仮想化ソフト、今後は「動的管理機能」が焦点に:LinuxWorld San Francisco 2006リポート

 米サンフランシスコで開催された「LinuxWorld Conference & Expo San Francisco 2006」(8月14日〜17日)では、8月16日に、「Virtualization and the Next Generation Data Center(仮想化と次世代データセンター)」と題した仮想化に関するパネル・ディスカッションが催された。

 聴衆の質問を受けながら進められた同パネル・ディスカッションでは、仮想化ソフトウェアはどのように成熟させていくべきかを巡って活発な討論が繰り広げられた。同イベントの来場者の多くは、Linuxなどのオープンソース技術を基幹ビジネス環境に導入する方法に関心を持っており、なかでも仮想化は注目のテーマの1つとされていた。

 同パネル・ディスカッションに参加した米Intelのデジタル・エンタープライズ部門主席技術ストラテジスト、ジム・フィスター氏は、「多くの企業がサーバ統合にとどまらず、アプリケーションの移行やSOA(サービス指向アーキテクチャ)といった新しい分野に仮想化を適用するようになれば、仮想化は一気に普及するだろう」と述べた。

 仮想化ソフトウェアは、IntelとAMDのプロセッサでハードウェア・ベースの仮想化技術が提供されるようになったことで追い風を受けている。また、x86サーバ上での仮想化も注目を集めており、米ガートナーでは仮想化を、現在最も戦略的なデータセンター用技術と評価している。

 しかしながら、x86サーバ用の仮想化ツールは、米VMwareが2001年から提供しているものの、今日稼働中のx86サーバのうち仮想化されているものの割合は1%に満たないとアナリストは指摘している。その大きな理由は、ユーティリティ・コンピューティング環境の構築における仮想化の役割を、企業がまだ十分に認識していないことにある、とパネリストらは指摘した。

 これまで仮想化導入のネックとなってきたのは、管理の問題だというのがパネリストの大方の意見であった。こうした仮想環境の管理に必要なソフトウェアは、最近になってようやく成熟し始めたところだ。

 「基本的な仮想化機能に自動管理機能を加えることがきわめて重要だ」と、米IBMの仮想化ソリューション/戦略担当ディレクター、ケビン・リーヒ氏は語った。

 仮想環境の本格的な管理ツールが手に入るようになれば、「管理が手に負えなくなるといったことがなくなり、今よりも多くの仮想イメージを利用できるようになる」と同氏。

 仮想化ソフトウェア・スイートの「Infrastructure 3」を提供する米VMwareや、オープンソース・ハイパーバイザの「Xen」をベースとした仮想化管理ソフトウェアの開発がベータ段階に入っている米バーチャル・アイアンなどのベンダーは、現在、仮想環境の管理に必要なツールの開発に注力している。基本的な仮想化機能がx86プロセッサに組み込まれるようになったことから、仮想化業界全体がこうした方向に進みつつある。

 「ハイパーバイザがコモディティ化し、簡単に入手できるようになるのは時間の問題だ。今後は、仮想サーバをいかに管理するかが大きなテーマとなるだろう」と、米AMDの新技術担当部門マネジャー、スティーブン・マクダウェル氏は語った。

 リーヒ氏もマクダウェル氏と同意見で、どのような管理アプローチを取る場合でも、仮想リソース間で動的にアプリケーションを移動できる自動化機能を実装することが重要だと述べている。

 「(価値が低いという意味ではなく、広く行き渡るという意味で)ハイパーバイザのコモディティ化が進むと、ビジネス・プロセスを結び付ける新しい方法が登場してくるはずだ。また、ポリシーやQoS(サービス品質)などの技術を採用することで、アプリケーション自身が何を必要とするかを定義し、インフラが管理機能を通じて何が利用できるのかを動的に判断するようになる」(リーヒ氏)

 また、パネリストらは、Xenはすでにエンタープライズ環境に対応できるものになっているとの見解を示した。米NovellはXenを同社の「SuSE Linux Enterprise 10」に統合しており、米Red Hatも今年末にリリースする次期「Red Hat Enterprise Linux 5」にXenを搭載する予定としている。

(ジェニファー・ミアーズ/Network World 米国版)

提供:Computerworld.jp