下院通過の特許改革法案、発明者らがあらためて反対を表明――上院での成立を阻止すべく議会に働きかけ

 9月20日、米国の発明者や企業の幹部ら約20人がワシントンを訪れ、米国議会で審議中の特許改革法案に反対する意思をあらためて表明した。同法案は9月初めに下院を通過し、上院で採決されることになっているが、発明者らは同法案の成立を阻止すべく、議会への働きかけを行っている。

 参加者の1人であるディーン・ケーメン氏は同法案について、「米国の特許システムを弱体化させるとともに、特許の価値を低下させ、未来に対する投資の意欲を失わせる」と批判した。同氏はSegwayとAutoSyringeの発明者である。

 特許改革法案に対しては、特許侵害訴訟での損害評価方法の変更が盛り込まれているとして、MicrosoftやIBM、Cisco Systemsなどは支持する立場をとってきた。損害の評価方法を変更できるというのは、特許侵害のあった部分の価値のみを基に損害を判断できることを指している。

 現行制度の下では、製品のごく一部だけが特許を侵害している場合でも、裁判所は製品全体の価値を考慮して損害を評価することが多い。そのため、同法案を支持する人々は、特許侵害訴訟の抑えが効かなくなっていると主張している。特許の所有者は一部の侵害でも簡単に訴訟を起こし、莫大な補償を得ることができるからだ。

 Microsoftは、今月初めに下院が法案を可決したことを高く評価、「米国の技術革新を支援し、進歩を促す力を維持するため、立法府が法案に賛成した」とコメントしている。

 一方、ケーメン氏とともに同法案への反対を表明しているガラス製造メーカー、米国コーニングの社長兼COOであるピーター・ボラナキス氏は、「この法律が施行されれば、アジアのライバルたちが当社の特許に繰り返し異議を申し立てるようになる」と語り、付与された特許への異議申し立てを可能にする同法案への懸念を示した。

 WebTVの発明者であるスティーブ・パールマン氏も、議員たちに反対の意思を伝える活動を開始した。だが、新興テクノロジー・ベンダーが法案にあらためて反対していると聞いて、「議員のスタッフたちは一様に当惑している」(同氏)という。

 特許改革法の目的の1つは、米国の特許法を諸外国のものと整合させることだ。しかし、これについてパールマン氏は、「米国の新興企業を他国のような経済環境に放り込むのは賛成できない」と語っている。

 リアーデンの創設者兼CEOであるパールマン氏や、DEKAリサーチ&ディベロップメントの創設者であるケーメン氏は、米国の特許システムを変える必要性を認めていないわけではない。しかし彼らは、特許審査官の増員と米国特許商標局の予算増額という、すぐにでも対策が必要な問題に特許改革法案は対応していないと指摘する。

 「5年前に申請された特許がいまだに審査待ちの状態になっている。現行のシステムがきちんと機能するよう対策を講じるのが先だ」(パールマン氏)

 さらにパールマン氏は、昨年5月に最高裁判所が下した判断の影響も見守るよう議会に求めている。この判断は、特許を侵害したとされる製品の販売差し止めなどを命じてきたこれまでの慣例を覆し、いわゆる「特許荒らし」と呼ばれる行為に多大な影響を及ぼすと見られている。同氏は、「(この判断により、米国の特許法は)すでに大きく変わった」と述べている。

(グラント・グロス/IDG News Service ワシントン支局)

提供:Computerworld.jp