レビュー:Ubuntu Feisty Fawn

 Ubuntu開発陣からはさらに新しいリリースが半年後に予定されているが、現時点ではFeisty Fawnと呼ばれるUbuntuの7.04がデスクトップにおけるLinuxの実力を示す(最先端ではないが)最新のリリースである。初期ベータの頃からFeisty Fawnを動作させてきたが、まだ最高のUbuntuリリースと言えるまでにはなっていない、というのが私の印象だ。

 初めてFeistyに触れようとするユーザが最初に気付くのは、Ubuntu開発者によって非常にユーザフレンドリに作られたダウンロードページだろう。長いリストからISOイメージを探し出さなくても、いくつかの項目を選択するだけで適切なCDイメージをダウンロードすることができる。私の場合、(Firefoxがクラッシュする危険に備えて)FirefoxのダウンロードマネージャではなくGNU wgetを使ってISOイメージを取得するのがいつものやり方だ。この親切なインタフェースではISOの本来のURLがわからないのではないかと少し心配したが、マシンに合った項目を選択すると、無事にダウンロードURLとISOを焼くヒントの記されたページにリダイレクトされた。

 Feistyリリースには、Ubuntu、Kubuntu、Xubuntu、Edubuntu向けの各標準ライブCDインストーラの他、代替インストーラやUbuntuのサーバインストールなどのオプションも用意されている。もちろん、x86、AMD64、UltraSPARC、PowerPCなど幅広いハードウェアプラットフォームにも対応している。今回のレビューでは、UbuntuおよびKubuntuのx86バージョンの調査を行った。使用したマシンは、2.66GHz XeonのデュアルコアCPU、2.5GBのメモリ、Nvidia Quadro 4ビデオカードを搭載したIBM Intellistation Z Pro、AMD Athlon 64 X2 4200+、4GBのメモリ、比較的新しいNvidiaカード(GeForce 7900)を積んだ自作PC、1GBのメモリを持つIBM ThinkPad T43の3台だ。

 ライブCDインストーラは、Edgyのものとほとんど変わっていない。CDを挿入すると、メモリが256MB以上あるシステムであれば、インストーラがUbuntuまたはKubuntuデスクトップの環境を立ち上げてくれる。ユーザはインストールを行う前にUbuntuの雰囲気をつかむことができるわけだ。また、インストールアイコンをクリックし、すぐにインストール作業を開始することもできる。ユーザ名、パスワード、タイムゾーン、ディスクのパーティション設定といった基本的な項目に答えながらインストールウィザードの実行を進めれば、あとは全ファイルがハードディスクにコピーされるのを待つばかりである。

 今回は、自作マシンとIBMデスクトップ機でこのインストーラを実行した。いずれも、問題なく動作し、マシンの全ハードウェアが検出された。すべての作業が終わるまでには、30~40分ほどかかった。

Ubuntuのアップグレード

 すでにUbuntuを利用しているなら、Feistyへのアップグレードのためだけにわざわざインストールをやり直す必要はない。Ubuntuのシステムアップデータを使えば、通常のシステムアップデートを実行するのと同じくらい簡単にアップデートが行えるからである。少し時間はかかるが、実際にやるべきことと言えば、ただ座ってファイルがダウンロードされるのを見守ることくらいだ。あとは、すべてこのアップデータがやってくれる。

 Ubuntu Edgyを実行していたThinkPad T43でこのアップグレードを実施したところ、開始から終了まで、ダウンロード時間も含めて全部で1時間半ほどかかった。インストーラの表示によれば約1,300のパッケージ取得が必要となっていたので、まずまず容認できる時間だろう。

 アップグレードが中断してしまうような問題には遭遇しなかったが、同僚の1人はアップグレード後にUSBデバイスが認識されなくなったと言っていた。

 私のデスクトップ機にクリーンインストールを実施した際、EdgyとFeistyの小さな違いに気付いた。ストレージデバイスの名前の付け方が少し変化しており、外部のUSBドライブ(MP3ファイルが入っている)が以前の/media/usbdiskから/media/diskに変わっていたのだ。別にたいした問題ではないが、コピーしたアプリケーション設定や、/media/usbdiskパスを利用していた数点のスクリプトをいくらか変更しなければならなかった。

