インタビュー:XenSourceジェネラル・マネージャーが語る、XenEnterpriseの優位性

 米国XenSource、住商情報システム(SCS)、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の3社は4月24日、日本市場における、XenSourceの仮想化製品の提供に関して協業することを発表した。本稿では、この発表のために来日したXenSourceのアジア ジェネラル・マネージャー、Nima Homayoun(ニーマ・ホマユーン)氏へのインタビューで明かされた、XenSourceの戦略についてお伝えする。

 インタビューの内容をお伝えする前に、今回の3社の協業について簡単に触れておこう。

 XenSourceはオープンソースのハイパーバイザ(仮想マシンモニタ)であるXenの開発を主導する企業で、Xenベースの企業向け仮想化製品としてXenEnterpriseを初めとするXenServer Familyを開発している。今回の協業により、日本ではSCSがディストリビューター兼ソリューションプロバイダーとしてXenSource製品の販売およびシステム構築サービスを展開するほか、他の販売代理店やソリューションプロバイダーへのサポートも提供する。CTCもSCSの協力の下、ソリューションプロバイダーとしてXenSource製品を使ったシステム構築サービスを展開する。

 仮想化技術は、サーバの稼働率と運用性・管理性を向上させ、TCO削減を実現するキー・テクノロジーとして、現在大きな注目を集めている。その中でもXenは、サーバ仮想化の本命と目されている製品だ。そのXenの商用版が日本市場にデビューしたことで、仮想化技術導入の動きが日本企業でも活発化するものと期待される。

 それではインタビューの内容に移ろう。

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XenSourceのアジア ジェネラル・マネージャー、Nima Homayoun(ニーマ・ホマユーン)氏

――XenEnterpriseは出荷されてからまだ日が浅いが、どれくらいの導入実績があるのか。

 2006年12月にリリースしたXenEnterprise 3.1が最初の製品だが、現在までに約200社が導入している。

――IAサーバの仮想化市場ではVMwareが先行している。後発のXenSourceにはどのような強みがあるのか。

 技術とビジネスの両面で、XenSourceにとって有利な面があると考えている。まず、技術的な面では、アーキテクチャの違いがある。VMwareは基本的に10年前の技術をベースにした製品であり、アーキテクチャが古くなっている。XenEnterpriseは準仮想化という新しい技術を利用しており、これはVMwareの完全仮想化よりも(仮想化による)オーバーヘッドが少ない。XenEnterpriseも完全仮想化に対応しているが、これはIntel VTやAMD-Vといった最新のハードウェア仮想化技術を活用したもので、VMwareのそれとは異なる。

 ビジネス面での優位性としては、コア技術のXenがオープンソースで開発されていることが挙げられる。Xenの開発プロジェクトには、Intel、AMD、IBM、HP、Red Hat、Novellといった大手企業が参加しており、Xenのコードはこれらの参加企業によって検証されている。こうした検証作業は、製品の安定性や堅牢性を向上させるうえで非常に重要だ。この開発コミュニティによる検証作業は、顧客が安心して導入できる製品を開発するうえで不可欠なものと考えている。例えば、XenにはIntel VTの技術が使われているが、Intel自身も新しいCPUでVTが正常に機能するかどうかをXenを使ってテストしている。これは、Xenがパートナー企業からいかに強いコミットメントを得ているのかを示す好例と言えるだろう。

――Xenがオープンソースであることで、Virtual IronのようなXenベースの仮想化製品を開発する企業が登場してきている。XenSourceはこうした企業と競合することになるが。

 Virtual IronはXenをカスタマイズして自社製品に組み込んでいるが、カスタマイズされたコードはXenの開発コミュニティによる検証を受けているわけではない。XenSourceにはXenを最初に作った開発者がすべて在籍しており、現在Xenの開発に最も貢献している企業もXenSourceだ。Xenに関して我々は技術的なアドバンテージを持っているわけで、より多くの顧客から信頼を得られると考えている。

――Xenを組み込んだ製品としては、Red HatやNovellの企業向けLinuxもある。これらは強力なライバルとなるのではないか。

 主要なOSベンダーと協力関係を築くというのは、XenSourceの戦略だ。Red HatとNovellはすでにXenを組み込んだ企業向けLinuxを出しているし、(Sunの)Solarisも今年中にはXenに対応する予定だ。さらに、我々はMicrosoftとも強力な提携関係を結んでいる。

