日立、仮想化を強化した新エンタープライズ・ストレージを発表――ハード/ソフト/サービスを包括する新コンセプトの下にトップシェア堅持をねらう
発表に際し、同社執行役専務で情報・通信グループ副グループ長 兼プラットフォーム部門CEOを務める高橋直也氏は、「複雑な構成や運用を意識することなく、顧客がストレージ資産を有効活用することを可能にする統合ストレージ・ソリューションを提供する」と新コンセプトのねらいを語った。今後、同コンセプトに基づいて、ストレージ・ハードウェアだけではなく、関連するソフトウェアとサービスを含めて「Hitachi Storage Solutions」というブランド名の下に提供していく。
日立はこれまで、国内では「SANRISE」、海外では「TagmaStore」というブランド名でストレージ製品を展開していた。高橋氏によれば、「SANRISEはハードウェア・ブランドという印象が強い。今日の顧客が抱える問題解決には、ハードだけではなく、ソフト、サービスも合わせて提供する必要があることから、新ブランドでに移行した」という。また、国内と海外でブランド名が異なるため、特にグローバル展開する企業が混乱するおそれがあることも、ブランド名刷新を促す要因となった。
第1弾製品となるHitachi USP Vは、仮想化機能を強化した点が大きな特徴。具体的には、ボリューム容量の仮想化を実現する「Hitachi Dynamic Provisioning」を搭載した。これは、物理ストレージ容量に依存せずに自由に仮想ボリューム容量を設定できる機能で、高橋氏によれば、「他ベンダーには、ミッドレンジ以下の製品で同様な機能を備えたものもあるが、エンタープライズ製品としては初めて搭載した」機能であるという。
従来は、サーバに仮想ボリュームを割り当てる際に、物理ストレージの未使用領域を含めて一定の容量を確保する必要があり、将来的な使用量を事前に予測することが必要だった。これに対し、Hitachi Dynamic Provisioningでは、あらかじめサイズの大きなボリュームを設定し、容量増加後に物理ストレージを追加するという運用が可能になる。また、従来は各サーバ用に未使用領域を保持しなければならなかったが、Hitachi Dynamic Provisioningでは仮想ボリュームへの書き込みがあった時点で初めて物理ストレージ容量が消費されることになるため、ストレージ容量の使用効率を向上させることができる。
加えて、Hitachi USP Vでは、ハードウェア・アーキテクチャを刷新し、第4世代のクロスバー・スイッチ型アーキテクチャ「Universal Star Network V」を採用した。これにより、内部のデータ転送の能力が106GB/sに向上したほか、ディスク側の入出力処理などを行うバックエンド・プロセッサ、サーバ側のフロントエンド・プロセッサともに、従来機種(SANRISE Universal Storage Platform:SANRISE USP)の倍となる処理能力を確保した。ファイバ・チャネル・ポートは最大224ポートまで拡張可能で、最大記憶容量は外部ストレージを利用した場合で 247PBと、SANRISE USPの32PBに比べて大幅に向上した。
Hitachi USP Vの投入により日立は、エンタープライズ市場でのトップシェアの維持・拡大を図る。さらに今後は、ミッドレンジ市場におけるシェア拡大に向けた新製品の投入を予定しているほか、CAS(Content Addressed Storage)の製品化も予定しており、コンテンツ・アーカイブ市場におけるシェア獲得に本腰を入れる。事業目標としては、2006年度の3,400億円から2010年度には4,000億円以上の売上げを目指す。
一方、米国においてはHitachi USP Vを、日立データシステムズが5月14日に発表した。Computerworldオンライン米国版の取材によれば、米国ユナイテッド航空は、Hitachi USP Vのテストを約3週間にわたって行ってきたという。
同社は現在、3カ所のデータ・センターで約10台の「TagmaStore USP」(SANRISE USPと同等の製品)を運用している。3カ所のうち2カ所はデータ復旧用にシカゴ、もう1カ所はサンフランシスコで同社では「メンテナンス基地」と呼んでいる。これらは、予約/料金設定システムが稼働するサーバのバックアップをはじめ、さまざまな基幹システムで利用されている。
ユナイテッド航空でエンタープライズ・アーキテクチャ担当マネージング・ディレクターを務めるゲイリー・ピラファス氏は、「特に、ユナイテッド航空が有する巨大な並列データ・ウェアハウスの運用管理を行ううえで、Hitachi USP Vが重要な役割を果たすはずだ」と新製品に期待を寄せる。
このデータウェア・ハウスでは、データ量が毎年30~40%のペースで増加しているという。「当社のデータウェア・ハウスでは、相当なスループットと応答時間が求められる。通常で、10万以上の入出力を処理し、7ミリ秒以内の応答時間を確保することが必要だ。そうした環境でのテストにおいてHitachi USP Vは、500%のパフォーマンス向上を達成した」(ピラファス氏)
(大川 泰/Computerworld)
日立製作所
http://www.hitachi.co.jp/
日立データシステムズ
http://www.hds.com/
提供:Computerworld.jp