SSDやioDriveの実力はいかほど? 「さくらの専用サーバ エクスプレスG2シリーズ」を試す
さくらインターネットのレンタルサーバー「さくらの専用サーバ エクスプレスG2シリーズ」は、4コアCPUのサーバーをリーズナブルな価格で利用できることに加え、SSDやioDriveといった高速なストレージを選択できるのが特徴だ。これら高速ストレージの実力はいかほどなのか、ベンチマークテストでその能力をチェックしていく。
さくらインターネットが7月31日、同社の専用サーバーサービス「さくらの専用サーバ」に新シリーズ「エクスプレスG2シリーズ」を追加した。また、同時に新しいオプションサービス「専用グローバルネットワーク」および「ファイアウォールサービス」も開始されている。
さくらの専用サーバは、さくらインターネットのデータセンター内に設置されたサーバーを1台丸ごとレンタルできるサービスだ。サーバー1台のリソースを専有できるため、重い処理を実行させたい場合や高いI/Oスループットが求められる用途などに向いている。
さくらの専用サーバには月額9,800~13,800円で利用できる「エクスプレスシリーズ」と、月額27,675円から利用できる「フレックスシリーズ」というラインナップが用意されていた。エクスプレスシリーズは低価格、フレックスシリーズは高性能で用途に合わせて柔軟にカスタマイズできる、という位置付けだったが、今回新たに追加された「エクスプレスG2シリーズ」は、ちょうどその中間に位置付けられるサービスだ。CPUは固定されているものの、ストレージとしてSSDやFusion-ioのioDriveが選択でき、高速なストレージが必要という需要に応えるものとなっている。
SSDやioDriveは一般的になってからまだ日が浅いこともあり、いまのところこれらを採用するレンタルサーバーは多くない。そもそもSSD自体、サーバー用ストレージとしての採用例は増えてきているものの、まだ広く普及しているとは言いにくい。そこで、今回はエクスプレスG2シリーズのSSDおよびioDrive搭載モデルを使用し、ストレージ性能の違いをチェックしてみよう。
エクスプレスG2シリーズのラインナップとオプションサービス
今回紹介する「専用サーバ」というサービス自体がどのようなものなのか、実際にこのようなサービスを使ったことがないユーザーにとっては分かりにくいかもしれない。そこで、まずはさくらの専用サーバはどのようなものなのか、どのような機能が提供されるのかについて紹介しておこう。
さくらの専用サーバは前述のとおり、さくらインターネットのデータセンター内に設置されたサーバーを1台丸ごとレンタルできるサービスだ。インストールするOSや稼働させるアプリケーションなど、その使い方については利用者が自由に選択できる。サーバーはインターネットに接続されており、ソフトウェアのセットアップさえ完了すればすぐにサーバーとして利用できる。
エクスプレスG2シリーズで提供されるサーバーは富士通の「RX100 S7」(CPUは4コアのXeon)で、ストレージの種類が異なる4モデルが用意されている(表1)。
モデル名 | Fujitsu RX100 S7 Xeon 4Core SATA | Fujitsu RX100 S7 Xeon 4Core SAS | Fujitsu RX100 S7 Xeon 4Core SSD | Fujitsu RX100 S7 Xeon 4Core SATA+ioDrive |
月額料金 | 19,800円(年間一括:217,800円) | 20,800円(年間一括:228,800円) | 21,800円(年間一括:239,800円) | 49,800円(年間一括:547,800円) |
初期費用 | 無料 | |||
CPU | Xeon E3-1230V2 3.30GHz 4Core | |||
メモリ | 16GB(最大32GB) | |||
内蔵ストレージ | SATA 1TB×2(RAID 1) | SAS 600GB×2(RAID 1) | MLC SSD Intel330 180GB×2(RAID 1) | SATA 1TB×2(RAID 1)+Fusion-io ioDrive 320GB |
回線 | 100Mbpsアップリンク ベストエフォート回線 | |||
IPアドレス | IPv4アドレス×1、IPv6アドレス×1 | |||
ローカル接続回線 | 100Mbps(ベストエフォート) |
どのモデルも、CPUやメモリといった基本的なスペックは変わらない。異なるのは搭載しているストレージの種類のみで、SATA→SAS→SSD→SATA+ioDriveの順に料金が高くなる、という仕組みである。ここで注目されるのは、やはりioDrive搭載モデルであろう。
ioDriveはFusion-io社が開発する、フラッシュメモリを使用したストレージデバイスだ。記録媒体としてNANDフラッシュメモリを採用する点はSSDと同じだが、接続インターフェイスにPCI Express(PCIe)を利用するのが異なる点だ。PCIeインターフェイスを使用することでioDriveがチップセットと直結される構成となり、これによってI/Oのボトルネックを最小限に抑えられるという。また、フラッシュメモリチップの冗長化やパリティチップ、エラー訂正機能などによって信頼性も高められている。ioDriveは主にデータベースなどの高速なストレージアクセスが必要なアプリケーション向けに採用が進んでおり、さまざまな分野で使われているという。
ioDrive自体の価格は最も安いモデルでも100万円以上と高価だが、さくらの専用サーバであれば初期費用無料、月額49,800円からという導入しやすい価格で利用できる。導入前の検証やテスト用途としても便利だろう。
なお、OSについてはデフォルトがCentOS 6(64ビット版)となっているが、後述するコントロールパネルで再インストールを行うことでCentOS 5やScientific Linux 6、Ubuntu 10.04、Debian GNU/Linux 6、XenServer 6などのOSをインストールできる(リスト1)。
CentOS 6 i386(32bit版) CentOS 6 x86_64(64bit版) CentOS 5 i386(32bit版) CentOS 5 x86_64(64bit版) Scientific Linux 6 i386 (32bit版) Scientific Linux 6 x86_64 (64bit版) Ubuntu 10.04 i386(32bit版) Ubuntu 10.04 amd64(64bit版) Debian 6 i386 (32bit版) Debian 6 amd64 (64bit版) Citrix XenServer 6 (32bit版)