 それにXenを組み込んだLinuxとは、あまりバッティングしないのではないかというのが我々の考えだ。例えば、Red Hatの主なターゲットはLinuxのユーザー企業だ。一方、XenSourceはLinuxユーザーとWindowsユーザーの両方をターゲットとしており、特にWindowsサーバを仮想環境に移行させたいという企業にフォーカスしている。XenEnterpriseには、Windowsゲスト用のPV(Para-Virtual)ドライバが含まれている。これはXenSourceで開発したドライバで、WindowsゲストのIOを準仮想化するためのものだ。PVドライバはMicrosoftでも動作検証されており、認定も受けている。このドライバを使うことで、XenEnterpriseではWindowsの高速かつ安定した動作を実現している。これは、VMwareやXenを組み込んだLinuxでは提供されていない機能だ。

 MicrosoftとXenSourceの提携には、Windows ServerでXenを継続的にサポートすること、そのために両社が共同開発を行うことが含まれている。Microsoftとこうした提携を結んだオープンソース企業は、XenSourceが最初だ。この提携により、XenEnterpriseは、Windowsアプリケーションをこれからも使い続けたいと考えている企業が安心して導入できる製品となっている。

――Windowsユーザーが主なターゲットということは、XenSourceでは既存サーバのコンソリデーション(集約)を重視しているということか。

 データセンターの仮想化も視野に入れているが、最初はサーバ・コンソリデーションと検証・開発環境の仮想化が主な市場になると想定している。これらは、仮想化によるメリットをユーザー企業が理解しやすい分野だからだ。まず、これらの分野で導入されて仮想化に対する理解が深まれば、データセンター全体に仮想化技術を導入するといった流れが自然に出来てくるだろう。XenSourceとしては、そうした顧客に対し、サービスレベル・オペレーションを実現するようなソリューションを提供したいと考えている。

――データセンター仮想化では、SWsoftのVirtuozzoのようなOSレベルの仮想化技術が注目されている。

 Xenは、OSの下で動作する“ベアメタル”の仮想化技術だ。これは、VirtuozzoやSolaris Container、あるいはMicrosoft Virtual Server、VMware GSX Server(現VMware Server)のような、OS上で動作する仮想化技術よりも安定性やセキュリティの面で優れている。

――XenSourceの製品ロードマップはどのようになっているのか。

 今年4月にリリースしたXenEnterprise 3.2では、性能面でVMware ESX Serverに追いつくことを最大の目標としていた。この目標は達成されたと言ってよいだろう。我々が実施したベンチマークテストでは、WindowsゲストではXenEnterpriseとESX Serverがほぼ同等の結果を出し、LinuxゲストではXenEnterpriseのほうがESX Serverよりも圧倒的に速いという結果が得られた。結果を公表するためにVMwareに連絡を取ったのだが、VMwareもその内容を認めている。このベンチマークの結果は、XenSourceのWebサイトで公開している。長年改良が重ねられてきたESX Serverに匹敵する性能を、昨年12月にリリースされたばかりのXenEnterpriseが備えているという事実は、我々の技術力の高さを証明するものだ。

 また、今年7月にリリース予定のXenEnterprise 4.0では、(Windows環境も含めた)ライブマイグレーション機能(仮想マシンを稼動させたまま、物理サーバ間で移動させる機能)、共有ストレージ(NAS)のサポート、サードパーティSDKを提供する。サードパーティSDKにより、XenEnterpriseの管理コンソールを顧客のニーズに合わせてカスタマイズできるようになる。また、今回の発表には間に合わなかったが、4.0では管理コンソールが日本語化される予定だ。

 2008年には次期Windows Server(開発コード名:Longhorn)への対応が予定されている。なお、Longhorn対応版の出荷時期は、(Microsoftとの協定により)Microsoftが開発中のハイパーバイザ(開発コード名:Viridian)と同時期になる。このバージョンでは、Longhornのネイティブ動作を実現する。

――最後にXenSourceにおける日本市場の位置づけを聞かせてほしい。

 XenSourceでは日本を米国、欧州に次ぐ第3の市場としてとらえている。日本では最近、インフラに対する投資が活発になってきていると聞いているので、このタイミングで日本市場に進出できたことを非常にうれしく感じている。

米国XenSource
http://www.xensource.com/

住商情報システム
http://www.scs.co.jp/

伊藤忠テクノソリューションズ
http://www.ctc-g.co.jp/

XenEnterpriseとVMware ESX Serverのパフォーマンス比較(PDF)
http://www.xensource.com/files/hypervisor_performance_comparison_1_0_5_with_esx-data.pdf