KDE 4で変わるデスクトップ環境

 先週金曜(1月11日)、2年半を超える構想と開発の期間を経て、KDE 4が正式にリリースされた。この定評あるデスクトップ環境の新バージョンでは、パフォーマンスやデザインから収録アプリケーションとシステムツールに至るまで、ほぼすべてのレベルで大がかりな見直しが行われている。ほかのデスクトップの影響も見受けられるが、大半のユーザは何百もの新機能から気に入った点を見つけられるはずだ。ただし、ユーザによる最終的な評価は、新たなレイアウトと考え方を許容できるかどうかに依存するだろう。

 今日(1月14日)の時点で入手可能なKDE 4パッケージはKubuntu向けとDebianのexperimentalリポジトリのものだけで、その他の主要ディストリビューションのリポジトリにはまだ入っていない。ソースコードを自分でコンパイルせずにこの最終リリース版を確認したい人は、Fedora、Kubuntu、openSUSE(KDE独自のシステム管理ツールに代わってYast2が収められている)など、数々のディストリビューションで提供されているライブDVDを利用するとよい。別のコンピュータで「KDE 4.0 Visual Guide」を見ながらこのライブDVDを試したいというユーザもいるだろう。そうすれば目立たない機能を見過ごすこともない。

 KDE 4では、ハードウェアおよびマルチメディアを扱うための新しいアプリケーション群の採用、Qt4ウィジェットセットへの切り替え、コアライブラリ群の大幅な書き換えがひそかに行われている。これらの組み合わせにより、デスクトップの処理速度は著しく向上しており(その効果はライブCDでもわかる)、これまでの主要なデスクトップ環境で最も高速だったXfceに匹敵するほどになっている。

 今回のリリースでさらに注目すべきは、ビジュアル面の洗練化、透過性、抽象度の高い壁紙、デフォルトテーマOxygenのわかりやすい3次元アイコンといった点で、KDEが大きな進化を遂げていることだ。もちろん、これまでのバージョンでもずっとカスタマイズは可能だったが、デフォルトのデスクトップ環境の実用性でGNOMEに劣る、との不満がよく聞かれた。だが、それも過去のことだ。KDE 4は見る人に感銘を与えるように作られ、その点で成功を収めている。

デスクトップ

kde4_thumb.png
KDE 4のデスクトップ

 KDE 4を使い始めると、デスクトップ環境の変化がいくつも見えてくる。パネルには、スタートメニュー、タスクマネージャ、仮想デスクトップページャ、通知トレイ、時計が期待どおりに存在するほか、外部記憶装置を監視する「New Device Notifier(新しいデバイスの通知)」という項目が新たに追加されている。しかし、以前のバージョンやGNOMEほどの柔軟性はない。表示位置は画面最下部に固定され、サイズ変更も不可、それにデスクトップテーマと独立した形での色のカスタマイズができなくなっている。また、以前のバージョンで利用できたパネルアプレットやパネルのサブクラスも姿を消している。とはいえ、標準プログラム用のパネルにスタートメニューからアイコンを追加することはできる。ただ、それらの配置を自分で変えることはできない。

 今回、デスクトップ画面の右上にはデスクトップマネージャが置かれている。これは、ウィジェット(アプレットに相当するもの)をフローティングウィンドウとして直接デスクトップに配置できるものだ。ディストリビューション固有の実装によっては、こうしたウィジェットにドックパネルのサブクラスの埋め合わせとしてパネルが含まれている場合がある。これらのウィジェットはサイズがまちまちなので、特にスタートメニューからアイコンを追加した場合には、デスクトップが雑然として見える。各ウィジェットの周囲にはコントロールカラー(control collar)とでも呼ぶべきものが存在する。これは、ウィジェット上をカーソルが通過する際に表示されるミニアイコンの集まりで、ウィジェットの設定、リサイズ、再配置、削除に使用する。

 スタートメニューも徹底的に見直されている。利用可能なすべてのプログラムが一覧表示されるのではなく、「Favorites(お気に入り)」、「Applications(アプリケーション)」、「Computer(コンピュータ)」、「Recently Used(最近使ったファイル)」、「Leave(終了)」といったカスタマイズのできない一連のビューが検索フィールドの下に表示される。各ビューのサブメニューは、それぞれの付属ウィンドウとしてではなく、最上位レベルのビューとして、レベルを切り替える矢印アイコンと共に表示される。こうした表示方法に戸惑う場合は(私もそうだったが)、従来のKDEメニューをウィジェットとしてデスクトップに追加することができる。

 デスクトップの使い方に影響する変更点はほかにもある。画面右下の隅をクリックするとカレンダーがポップアップ表示され、左下隅をクリックするとスタートメニューが現れる。また、Alt-左クリックでウィンドウの移動、Alt-右ドラッグでウィンドウのリサイズなど、キーボードおよびマウスによる数々のショートカット操作も利用可能だ。

