レビュー:PCLinuxOS 2007――美しさと実用性を兼ね備えたライブCD Linux
そしてこの月曜日、PCLinuxOS 2007と名付けられた待望の新バージョンがリリースされた。本ディストリビューションは、収録ソフトウェアのラインナップはもとより安定性と機能性にも優れており、高品質なグラフィックスでまとめられた実行環境とあわせて、過去最高のリリースであると評価しても過言ではないだろう。
PCLinuxOS(以下、PCLOS)の歴史は、約4年前にMandrakeLinux 9.2からフォーキングしたことに始まる。その後のリリースは旧バージョンをベースとしたアップデートという形で進められてきた。実際、最新版のPCLOS 2007においても、スタートアップウイザード、ハードドライブインストーラ、PCLinuxOS Control Centerなどのソースコードの一部はMandrivaLinuxのものが流用されている。
ライブCDからカーネルを起動すると、デスクトップ画面が表示される前にシステム設定用ウィザードが実行され、ユーザに対して、キーボード、タイムゾーン、ネットワーク接続の設定をするよう指示が出される。私のラップトップマシンの場合、搭載されたWLANチップを動かすにはNdisWrapperを用いてWindows用ドライバを認識させる必要があるのだが、PCLOSの場合この点は特に問題とならなかった。設定ウィザードからはWindows NTFS形式でフォーマットされたハードドライブに直接アクセスすることができ、ユーザの指定したドライバファイルもあっさり認識してくれたのである。後はWPAのセキュリティ情報を入力するだけで、ものの数秒と経たないうちに、日頃使っているワイヤレスルータに何の問題もなく接続できてしまった。
PCLOSを試用してそのパフォーマンスが気に入った場合は、GUI形式のインストーラを用いてハードドライブへの恒久的なインストールをすることもできる。このインストーラも非常に優れた操作性を有しており、ユーザが行うべき作業は、ハードドライブに対するファイルコピーが実行される前と後の段階で、設定用の質問にいくつか答えるだけである。今回のテストに用いたマシンの場合、最終的なインストール完了までにおよそ20分を要した。
PCLOSの完成度は非常に高く、プロフェッショナルレベルに仕上がっている。ブートおよびログインの画面はDiamond Plateというメタル系のテーマで統一されており、その後表示されるKDEのデスクトップでは、アブストラクトブルーの壁紙を背景にクイックランチャとアプレットを配した半透明のパネルが表示される。ここまでの完成度に仕上げるにあたって、開発プロジェクトの担当チームは数カ月をかけて作業を進めたとのことだ。なおGNOMEデスクトップを使用したい場合は、Synapticパッケージマネージャにあるtask-gnomeを選択すればよく、これによりデスクトップシステムのインストールが実行される。
バンドルされるアプリケーション群に関して説明すると、今回のリリースでは、OpenOffice.orgの最新安定バージョンが一式取りそろえられている。またデフォルトブラウザはFirefoxに改められたが、従来通りKonquerorを使うことも可能である。マルチメディアコンテンツについても、これらの再生に必要な、AmaroK、MPlayer、Kaffeine、Frostwire、DeVeDe、TVTime、Flash、Java JREなどは標準で装備済みだ。画像および写真の表示や編集は、GIMP、GQView、digiKam、Kalbumなどで処理することができる。インターネット関連のアプリケーションでは、XChat、Kopete、Thunderbird、TightVNCなどが用意されている。システム関連の操作は、K3b、Krusader、GKrellM、SearchMonkeyといったツールで必要な操作が行えるはずだ。設定ユーティリティとしては、お馴染みのKDE Control Panelを始め、PCLinuxOS Control Panelというシステムおよびハードウェア関連の各種設定を行えるアプリケーションが用意されている。このアプリケーションからは、ファイアウォール、グループウェア系メールサービス、ネットワークデバイス、ネットワーク接続、システム起動用サービス群など、様々な設定を施すことができる。その他の基本システムとしては、Linux-2.6.18.8、Xorg 7.1.1、GCC 4.1.1が採用されている。
FirefoxとThunderbirdの組み合わせについては、Thunderbirdのメール上でハイパーリンクをクリックするとFirefox側でWebページが開かれ、Firefoxのページ上でメールアドレスのリンクをクリックするとThunderbirdでメッセージウィンドウが開かれるというシームレスな操作が行えるようになっている。またFirefoxで閲覧中の画像については、右クリックしてSet as Backgroundを選択することで、デスクトップの壁紙として表示させることが可能だ。
ライブCDの構成としてプロプライエタリ系ドライバは完全に排除されているが、必要であれば別途インストールすることも簡単に行える(その他のソフトウェアも同様)。Synapticパッケージマネージャを使うと、PCLOSリポジトリからカスタム版のRPMパッケージをインストールすることができるが、このリポジトリにはPCLOS専用にアレンジされた約5,000の追加パッケージが収録されている。なおこうした追加インストールに関しては、MandrivaやFedoraなどRPMをベースとした別ディストリビューション用にコンパイルされたパッケージを使うことも考えられなくはないが、仮に必要なライブラリがそろっていてもパス関連の不整合性やコンフリクトが生じる危険性があるので、手を出さない方が賢明だろう。