また、有料オプションとしてRed Hat Enterprise Linux 5/6やWindows Server 2003 R2/2008 R2といった商用OSも用意されている(表2)。
OS名 | 初期費用 | 月額費用 |
---|---|---|
Red Hat Enterprise Linux 5 Server(最小/標準構成) | 0円 | 2,100円 |
Red Hat Enterprise Linux 5 Server x86_64(最小/標準構成) | 0円 | 2,100円 |
Red Hat Enterprise Linux 6 Server(最小/標準構成) | 0円 | 2,100円 |
Red Hat Enterprise Linux 6 Server x86_64(最小/標準構成) | 0円 | 2,100円 |
Windows Server 2003 R2 Standard Edition(最小/標準構成) | 0円 | 2,100円 |
Windows Server 2008 R2 Standard Edition(最小構成) | 0円 | 3,150円 |
Windows Serverを選択した場合のみ、有料オプションでSQL Serverも利用できる(表3)。
バージョン名 | 初期費用 | 月額費用 |
---|---|---|
SQL Server 2005 Standard Edition | 21,000円 | 26,250円 |
SQL Server 2008 Web Edition | 21,000円 | 3,150円 |
充実したオプションサービス
さくらの専用サーバではさまざまなオプションサービスも用意されている。まずはメモリやストレージを追加するオプションだ。エクスプレスG2シリーズの場合、メモリ増設には初期費用のみがかかり、それ以降の月額料金は不要となっている。具体的には、標準の16GBに16GBを追加して計32GBとする場合17,850円となる(表4)。
追加する容量 | 16GB(合計32GB) |
---|---|
初期費用 | 17,850円 |
月額料金 | 0円 |
ストレージについては標準では2台のHDDがRAID1で接続されているが、オプションでさらに2台のHDDを追加することが可能だ。HDDおよびSSDの追加についても必要なのは初期費用のみで、月額の費用は不要である。ioDriveを増設することも可能だが、こちらについては初期費用は不要、月額費用として31,500円という料金設定になっている(表5)。
ストレージ | 初期費用 | 月額費用 |
---|---|---|
SATA HDD 1TB×2 (増設/交換) | 44,000円 | 0円 |
SAS HDD 600GB×2 (増設/交換) | 46,000円 | 0円 |
SATA MLC SSD Intel330 180GB×2 (増設/交換) | 48,000円 | 0円 |
PCIe MLC SSD ioDrive 320GB (増設) | 0円 | 31,500円 |
電源の冗長化も選択できる。こちらも必要なのは10,500円の初期費用のみだ(表6)。
プラン | 初期費用 | 月額料金 |
---|---|---|
冗長電源(450W) | 10,500円 | 0円 |
「専用グローバルネットワーク」オプションサービスは、ユーザーに専用のグローバルネットワーク(サブネット)を提供するものだ。たとえばプランSの場合、ユーザーには同じサブネットに属する16個のIPアドレスが割り当てられる。このサブネットはユーザーが専有できるネットワークとなり、ルーターを介してインターネットに接続される。これにより、複数台の専用サーバー契約時に同じサブネット内でしか使えないようなサービスを利用できるほか、不要なトラフィックの削減やセキュリティの向上などが期待できる(表7)。また仮想マシンなどを使う場合など、1台のマシンに複数のIPアドレスを付与したい場合などにも有用だ。
プラン | プレフィックス(IPv4) | プレフィックス(IPv6) | 接続サーバ台数目安 | 初期費用 | 月額料金 | 年間一括払い時の料金 |
---|---|---|---|---|---|---|
プランS(/28) | /28 | /64 | 9台 | 5,250円 | 3,360円 | 40,320円 |
プランM(/27) | /27 | /64 | 25台 | 5,250円 | 6,720円 | 80,640円 |
プランM(/26) | /26 | /64 | 57台 | 5,250円 | 13,440円 | 161,280円 |
プランLL(/25) | /25 | /64 | 121台 | 5,250円 | 26,800円 | 322,560円 |
専用グローバルネットワーク利用時には共用ファイアウォールサービスオプションも利用できる。提供されるのはデータセンター向けのアプライアンス型ファイアウォール「Cisco ASA 5585-X」で、共用タイプながらサーバーごとに独自のセキュリティポリシーを設定でき、デュアルスタック接続にも対応する。管理については専用の管理用クライアントアプリケーション「Adaptive Security Device Manager(ASDM)」が利用できる(表8)。
プラン | 初期費用 | 月額料金 | 年間一括払い時の料金 |
ファイアウォールサービス | 14,800円 | 9,800円 | 117,600円 |
そのほか、特に追加料金がかからないオプション/サービスとしては複数台のサーバー契約時にサーバー同士をローカルエリアネットワークで接続するローカル接続(複数台構成)サービスや、電話もしくは電子メールで機器のリブートを行える機器リブートサービスなども提供されている。
さくらの専用サーバではこのように豊富なオプションサービスが用意されており、非常に柔軟にサーバー環境を準備することが可能となっている。ただ、ハードウェア構成のアップグレードにはそれなりの初期費用が必要、というのは賛否が分かれるところだろう。さくらの専用サーバでもフレックスシリーズについては初期費用0円、月額あたりの追加料金でメモリやストレージを増量できるような価格設定となっている。想定する用途や使用期間に合わせて構成を検討すると良いだろう。