 KDEの開発者たちは、こうした変更にあたって単純化と整理、そしてデスクトップのあまり使われていない部分の活用を目指したように思われる。しかし、そうした努力が矛盾した結果につながっているところもある。たとえば、すべてのサブメニューを同じメニュー内に表示することで省スペース化が図られていても、一部のウィジェットのデフォルトサイズが大きすぎるせいでスペースが無駄になっていたりする。

 インタフェースの変更がはっきりとした形で実を結ぶには、もう少し時間がかかりそうだ。最小化したウィンドウのアイコンをデスクトップ上に配置するなど、開発期間中に行われたいくつかの試みはいつのまにか消えていた。次のリリースでは、パネルの柔軟性の欠如という問題がユーザの要望によって解消されるような気がする。

標準のアプリケーション

 デスクトップのデザイン変更には及ばないが、KDEの収録アプリケーションもかなり変更されている。ファイルマネージャとしては、これまでのKonquerorも使えるが、KDE 4ではむしろDolphinの利用が推奨されている。Dolphinは柔軟性の点で非常に優れているが、何よりもこれは広範なオプションと2つのディレクトリを同時に開ける機能のおかげだ。

 KDE 4では、主要なファイルタイプの表示手段も変更されている。新たなドキュメントビューアOkularはPDF、OpenDocumentなど何種類ものフォーマットに対応しているため、必要なビューアの数が大幅に減っている。また、画像フォーマットの表示には、Gwenviewが標準のツールとして使用される。Gwenviewは、大きな画像を見やすくするのに欠かせない全画面表示機能のほか、シンプルかつ十分なスライドショー機能も備えている。

 もう1つ、大きな変更のあった基本アプリケーションがKDEの仮想シェル、Konsoleだ。メニュー構成が変わっているほか、キーボードショートカットの数が増えている。Dolphinと同様、新しいKonsoleは、個別のインスタンスを開かなくても関連操作が行える分割表示の機能を備えている。その他、実行中のプログラムを反映してタブのタイトルを自動的に変更する機能や、検索結果の履歴情報といった新機能も存在する。

設定および管理ツール

 KDE 4では、KDE Control Centerが過去のものとなり、それよりもずっと整理された「System Settings(システム設定)」ウィンドウが用意されている。これはツリー方式の設定ペイン群で、4つのグループに分類された各種アイコンが「General(一般)」および「Advanced(詳細)」タブに分かれて表示される。また、この「System Settings」ウィンドウのレイアウトの一貫性はControl Centerよりかなり向上している。

 不可解なのは、プリンタ設定ツールなど一部のツールが一般設定のメニューになく、またKDEメニューの設定のように「System Settings」に追加されなかったツールが存在することだ。一度に提示するオプション数を減らそうとしたのかもしれないが、これでは規則性がわからない。

 設定ツールに関しては、ここ何回かのリリースですでに申し分のない出来だったので、KDE 4での追加機能はあまりない。それでも、「Splash Screen(スプラッシュ画面)」の管理、「Preferred Application(お気に入りのアプリケーション)」の設定、そしてグラフィックデザイナーたちがずっと求めていたフォントの有効化/無効化といったツール群が追加されている。

最終判断は保留

 今回紹介したのはKDE 4における変更内容のごく一部だ。すべてを紹介しようとすると長い箇条書きになるだろう。だが本当に重要な点は、KDE 4がどの程度の成功を収めたかである。

 変更の範囲を見る限り、ある意味でKDE 4は大成功といえる。デザイン面でいくつかの矛盾をはらんではいるが、以降のリリースで解決できるだろう。本当に重要なのは、これほどの大がかりな変更にもかかわらず、パフォーマンス上の問題が最小限に抑えられているように見えることだ。KDE 4の過去のバージョンは1、2回使ったことがあるが、そのときは何度かクラッシュに遭遇した。ただし、それがKDE 4自体の問題だったのか、ライブDVDに急いでまとめたからなのかは今になってもわからない。

 また別の見方をすれば、KDE 4には我々がデスクトップ環境に対してずっと抱いてきた価値観に変化や刺激をもたらす要素があまりに多いため、その違いに見合うだけの効果があるのだろうか、といった見方を最初からする人は少ないだろう。これまでとの違いを理由にKDE 4を受け入れようとしない人もいれば、同じ理由で飛びつく人もいるだろう。KDE 4に対して自らの評価を下すには、この新しいデスクトップ環境を相当な期間にわたって日常的に使い続ける必要があるだろう。

 1つ明らかなのは、KDE 4が野心的な取り組みの成果であり、これまでのデスクトップの概念を拡大しようと試みた開発者たちは称賛に値する、ということだ。こうしたアイデアには、Mac OS XやWindows Vista、あるいはGNOMEやSymphony OSなど、ほかのデスクトップ環境から借用したものも一部あるが、そのほかはKDE 4独自のものだろう。個人的には、すべての試みが成功しているとはとても思えないが、できるだけ早いうちにGNOMEからKDE 4に乗り換えて、はっきりとした答えが出るまで使い続けてみようと思うほど、好奇心をかきたてられている。

Bruce Byfieldは、Linux.comとIT Manager’s Journalに定期的に寄稿しているコンピュータジャーナリスト。

Linux.com 原文