企業IT支出の最優先項目はサーバの「統合」と「仮想化」

 IT予算に関する米国Goldman Sachsの最新調査によると、米国企業のIT幹部たちは、向こう12カ月の間、IT予算を「サーバ統合」や「ネットワーク・アップグレード」といったプロジェクトに集中させようとしている。一方、これまで優先度の高かった「セキュリティ」「リスク管理」「コンプライアンス」は、支出優先順位上位10項目から姿を消した。

 Goldman Sachsは先ごろ、企業のITマネジャー100人を対象にしたIT支出に関する最新調査結果を発表した。それによると、予算額の伸びは依然鈍化傾向にあり、IT支出額もほぼ横ばいの状況にあるが、優先投資項目の順位には大きな変化が見られたという。

 例えば、これまで優先順位で中位に位置していた「サーバ統合」と「サーバ仮想化」が、それぞれ1位と3位に大躍進を遂げた。回答者の40%以上が、向こう 1年間の優先項目として「サーバ統合」を挙げ、また、回答者のほぼ40%が、「サーバ仮想化」を以前よりも重視していると答えた。Goldman Sachsは、このような変化を、サーバ販売台数の伸びが鈍化した昨年の時点で予測していたとしている。

 この点について、同リポートは「生産環境やテスト環境への仮想技術導入を目指すというCIOの発言が多くなる一方で、最近はサーバの台数と売上高の伸び率との間にズレが生じていた。今回、サーバの統合と仮想化が大幅に優先順位を上げたことは、これらの事象とも合致する」と説明している。

 とはいえ、このことは、(物理的なハードウェアの出荷台数が減ることで)すべてのサーバ・ベンダーが赤字に陥るということを意味するものではない。実際、同リポートでも、「スタンドアロン型やラックマウント型のサーバはともかく、ブレード・サーバは顕著な伸びを続けるだろう。なかでもHPの“c-Class”は2007年1月-3月期に45%の成長を記録し、その結果、HPはブレード・サーバ市場で最大のライバルである IBMを抜き去った」と述べられている。

急増するネットワークのアップグレード需要

 さらに、今回の調査では、Ciscoの売上げ増を予測させるような新たな傾向も明らかになった。IT支出優先順位の上位10項目に、「VoIP」と「ネットワーク・アップグレード」がランクインしたのだ。

 回答内容を具体的に見てみると、30%以上の回答者が「VoIPへの投資を計画している」と答え、別の約30%が「LANまたはネットワークのアップグレードを向こう12カ月以内にロードマップに含めることを予定している」と答えている。

 Goldman Sachsによれば、VoIP機器に1ドルが費やされるごとに、ネットワーク・アップグレード機器に3ドルが費やされることになるというから、ネットワーク機器ベンダー、とりわけCiscoにとっては朗報だ。ちなみに、これらのことから、Goldman Sachsのリポートは、次のような結論を導き出している。

 「VoIPの需要増は、Ciscoのエンタープライズ・ネットワーク・インフラ事業にプラス効果をもたらすことになろう。特に、スイッチングやVoIP機器の事業は大きな恩恵を被ることになる」

 「(その結果)カナダのNortelと米国AvayaからCiscoへと、市場シェアが大きく移ることになると予測される」

ソフトでは、ERPとBIに投資が集中

 PCハードウェアへの投資を促す要因として、Goldman Sachsは「ラップトップPC導入意欲の高まり」を挙げているが、Microsoft「Vista」のリリースがそれに貢献している様子はあまり見えない。ちなみに、「クライアント・マシンのアップグレード」を最優先事項とした回答者は25%いた。

 ソフトウェアに関して言えば、回答者は「ERP」と「BI(ビジネス・インテリジェンス)」に引き続き高い優先順位を付けている。例えば、40%以上の回答者が「ERP関連プロジェクトを計画している」と答えた結果、ERPはIT支出優先項目で2位となった。

 一方、「BIソフトウェアに注目している」とした回答は35%以上あった。こうした動きは、ドイツのSAPや米国Oracleなどのソフトウェア・メーカーにとっては追い風となっている。その追い風を受けて、Oracleは今年3月、BIソフトウェアのベンダーであるハイペリオン・ソリューションズを33億ドルで買収すると発表した。

 今回の調査では、ここ数年常にトップ3の一角に食い込んでいた「セキュリティ」「コンプライアンス」「リスク管理」が、支出優先順位上位10項目から外れた。その理由は、後ろの2つについては、規制に対する企業側の取り組みが完了したためであると考えられる。また、「セキュリティ」の優先度が低くなった理由については、Goldman Sachsが次のように説明している。

 「製品が成熟したこともあって、セキュリティに対する企業の不安が緩和されつつある。また、ここしばらく、大規模なセキュリティ侵害やマルウェアによる破壊的な事件がほとんど起きていないことも大きい」

(デニス・ドゥビー/Network World 米国版)

提供:Computerworld.jp