GNOME 2.18リリース、大きな改善点は少なめ

 GNOMEプロジェクトによってGNOME 2.18が、GNOME 2.16からきっかり6ヶ月後のタイミングでリリースされた。GNOME 2.18には2.16以来の改良点が数多く含まれているが、ユーザを今すぐアップグレードに駆り立てるような「必須アイテム」的な機能はそれほど多く含まれていない。

 GNOMEのリリース方針は、予測可能なサイクル(6カ月ごと)に基づいてリリースを行なうというものだ。そのため各リリースには必ずしも大規模な新機能やアップデートが含まれているわけではなく、単にその時点までにリリースに含める準備ができている改良点や機能が含まれているだけだ。また素晴らしい機能であってもリリース時までに準備が整っていなければ、次期リリースやそれ以降のリリースまで延期されることになる。

 今回私はGNOME 2.18をフル活用してみるため、GNOME 2.18が含まれているUbuntu Feistyのベータ版をインストールした。また、同じく2.18が含まれているForesight Linuxのリリースも試用してみた。その結果、2.16から2.18で改善した点は少なめであることがわかった。2.18リリースには2.16と比べ特に際立った違いはそう多くはなく、違いを見つけるためにはいくぶん注意深く見てみる必要がある。

Seahorseとデスクトップでの暗号化

 2.18での最大の新機能はキー管理アプリケーションのSeahorseだ。Seahorseを使うとSSHやPGP(Pretty Good Privacy)のキーの管理をすることができ、また、Nautilus内からファイルのサイン/暗号化/復号を行なうこともできる。GNOME 2.18では、Seahorseのおかげで、データを暗号化/復号したり、ファイルにサインしたりすることがばかばかしいほど簡単にできるようになっている。GNOME 2.18ではSeahorseはNautilusに統合されているため、暗号化/復号/サインをするために必要となるのは、ファイル上での右クリックのみだ。初心者でもあっという間にキーを作成し、ファイルや電子メールに対する暗号化/復号/サインをすることができるだろう。

Seahorse
図1 暗号化用キー管理アプリケーションSeahorse(クリックで拡大)

 Nautilusではまた、SSH経由でリモートのファイルシステムに接続する際に提示されるオプションとして、3つめの選択肢が追加された。以前はパスワードをキーリングに永続的に保存するか、そのセッションにおいて一時的に保存するかの2つの選択肢しか提示されなかったが、GNOME 2.18ではNautilusにパスワードを直ちに忘れさせるという選択肢が加わった。非常に用心深いユーザにとっては、リモートサーバ用のパスワードを忘れさせるためだけにGNOMEからログアウトする必要がなくなるので、嬉しい追加だ。

gDesklets

 またGNOME 2.18にはgDeskletsというウィジェット形式のアプリケーションを提供するための機能も含まれている。gDeskletsは、天気予報の表示やカレンダーやRSSアグリゲータやCPUの使用状況を表示するGUIアプレットなど、デスクトップ上で動く小さなアプリケーションを提供するためのものだ。現在のところ、アプレットには重複しているものもたくさんある。例えばCPUの使用状況を表示するアプレットは3~4種類あり、ディスクの温度モニタも数種類ある。

 gDeskletsを使うには、gDesklets Shellを起動し、現在のシステム上で利用可能なアプレットの一覧を表示する。そして実行したいアプレットの上でダブルクリックすると、マウスポインタにくっついてくるので、それをデスクトップの上でドロップすると良い。

 gDesktletsは着想としては良いが、今はまだ100%安定しているわけではない。特にForesight Linux上ではgDeskletsアプリケーションは起動さえも行なうことができなかった。Ubuntu Feisty上では、問題なく動いたものもあったが、gDeskletsのうちの一つ(タスクバーに相当する機能のアプリケーション)を起動しようとした際、デスクトップにドロップすることができずマウスにくっついたままになってしまい、マウスポインタを取り戻して使えるようにするためにgDeskletsデーモンとgDeskletsマネージャを強制終了せざるを得ない状態になった。とは言え、まったく問題なく動いたアプレットも多くあった。

 ただgDesklets Shellに関連するヘルプが、Aboutダイアログとtips of the day(日替わりヒント)しかなかったことは残念だった。

 gDeskletsは全体的には良い感じではあるものの、十分便利に使えるようになるにはおそらくGNOME 2.20を待つ必要があるだろう。

GNOME Disk Usage Analyzer

 GNOME 2.18では、GNOME Disk Usage Analyzer(GNOME用ディスク使用状況アナライザ)としても知られるBaobabにもいくつかの変更点が加えられている。Baobabは、ファイルシステムのディスク使用状況を視覚的に表示するユーティリティだ。

Figure 1: GNOME Disk Usage Analyzer
図2 GNOME Disk Usage Analyzer(クリックで拡大)