今回のテストでは、PCLOSで3Dデスクトップが動かせるかを試してみる目的で、Nvidia製のプロプライエタリ系グラフィックドライバをインストールしてみることにした。Synapticを使ってNvidia製ドライバについて検索してみたところ、新しいカード用の97xx、GeForce 2/3系列用の96xx、TNT系列用の71xx、試作段階の100.14.xxドライバという4セットが見つかった。Synaptic経由でのインストール手順は簡単で、パッケージのリストで必要なものを右クリックしてからMark for Installを選択し、ツールバーのApplyボタンを押すだけである。その後のSynapticによるパッケージのダウンロードとインストールはつつがなく進行し、私が行う操作は、最後にXサーバを再起動することくらいであった。その際にNvidiaのdkmsパッケージも依存関係を満たすために取得されたが、システムファイル群に施すべきアップデート作業は、ユーザがわざわざ/etc/X11/xorg.confファイルを編集するまでもなく、このパッケージがすべて自動的に処理してくれる。なお、ユーザによってカーネルのアップデートを実行した場合についてだが、Nvidia製ドライバ群の新規カーネル用リビルドについては、アップデート後の起動時にdkmsによって自動処理されるようになっている。
Xサーバの再起動後、PCLinuxOS Control CenterにアクセスしてBerylを有効化してみた。3Dデスクトップを使用するには、PCLinuxOS Control Centerに移動して、Hardware subheadingをクリックしてからConfigure 3D Desktop Effectsを選択すればいい。ここで与えられる選択肢は、AIGLXとXglおよびCompizとBerylである。今回私は、Nvidia製チップでの使用を考えてXglとBerylを選択したが、指示通りにXを再起動すると、すべてのデスクトップエフェクトが使用可能となった。PCLOSの主任開発者であるTexstar氏からは、開発途上にあるソフトウェアなので不安定になるかもしれないという説明がされていたが、私の試した限りにおいてそうした不安定性が顕在化したことはなく、いずれのデスクトップエフェクトも正常に機能している。
PCLOSのその他の特長としては、デスクトップおよびインターネット経由でアクセスできる広範なマルチメディアファイルをサポートしている点が挙げられる。残念ながらwin32コーデックまでは対応していないが、私の手元にあった動画ファイルはすべてビデオプレーヤ上で再生することができた。その他、ストリーミングビデオであれ、GoogleおよびYouTubeの収録ビデオであれ、Apple.comで公開されているQuickTimeフォーマットの映画予告であれ、いずれの再生も問題なく実行できている。
PCLOSの場合、ユーザの好みに合わせてディストリビューションをリマスタリングする機能も用意されている。これはユーザが追加インストールしたアプリケーションおよびユーザ設定その他のカスタマイズ情報を取り込んだ形で、ライブCDを作成し直す機能である。リマスタリング機能によってPCLOSベースのライブCDを新たに作成するには、コンソールまたはターミナル上でremasterme
とコマンドを入力すればいい。なお、この操作そのものは比較的簡単な作業ではあるが、Bash関連の機能やコマンドを使った経験があると何かと重宝するはずだ。
PCLOSにおけるハードウェア対応度の高さには、目を見張るべき点がある。私の場合、ブート直後に使用できなかったハードウェアはワイヤレス関連のチップセットだけであり、この問題についても若干の設定変更をするだけで解決できてしまった。グラフィックス関係の表示は、最適な解像度が自動選択された上で正しく認識されており、ログイン時のスタートアップサウンドも正常に再生され、タッチパッドも当たり前のように認識されて何の問題もなく使えるようになっている。リモートプリンタの設定についても、PCLinuxOS Control Centerで必要な情報をいくつか入力するだけで終わってしまった。リムーバブルメディアの認識も自動化されており、たとえば新規の接続時にはデバイスをマウントしていいかの確認ダイアログが表示される。
省電力用の各種機能も、基本的には正常に使用することができた。ただし私の場合、CPUfreqのスケーリング機能を用いて未使用時のCPUをスローダウン化させるには、PCLinuxOS Control CenterのSystem → Enableによってこの機能を有効化しておくか、システムサービス群を停止させておく必要があった。また、KLaptopでACPIを有効化したところ、ハイバーネーション機能は使えるようになったが、サスペンド機能は正常に動作しなかった。この件の対策としては、Synaptic経由でKPowersaveをインストールした結果、ハイバーネーションもサスペンドも使えるようになっている。
結論として、私の使ったPCLinuxOS 2007のファイナルリリースは非常に満足できる完成度であった。ハードウェアの検出および設定に関する機能は、平均的な水準を遥かに超えている。今回のテストで使用した限りにおいて、すべてのソフトウェアは安定して動作しており、充分なパフォーマンスを発揮してくれた。PCLOSにはKDEゲームが含まれておらず、私がメールおよびニュースの受信に常用しているKontactも同梱されていなかったが、いずれのアプリケーションもSynapticを使えば直ぐに入手することができる。このようにリポジトリに収録されているソフトウェアとデフォルトでバンドルされているアプリケーションとを組み合わせれば大概のものはそろうので、実務で使うにせよ趣味で使うにせよ、PCLOSであれば1つの完成されたシステムとして運用することが可能だと言っていいだろう。
美しさと実用性を兼ね備えたLinuxデスクトップシステムを探し求めているユーザにとって、完成度も高く即座に使い始めることのできるPCLOSは1つの有力な選択肢となるはずである。
コラム:必要な情報の入手先 |
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何らかのサポートを必要とする場合は、PCLinuxOSプロジェクトの運営するユーザフォーラムおよびIRCチャンネルが役に立つだろう。いずれも親切に対応してもらえて、有用な情報を入手することができるはずだ。 |