制限付きドライバ

 マシンをリブートしてFeistyが立ち上がるとすぐに、「制限付きドライバ」の存在に気付いた。この制限付きドライバのアイコンをクリックすると、パスワードの入力が求められた後で管理用インタフェースが現れた。この「Restricted Drivers」ダイアログには3つの項目が並んでいる。VMwareネットワークドライバ、VMware Playerパッケージに付随するマシンモニタ、そしてATIアクセラレーション対応のグラフィックドライバである。また、各ソフトウェアはプロプライエタリであって「今後問題が生じても簡単には修正できない」との注意事項も表示されていた。

 こうした制限付きドライバを有効にするには、有効化のボタンをクリックしてリブートするだけでよい。そのため、Nvidiaカードを搭載した他の2台のマシンでは、有効化ボタンのクリックとリブートだけでNvidiaアクセラレーション対応のグラフィックドライバを有効にできた。

 フリーソフトウェア支持者、そして現実主義者として、私は、制限付きドライバの問題を扱うUbuntuのこうしたやり方を評価している。こちらのマシンをフル稼働させて我々が取り上げるべきすべてのフリーソフトウェアを試すことができればすばらしいのだが、残念ながらそこまではできなかった。さらに、WindowsやMac OSからの移行を検討しているユーザの期待に応えようとするなら、彼らが使いたいと思うデバイスもサポートしなければならない。各OEM業者がそうしたデバイス用にフリーのドライバを提供していないことは、Linuxコミュニティの責任ではない。しかし、このままでは、フリーのドライバでは自分の持っている300ドルのNvidiaカードが3D効果に対応できず15ドルのビデオカードと何ら変わらないことや、いくつかのプロプライエタリの要素がなければ無線カードが役に立たないプラスチックと金属の塊に過ぎないことを知った新規ユーザが離れていく状況を食い止めることはできない。そうしたなか、このUbuntuのアプローチは中間的な立場を取った優れた方法に見える。「制限付き」のソフトウェアを有効にする前には警告が与えられるが、そうした制限を受け入れるユーザはその有効化をたやすく行うことができる。

デスクトップ効果

 デフォルトではデスクトップ効果が有効になっていないが、少なくともGNOMEの環境では比較的簡単に有効にできる。ビデオカードのドライバが正しくインストールされていること、CompizまたはBerylパッケージがインストールされていることを確認したうえで、「System」→「Preferences」→「Desktop Effects」を順に選択すればよい。

 Nvidiaカードを用いたGNOME環境では見事に動作したが、ATIカードを搭載したノートPCではうまくいかなかった。また、KDEでも簡単には動作しなかった。

 私のATIカードでデスクトップ効果を有効にしようとすると、コンポジット拡張機能がないとのエラーが出ただけで、それ以上は何も表示されなかった。追加パッケージをいくつかインストールするか、別のドライバに切り換えるかすれば必要なサポートが得られるのかどうかも不明だ。SimplyMEPISでは同じ環境でデスクトップ効果を動作させることができたので、私のATIカードがCompizとBerylをサポートしていることは間違いないはずだった。

 デスクトップマシンではKDEとCompizの組み合わせを実行したかったのだが、KDEにはデスクトップ効果を有効にできる設定が見当たらなかった。この件についてKubuntu開発者Jonathan Riddell氏に電子メールで問い合わせたところ、compi-kdeの取り組みが頓挫していること、最善の方法はBerylをインストールすることだという回答が返ってきた。ただ、その解決策には抵抗を感じた。Berylは不安定という印象翻訳記事)があるからだ。KDEには、FeistyのGNOMEのようなデスクトップ効果向けアプレットが用意されていないことも彼は認めていた。

 次期Ubuntu、Gutsy Gibbon向けのソフトウェアには、制限付きドライバ用アプレットのようなアプレットが用意される、とRiddell氏は述べている。残念ながら、Feistyでは、KDEユーザがデスクトップ効果のセットアップに多少苦労することになりそうだ。