 今回のリリースでは(図2に示した通り)円グラフのような形でファイルシステムを表示する、新しい表示方法も追加された。これはかっこいい機能だが、同様のFilelightユーティリティにはしばらく前から存在していた機能であるし、さらに言えば、Filelightでは個別のファイルを対象にすることも可能となっていて、Filelightから直接的にファイルを閲覧/オープン/削除することが可能になっている。Baobabではディレクトリの閲覧まではできるが、個々のファイルを対象にすることはできない。

 また、今回のリリースではBaobabからファイル検索機能が取り除かれている。Baobabの更新履歴やBaobabプロジェクトのページを確認してみたが、この機能が取り除かれた理由を示すようなものは見当たらなかった。しかしおそらく、GNOMEにはPlacesメニューの下にファイル検索機能がすでに含まれていることからではないかと思われる。

よく学びよく遊べ、ということで…

 GNOMEのリリースには毎回必ず、ユーザが息抜きに使えるような「5分ほど遊べる(ちょっとした)ゲーム」集が付いている。GNOME 2.18ではこのゲーム集にSudoku(数独)が追加された(ただしこれは5分では済まなさそうだ)。

 GNOME 2.18ではまた、glChessも追加された。OpenGLが利用可能になっていればglChessは見栄えの良い3Dのチェスボードを表示する(OpenGLが利用可能になっていなければデフォルトの2D表示になる)。glChessでは、コンピュータと対戦することもネットワーク経由で友人と対戦することも可能だ。

 ネットワーク経由での対戦と言えば、この「GNOME Games」ゲーム集ではFour-in-a-row、Iagno(オセロのGNOME版)、Nibblesの3つのゲームにもネットワーク対戦のサポートが追加されている。

 一方Ataxxのファンには残念なお知らせがある。GNOMEプロジェクトが行なった、含めるべきゲーム/取り除くべきゲームについてのアンケート調査の結果、AtaxxはGNOMEから取り除かれた。今でもCVSから利用できるが、「正式」GNOMEディストリビューションの一部ではなくなった。

その他の改良点

 新しいアプリケーションが追加されたこと以外にも、数多くの既存のプログラムに小規模な新機能が追加された。例えばメモ用アプリケーションのTomboyでは箇条書きができるようになった。文頭に「*」か「-」を置くと、Tomboyがそれを箇条書きの点に変換し、それ以降、箇条書きを開始する。

 またEvinceでは、ブラウザ風のナビゲーションがサポートされた。つまりウェブサイト内を移動するのと同じ方法で、PDFファイル内のページを行ったり来たりすることができるようになった。またEvinceを使って文書の複数のインスタンスをオープンすることも可能になったので、同時に複数のページを見る必要のある契約書などの長い文書を読む際には便利だ。しかしブラウザ風の機能とは言え、残念ながらブックマークはサポートされていない。Evinceは、文書を開く際に最後に見ていたページを表示して開くということは行なうものの、文書内でブックマークを作成することはできない。と言ってもこのような機能が用意されていないのはEvinceだけではなく、フリーソフトウェアのPDFビューアの中でブックマークをサポートしているものを私は知らない。そしてなぜこのような分かりやすい機能がどのPDFビューアにも用意されていないのかも分からない。

GNOMEデスクトップ全体として

 GNOMEの最新版2.18を1週間使ってみて私は、GNOMEはやはり優れたデスクトップだが、しかし2.16から2.18にかけての変更点については物足りないと感じた。2.18は安定したリリースではあるものの、新しいアプリケーションや新機能や改善といった観点から大きく前進したわけではない。

 むしろ一部のアプリケーションはやや停滞気味という感じがした。例えば、2.18ではEvolutionは注目に値する新機能がまったくなく、Epiphanyやその他の「正式」GNOMEアプリケーションの多くについても同様のことが言える。

 とは言え、実はGNOMEには近い将来、何らかの革新的な進展が見られる可能性もある。というのも、今回のレビューを行なっていたときに気付いたのだが、開発者の何人かがPlanet GNOME上で、次期リリースについてのアイデア、ロードマップ・プロセス、次世代GNOME(GNOME 3.0)について考え始める必要性などについて話していたからだ。またKDE 4.0がリリースされればGNOMEの人たちが「追い上げ」を考える良い刺激になる可能性もある。

 GNOME 2.18をインストールの手間をかけずに試してみたい場合や、お気に入りのディストリビューションがパッケージを配布するのを待てない場合には、その代わりとしてGNOMEチームにより提供されているForesight LinuxのライブCDやVMware/Qemu/Parallels用イメージを利用することができる。またGNOMEプロジェクトのサイトのGet Footwareページには、Linuxディストリビューションやその他のOSで使用されているGNOMEのバージョンのリストがあるので、GNOME 2.18が含まれるディストリビューションを確認することができる。

NewsForge.com 原文