日立GST、ディスク容量を現在の4倍まで拡大する磁気ヘッド技術を開発――ノートPCで1TBのディスク容量を実現可能

 日立グローバルストレージテクノロジーズ(以下、日立GST)は10月15日、現在のデスクトップPC向けハードディスク装置の容量をおよそ4倍まで拡大することができる新たな磁気ヘッド技術を開発したと発表した。

 日立GSTが開発した磁気ヘッド技術により、これまでよりも多くのデータをハードディスクに書き込むことができるようになる。そのため、デスクトップPCで4TB、ノートPCで1TBのデータを保存することが可能になるという。

 日立GSTのチーフ・テクノロジスト、ジョン・ベスト氏によると、現在のハードディスク容量は、2年ごとに2倍のペースで拡大しているという。新しい磁気ヘッド技術を使用すれば、ハードディスクの小型化とともに、ディスク容量も拡張することができるとしている。

 日立GSTは、2009年までにこの技術を採用したハードディスク装置を市場投入する意向である。

 ハードディスクを小型化すると磁気領域を検出するのが困難になるため、磁気ヘッドの感度を高める必要がある。ベスト氏によると、日立GSTが開発した新しいCPP-GMR(Current Perpendicular to Plane GMR)方式で作られた磁気ヘッドは、既存の磁気ヘッドよりも感度が優れており、磁気領域の検出能力が高いという。

 ベスト氏は、CPP-GMRヘッドなら、近い将来ディスクの面記録密度を1平方インチ当たり500Gビットから1Tビットまで高めることができると語っている。面記録密度が高まれば、保存できるデータ量も増大する。現在の記録密度は、1平方インチ当たりおよそ200Gビット程度である。

 CPP-GMR方式の磁気ヘッドが実用化されれば、動画やWeb 2.0アプリケーションの普及に伴う将来的なストレージ需要の増大にも対応することができる。

 CPP-GMR方式は、電子の電荷とスピンを操作するGMR(巨大磁気抵抗)の物理的な効果をベースにした技術であり、ハードディスクの記録密度と容量の拡大を可能にする。今年10月には、欧州の2人の科学者、アルベール・フェール氏とペーター・グリュンベルク氏がGMRの研究でノーベル物理学賞を受賞している。

 1988年に発見されたGMRは、IBMなどによって実用化され、ハードディスク容量を毎年着実に拡大させる立役者となった。GMRにより、ストレージ容量の拡大とハードディスクの小型化が実現され、iPodなどの携帯型ストレージ・デバイスにも搭載可能な製品を開発できるようになった。

 科学者たちは、将来のデータ・ストレージとして、原子スケールのソリッドステート・ストレージに着目しているが、ベスト氏は、シリコン・ベースのソリッドステート・ドライブ(SSD:Solid State Drive)が登場しても、ハードディスクの存在価値がなくなることはないと語っている。SSDは、半導体技術であり、1ビット当たりのコストでは、ハードディスクに対抗できないというのが同氏の見解だ。

 日立GSTは、日立製作所が2003年1月にIBMのハードディスク事業を20億5,000万ドルで買収して誕生し、2005年末に日立製作所の完全子会社となった。ベスト氏は、買収したIBMのハードディスク事業の研究所は、多くの大学や企業と共同で新技術の開発に取り組んでいると語っている。

(アガム・シャー/IDG News Service サンフランシスコ支局)

日立グローバルストレージテクノロジーズ
http://www.hitachigst.com/

提供:Computerworld.jp