ソフトウェアの品揃え

 Ubuntu標準のデスクトップGNOME 2.18翻訳記事)については既にレビュー済みだが、その内容はUbuntu Feistyにも当てはまる。安定したリリースだが、ログインしたとしても大きな変更点や「あっと驚く」ような機能を目にすることはないだろう。実は、UbuntuにはGNOMEの2.18.1が入っているのだが、この.1のバージョンアップはバグフィックスに過ぎず、新たな機能はまったく追加されていない。

 ただし、先に述べたように、Feistyでは、デフォルトにこそなっていないがデスクトップ効果の有効化が容易に行える。また、JavaやFlashのインストールも簡単になっている。Feistyには、Firefox、OpenOffice.org、Gaim(そのうちにPidginという名になる)、Evolutionなどすべての標準デスクトップパッケージで機能凍結時に利用可能だった最新かつ最大バージョン番号のパッケージが含まれている。

Kubuntu

 KubuntuにはKDE 3.5.6が付随しており、いくつかの点でEdgyリリースからの改善が見られる。なお、FeistyにアップグレードしなくてもEdgyのKDEを3.5.6にアップグレードできる点に注意してほしい。KDEから新しいリリースが出るとすぐに、Kubuntu開発陣がそのためのパッケージをリリースしてくれるからだ。Kubuntuには、AmaroK 1.4.5やOpenOffice.org 2.2のような既存パッケージのアップグレード版のほか、改良された新しいネットワーク設定ユーティリティKNetworkManagerといった目新しい機能もいくつか含まれている。

 Kubuntuの設定ユーティリティはFeistyになって再調整が行われており、「General」および「Advanced」タブを備えた「System Settings」センターが用意されている。「General」タブでは、デフォルトアプリケーション、KDEの外観、ユーザ、ネットワーク構成をはじめ、数々のシステム項目の設定を行うことができる。一方の「Advanced」タブには、システムサービス、ログインマネージャ、オーディオのエンコーディング、新しいWine設定ユーティリティへのアクセス手段が含まれている。

 個人的にWindowsアプリケーションはあまり好きではないが、このWineユーティリティは役に立ちそうだ。まだWineをインストールしていない場合は、このユーティリティによってパッケージの取得とWineのインストールが行われる。また、Wineの下で実行するプログラムが参照するWindowsのバージョン設定、Linuxファイルシステム上のディレクトリに対するWindowsドライブ文字のディレクトリマッピング、アプリケーションの外観、Direct3Dのサポートをはじめ、アプリケーションをWineの下で実行するために調整が必要な項目の設定も可能だ。特定のアプリケーションの設定だけを変えることもできるため、一般的な設定ではうまく動作しないアプリケーションについては設定をカスタマイズして動作させることができる。

 ただし、こうしたユーティリティが近いうちにCodeWeavers CrossOverに取って替わることはないと私は思う。Wineを設定した後、その環境下で試しにいくつかのアプリケーションのインストールを行ったが、結果は「まったく動作しない」ものから「問題なく動作する」ものまでさまざまだった。たとえば、私が試した限り、NoteTab Lightは問題なく動作したが、Adobe Acrobatは完全にフリーズしたので仮想端末を切り換えてkillしない限りは再びデスクトップにアクセスできなくなった。

 また、KPDFにブックマーク機能があるのには驚いたが、ブックマークを設定できても複数のブックマーク間を実際に行き来する簡単な方法が見当たらなかったためにその喜びは半減した。

 通常、私はGNOMEとKDEの両方に馴染むためにノートPCではGNOMEを、デスクトップPCではKDEを実行しているが、概してGNOMEよりもKDEのほうが気に入っている。しかし、FeistyではKDEよりもGNOMEのほうを使ってしまうのは、GNOMEのほうがデスクトップ効果の完成度がKDEよりも高く、セットアップも容易だからだ。数週間GNOMEを使ったところ、Compizはなくてはならないものになった。その理由はCompizの「華やかさ」ではなく、Expose風のウィンドウ分割のような機能なしでは過ごせなくなったからであり、Compizの動作がKomposeよりもずっと高速だからだ。

