ノートPC進化のカギ――フラッシュ・メモリはHDDの座を奪えるか――最大のハードルはHDDとの価格差、逆転するのは2012年以降?

 フラッシュ・メモリはハードディスク・ドライブ(HDD)と比較して、衝撃に強い、起動時間が短い、低消費電力であるなどの利点を持つ。そのため将来的には、ノートPCのハードディスク・ドライブに取って代わると言われている。

 しかし多くの専門家は、主要PCベンダー各社がHDDの代わりにフラッシュ・メモリを採用し、フラッシュ・メモリ搭載のノートPCが市場を席巻するまでにはかなりの時間がかかると見ている。

 富士通は昨年10月、HDDの代わりにフラッシュ・メモリを搭載したノートPCを発表している。同社が発表した企業向けノートPC「FMV-LIFEBOOK」シリーズは、16GBか32GBのフラッシュ・メモリをHDDの代わりにオプションで選択できるというものだ。

 富士通では、フラッシュ・メモリを搭載したことについて、「ディスク・クラッシュの原因となるドライブヘッドや、故障する可能性のある可動部品が使われていないうえ、実質的な発熱も皆無。軽量化も実現できる」と、その利点を強調する。

 また、米国Intelは今年3月、同社初のNAND型フラッシュ・メモリ製品「Z-U130 Value Solid State Drive(VSSD)」を発表している。

 Z-U130は同社VSSDファミリーの最初の製品であり、記憶容量は1GB、2GB、4GB、8GBの4種類から選択できる。同社では、このフラッシュ・メモリがサーバ、PC、ゲーム端末などあらゆるジャンルの機器に使用されると見込んでいる。

 しかし、このような動きがあるにもかかわらず、多くの専門家は、40GB以上の容量が必要なノートPCで、HDDの代わりにフラッシュ・メモリを採用する動きが活発化するとは思えないと指摘する。

 その要因はフラッシュ・メモリの価格だ。

 クレディ・スイス・グループのアナリスト、ロバート・センプル氏は、「2005年には、80GBのHDDが69ドル99セントで入手できた。しかし、 8GBのフラッシュ・メモリは40ドルもしていた。ノートPCでフラッシュ・メモリがHDDに取って代わるためには、フラッシュ・メモリの1GB当たりの価格がハードディスクの価格を下回る必要がある。そうなるのは2012年以降のことだろう」と指摘する。

 米国の調査会社アイサプリのアナリスト、マーク・デボス氏は、主要なコンシューマー向け機器で使用されているフラッシュ・メモリの価格が、2007年度は2005年度よりも約30%値下がりすると予測している。

 しかし、仮に30%値下がりしたとしても、8GBのフラッシュ・メモリは28ドルであり、1GB当たりの価格はHDDのそれとは比較にならないほど高価だ。実際、富士通のFMV-LIFEBOOK(Qシリーズ)で、20GBのHDDを16GBのフラッシュ・メモリに交換した場合、値段は23万4,000 円から31万4,000円と、8万円も跳ね上がる(昨年10月発表時の価格で比較)。

 さらにセンプル氏は、フラッシュ・メモリがPCでのデータ書き込みには適していないと指摘する。

 「携帯電話やMP3プレーヤ内のデータは読み出し集約型であり、書き込み集約型ではないため、フラッシュ・メモリの強みを発揮することができた。しかし、PCでのデータ管理は複雑で、フラッシュ・メモリが能力を発揮するのは難しい」(センプル氏)

 ちなみに、フラッシュ・メモリを搭載したノートPCには、サムスン電子の「NT-Q30-SSD」やソニーの「VAIO type U」などもある。

(パトリック・ティボドー/Computerworld オンライン米国版)

提供:Computerworld.jp