ベータ版」となっている。 CCではTTTの全体的な設計や文面の明快さに関してフィードバックを求めているとのことだ。

著作権譲渡契約を解除することができる対象となるのは、 出版年月日から最低35年の期間が経過している場合だ。 そのため私自身には、 TTTで試してみることのできるような個人的な著作権譲渡契約は存在しなかった。 なおTTTを試してみるための架空の事例がCCからいくつか提供されている。 ただ私自身は、書籍の出版経験のある年上の家族を基にして、 ありがちな架空の事例を想定して試してみたのだが、その方が興味深かった。

CCは現行の著作権法の条項が「複雑」だと指摘しているが、 これは誇張でも何でもなかった。 このことは今回TTTを試してみたので自信を持って言える。 創作作品の作者が一度ライセンス契約をしてしまった権利を 取り戻すことを可能にする特定の条件を見つけ出すということは 簡単なことではない。

著作権譲渡契約を解除する要件を実際にすべて満たすことのできる可能性のある作者は ほとんどいないだろうということを考えると、 CCがTTTを実務用のユーティリティというよりはどちらかというと 情報提供目的として位置付けているのは賢明な判断と言えよう。

TTTは、教育的なプログラムとして、 この著作権譲渡契約の解除というテーマにスポットライトを当てるものではあるが、 このテーマを分かりやすくするものではない。 私自身が試した経験から感じたことは、 著作権譲渡契約を解除することができる対象となるかどうかの判定の手続きについて、 TTTは 著作権保持者をステップごとに誘導することは素晴らしく上手にやってくれるのだが、 しかしこの「ステップごと」というアプローチがそもそも 著作権譲渡契約を解除することができる対象となるかどうかの規定の 全体像をわかりにくくしてしまっているのではないかということだ。

私はどちらかと言えば、 法律の要件に合致するのがどのような筋書きの場合なのかを知るために FAQを行ったり来たり試行錯誤しながら Q&Aのステップを最初から最後まで推測を交えながら進めなければならないのではなく、 全体像を表わすイエス/ノーの「論理表」があった方が望ましいのではないかと思った。

とは言え私も、CCからの リリースアナウンスに記されていた TTTの第一の目標に関してはまったく大賛成だ。 つまり、著作権譲渡契約を解除することもできるという この権利の存在をアピールすることが重要だということだ。 私はTTTを知るまでこの権利については聞いたことさえなかった。 作者やアーティストである人たちに個人的にちょっとした アンケートをとってみたのだが、 やはりほとんどの人は私同様この権利について聞いたことがないようだった。

現行の著作権法ではその大部分が 巨大メディア寄りで一般人には不利という一方的なものとなっている。 もちろんTTTができたからと言って、 この状況自体を変えることができるというわけではない。 けれども 著作権法がいかに奇妙で不便であるのかということを 理解する人が増えれば増えるほど、 この奇妙で不便な法律を修正し使いやすくしていこうとする風潮が高まるはずだ。 おそらく、 不利な著作権譲渡契約を解除することができるという作者の権利を実際に行使する必要があるのは 私たちの中でもほんの一握りの人たちだけだと思われるが、 問題提起の役割を果たしているというだけでも、 TTTには一定の存在意義があると言えるだろう。

NewsForge.com 原文