 Kubuntuで私が驚いたことの1つは、ログアウト用のインタフェースの変化である。普通、「Log out」をクリックすると、本当にログアウトするか取り消すかを尋ねるダイアログが表示されるのを期待するだろう。だが、Kubuntuには取り消しなどオプションがなく、あるのは「Log out」ボタンだけなのだ。きっと、不意に「Log out」ボタンを押してしまって「ログアウトしてやり直す以外の選択肢がない」と思い込む新しいユーザが数多くいるに違いない (だが、実はそうではない。Escapeキーで戻ることができる)。Kubuntu開発陣には、Gutsyを出すまでに「Cancel」ボタンを復活させてもらいたいところだ。

 また、FeistyにはHewlett-Packard製プリンタ用のすばらしいセットアップユーティリティが用意されているのだが、私の周りにはHP製プリンタがないのでこのHPLIP Toolboxを活用することはできなかった。

ハードウェアのサポート

 別々のマシン3台でFeistyを使って、このリリースがどこまで多様なハードウェアに対応しているかを調べるために、スキャナ、iPod、外部のUSBおよびFireWireドライブ、Webカメラ、Belkin製802.11b USB無線デバイスなど、目につくあらゆるものの動作をこのUbuntuで試してみた。

 そのままでは動作しなかった唯一のデバイスがLogiTechのWebカメラだったが、これは別に不思議なことではない。というのも、他のいくつかのディストリビューションで試しても、やはり同じ結果だったからだ。実際、このデバイスは、Mac OS Xでも専用のアプリケーションをインストールしないと検出できない。

改善されたマルチメディアサポート

 Feistyの場合、デフォルトではプロプライエタリまたは特許で保護されたコーデックはインストールされていないが、これは悪くないやり方だと言える。MP3などサポートされていないメディアファイルの再生を試みると、そのファイルにとって適切なコーデックのインストールが行われることになる。これにより、ユーザは、制限付きドライバのユーティリティのときと同様、希望するソフトウェアまたは必要なソフトウェアを容易に入手できる。わざわざ各種フォーラムを探し回って必要なものを見つけ出し、手作業で調整を行う必要はないわけだ。

 Edgy(およびそれ以前のUbuntuリリース)で煩わしかったことの1つが、アプリケーションがサウンドデバイスを占有してしまうために別のアプリケーションで音声が使えなくなることだった。楽曲プレーヤまたは音声を利用する他のアプリケーションを起動するとサウンドデバイスのエラーに遭遇する。こうして、Linuxデスクトップにまだ問題が残っていることを思い出させられることほど酷いことはない。Feistyでは、この点が改善されているものの、VMware ServerやAudacityといった少数のアプリケーションは依然としてこの問題を抱えていた。完全な解決に向けてやるべきことはまだ残っている。

 この「オーディオの混乱」は、昨年のFeisty計画時に議題になっていたものだが、やはり優先度は高かったようだ。関連するフォーラムから使い辛いバグフィックスを探し出さなくても、AmaroKで音声を再生でき、VMwareで実行中の仮想マシンから音声が聞けるようになる日を私は待ち望んでいる。

Windowsユーザ向けのフリーソフトウェア

 たとえUbuntuでWindowsユーザをLinuxに移行させることができなくても、KubuntuとUbuntuのISOには、少なくともユーザがWindows環境でフリーソフトウェアを味わえるように少数のWindows用フリーソフトウェアが収められている。

 KubuntuディスクにはWindows用のFirefox、Thunderbird、Scribus、SpeedCrunchが、Ubuntuディスクには同じくFirefox、Thunderbird、AbiWordBlenderClamWinがそれぞれ収録されている。

最終的な評価

 UbuntuおよびKubuntuのFeistyリリースはEdgyを適度に改良したものであり、以前のリリースからアップグレードを行ったり、Ubuntuへの移行に踏み切れなかった人が初めて使ってみたりする価値のある新しいソフトウェアや機能が含まれている。

 Feistyでは、Edgyユーザが求めていた機能の大半が実現されている。Ubuntuは、現在主流になっているデスクトップに対抗できるところまで到達しつつある。でなければ、Michael Dell氏が自分のノートPCでUbuntuを利用したりはしないはずだ。

NewsForge.com 原文