著しい進歩を示すGNOME 2.20

 GNOME 2.20が昨日(9月19日)リリースされた。私は普段からGNOMEを使用しているのだが、通常は新リリースに対して特にわくわくすることはない。というのも、GNOMEのたいていの新リリースは実質的には前バージョンとほとんど変わらず、行なわれた作業の大部分は表面的には目に付かないものだからだ。しかしGNOMEの今回の新リリースには、新機能やアップグレードが数多く含まれている。そのため特にGNOMEデスクトップ環境の熱狂的なファンというわけではなくても注目に値する。

 今回GNOMEの新機能を試してみるために、GNOME 2.20がデフォルトのユーザインターフェースとして含まれる次期Ubuntu 7.10のナイトリービルドをノートPC上にインストールした。できるだけGNOMEのデフォルトの感じを残すため、テーマについてはUbuntuで使用されているものではなくGNOME 2.20の新しいデフォルトのテーマに戻した。リリースノート内で使われていた壁紙は今回試したUbuntuのインストールの中では見つけることができなかったので、おそらくartパッケージの中には含まれていなかったのだと思われる。

 最近ではたいていのディストリビューションがデスクトップのルック&フィールをカスタマイズしているので、ディストリビューションのデスクトップ環境がGNOMEであってもGNOMEの新しい見掛けを見ることはないかもしれない。GNOME 2.20は前バージョンと同じClearlooksというテーマを使用しているが、まったく別のテーマかと思わせるほど手直しされている。GNOME 2.20のClearlooksは、ボタンの状態が分かりやすく、ウィンドウの装飾も新しい雰囲気になっている。私はこの新しいバージョンが気に入った。この新しいバージョンは「Gummy Clearlooks」と呼ばれているようだ。GNOMEのnano-gummyというテーマに似ているので、適切な名前だ。私がデスクトップ環境のデフォルトのテーマを使い続けようと思ったのは、Gummy Clearlooksが初めてだった。

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GNOME 2.20

 テーマに関して言えば、古いテーママネージャに代わって「Appearance Preferences」が登場した。Appearance Preferencesは、デスクトップテーマだけでなく、背景、デスクトップ効果、フォント、インターフェース設定についてのカスタマイズを行なう中心的な場所となっている。このような設定が一ヶ所に集まっていることにより、GNOMEの設定メニューの場所が節約されている。

 GNOMEのスクリーンセーバーには、便利な新機能が追加された。ユーザがコンピュータをロックして席を離れている間に、同僚などがメッセージを残しておくことができるという機能だ。ユーザは席に戻ってきた際に、残されたメッセージを読むことができる。この機能があれば、紙にメモする必要がなくなることも少なくないだろう。

 GNOME Power Managerが改良されていたのも嬉しかった。GNOME Power Managerは、電源関連のイベントに関する便利なメッセージを表示するだけでなく、ワイヤレスマウスの電源が残り少なくなったり、電源ケーブルが抜けたなどといった状況を知らせるための警告も表示してくれる。

GNOMEのデフォルトの電子メールクライアントであるEvolutionは、開発者の間でも注目されている。最も便利な新機能はおそらく、Evolutionのバックアップ/リストアプラグインだろう。前バージョンまでは、メッセージとアカウントをバックアップするのは簡単ではなかった。しかし付属文書の説明によると、電子メールメッセージと設定とをアーカイブにまとめて保存することができるようになった。アーカイブは後でインポートすることができるので、新しいPCを使用する際や既存のPCを再インストールする際などに便利だ。しかし残念ながらUbuntu 7.10上ではこの機能を利用することができなかった――Ubuntuではこの機能が無効になっているためなのか、それともパッケージ内にバグがあって利用不可能になっているためなのかは分からなかった。

 Evolution関連のその他の新機能としては、新しくメールを受信した時に表示を出して知らせてくれるステータスバー上のアイコンや、送信しようとしているメールの本文から判断して添付ファイルが添付されているべきときに添付されていない場合にそのことを通知してくれるリマインダなどがある。試してみたところ、添付ファイルのリマインダのプラグインはデフォルトでは無効になっていた。とは言え「Edit(編集)→Plugins(プラグイン)→Configure(設定)」をクリックして有効にするためのチェックを入れるだけで、このプラグインを簡単に有効にすることができた。

 GNOMEのTotemメディアプレイヤは、再生しようとしたメディアに対応するコーデックがインストールされていない場合に、コーデックを検索することができるようになった。残念ながらこの機能はパッケージメンテナによって実装される必要があるため、すべてのディストリビューションで利用可能になっているわけではない。とは言え、このような機能はLinuxをより便利にするための大きな進歩だ。

 より小さめの新機能には、メディアのプロパティを表示するウィンドウ内でメディアの空き領域を示す円グラフが表示されるようになったことや、Geditの構文ハイライトが新しくなったこと(ただし現時点ではRubyやPHPなど一部のスクリプト言語のみに対応)などがある。またGNOME Keyring Managerは、ユーザがログインした際に自動的にロック解除するようになったので、キーリングのロックを解除するためにパスワードをさらに入力する必要がなくなった。

 以上は、GNOME 2.20の新機能の中でも最も目立つ興味深いものをいくつか抜き出したに過ぎない。ここで紹介したような機能よりも目立たないような変更は、デスクトップの至るところで行なわれている。

性能

 以上のような機能はどれも素晴らしいものばかりだとは言え、GNOME 2.20の実行速度はどうなのだろうか? 実行結果はあなたの場合は異なる可能性があるが、私のマシン上では少しだが有意なスピードの向上が見受けられた。メニューの表示が速くなっているし、全体的にすべてが以前よりもやや高速に反応するようになっている。メモリの使用量についてはGNOME 2.18のときとほとんど変わらない。私の場合、搭載している1GBのRAMのうちの約995MBをシステムが使用するのだが、そのうちデスクトップが使用していたのはたったの201MBほどだった。同じマシンでGNOME 2.18をインストールした際には、188MBを使用していたので、ほとんど同じだ。

 GNOME 2.20には新機能や改良点が満載だが、やはり小さな問題点もある。デフォルトのテーマの見掛けは新しくなったが、GNOMEのアイコンのテーマは長い間同じものが使われている。また、メディアの空き/使用領域を示す円グラフが表示されるようになったが、ドライブのサイズが「unknown(不明)」、タイプは「desktop configuration file(デスクトップ設定ファイル)」と表示されてしまっている。最後に、EvolutionのMicrosoft Exchangeのサポートはどうひいき目に見てもいまだにバグが多い。仕事場でのメールに接続しようとしてみたところ、Evolutionは何度もフリーズした。またメッセージをフォルダから別のフォルダにコピーしようとしたときにも一度フリーズした。

 全体的に見ると、小さい問題点がいくつかあるものの、GNOME 2.20は素晴らしいリリースであり、ユーザが必ず重宝するようになるだろうと思われる新機能が数多く含まれている。パイオニア的であったり、われわれが知っているLinuxを激変させたりすることはないが、目に見えるはっきりとした新機能がほとんどなかった以前のバージョンと比較すると、正しい方向へ確実に一歩進んだリリースだと言える。GNOME 2.20の私のユーザ体験はこれまでのところ順調だ。このようなリリースが伝統として継続して、すばらしい改訂をより頻繁に行なって前進して欲しいと思う。

Jeremy LaCroixは時間がある時に記事を執筆しているIT技術者。

Linux.com 原文