「“特許投機家”対策は火急の課題」――Intel法務担当幹部が強調

 米国Intelの法務担当エグゼクティブ・バイスプレジデント、ブルース・スウェル氏は10月22日、ワシントンD.C.で開催された特許改革フォーラムにおいて「米国のIT業界はここ数年“特許投機家”から多数の訴訟を起こされている。議会は、現行の特許制度の問題点を早急に修正すべきだ」と語った。

 スウェル氏によると、米国のITベンダーは過去21カ月間で193件の特許侵害訴訟を起こされ、そのうち70%が特許投機家、つまり「ベンダーを訴える目的で特許を買い取るグループ」が原告だったとのことだ。対照的に、この期間に製薬会社が特許侵害訴訟の被告となったケースは28件にすぎず、しかも24件は競合企業同士で争われたという。

 同フォーラムにおいてスウェル氏は、“パテント・トロール”と呼ばれる特許投機家の問題を解決するため、特許訴訟制度の改革が急務だと語った。現在、米上院で審議が中断されている特許改革法案は、正当な発明者の不利益にはならないと同氏は強調する。「すべての特許侵害訴訟を問題視しているのではなく、買い集めた特許を武器に企業を告訴して一攫千金をねらう投機家グループが問題なのだ」(同氏)

 一方、バイオテクノロジー産業協会(BIO)の法務担当補佐、ハンス・ザウアー氏は、今年9月に米下院を通過した特許改革法案について、「特許に対するきわめて厳しい法案」だと不快感を示している。上院で審議されている法案は、バイオ業界や製薬業界、発明家、一部労働組合からの抵抗により立ち往生している状態だ。

 下院の特許改革法案では、裁判所が特許侵害訴訟における損害額を柔軟に評価できるようになり、MicrosoftやIBMといった複数の大手ITベンダーから支持されている。現行法では、裁判所は一般に製品のごく一部だけが特許を侵害している場合でも、その製品全体の価値を考慮に入れて判断するが、同法案では、侵害部分の価値だけに基づいて損害額を評価するようになる。

 「すべての特許が同じ価値を持つわけではない。製品内での重要度は、それぞれの特許で異なる」とスウェル氏は指摘する。同法案では、特許の付与後1年以内であればその特許に対して異議を申し立てることもできる。

 「特許制度の変更はイノベーションを阻害するおそれがある。医療業界で今後イノベーションを進める意欲が減退しかねない」とザウアー氏は警告する。「30年後に、iPodが10ドル安くなる一方で、アルツハイマー治療薬が登場する可能性が10%減ることにもなりかねない」と同氏。

 特許フォーラムを主催したフォーリー&ラードナー法律事務所の特許担当弁護士、アナト・ハキム氏は、特許改革法案の影響を予測するのは困難だと語る。

 スウェル氏は、特許投機家の“零細業界”が生まれたと不満をもらす。「こういう業界がさらに生まれないようにする配慮が必要だ」(同氏)

 ザウアー氏によれば、米国最高裁はここ数年、特許に関する問題についてルールを作り、米国特許商標局も今年末までに新たなルールを策定する予定だという。こうしたルール変更に、特許制度全体を見直す法案まで加わることで、「一度に大々的な改革が行われることになる」(同氏)という。

 だが、バイオ業界はともかく、IT業界にとっては必要な改革だとスウェル氏は語る。「現状に満足しているベンダーからは、特に問題のない制度は変えなくてよいとの声が聞かれる。だが、彼らにとって問題がないとしても、他の多くのベンダーにとっては問題ばかりなのだ」(同氏)

(グラント・グロス/IDG News Service ワシントン支局)

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提供:Computerworld.jp