インテルが支援するモバイル向けLinux「Moblin」を試す

 ネットブックなどと呼ばれる、低価格で省電力の簡易的なノートパソコンが売り上げを伸ばしている。そのOSとしては、Winsows XPが主流だ。ただし、今後さらなるシェアを獲得するために、より使い勝手のよい、フリーのOSを求める声は少なくない。そんな中注目を集めているのが、Linuxベースのモバイル向け軽量OS「Moblin」(モブリン)だ。Moblinはブートローダーからウィンドウマネージャ起動まで最速5秒というfast boot機能や、「Connection Manager」によるネットワークの統合管理といった機能などでも話題を集めている。

 Moblinは、ネットブックやMID(Mobile Internet Device)、さらには車載情報システムなどさまざまな組み込みシステムで利用される軽量Linuxを目指している。なお、Ubuntuのモバイル向けエディションであるUbuntu Netbook RemixなどもMoblinのモジュール群を一部組み込んでいる。

 Moblinの開発を行うMoblinプロジェクトは2007年にインテル主導で開始されたが、2009年4月以降はより広範囲に開発者を集めるためにThe Linux Foundationによって管理されることなった。現在は来年1月末の正式リリースを目指して、Moblin v2の開発が行われている。Moblinの最終目的は様々な分野で使用される軽量OSだが、当初はインテルのAtomプロセッサを搭載したネットブックを想定している、

 しばしば比較対象とされる軽量OSにGoogleのAndoroidがあるが、Androidの場合は携帯端末を起点にサポート範囲を広げているのに対して、Mobilinの場合は逆にネットブックを最初のターゲットにしている。しかし、最終的な目的はあらゆるモバイル機器を対象としている意味で同じだと思われる。

 Moblinはまだ開発段階ではあるものの、Moblin v2 Core アルファ2(リリース日は2009年3月24日)が一般に公開されており、誰でもインストールして試すことができる。

図1 Moblinの標準デスクトップ
図1 Moblinの標準デスクトップ

サポートするプラットフォーム

 現状ではまだアルファ版と言うこともあり、Moblinの動作環境はかなり限定的だ。たとえば、CPUとグラフィックカードには表1のものが必要になる。

表1 Moblinの動作環境
要素 必要環境
CPU AtomまたはIntel Core 2プロセッサ(要SSSE3)
グラフィックス インテルのチップセット統合グラフィック(915/945/965シリーズ)

 ただし、グラフィックカードに関しては、これ以外でまったく動作しないというわけではなく、ハードウエアアクセラレーションが効かないというだけのようだ。今回はNVIDIA製のグラフィックチップを搭載したPCにMoblinをインストールしたが、画面の解像度が800×600ピクセルに固定される以外は問題なく動作した。

 なお、Moblinのサイトでは、動作確認されているネットブックの情報が掲載されている。これによると、現在Moblinに対応しているネットブックは、Acer Aspire One 、Asus EeePC 901、Dell Mini 9、MSI Windの4つである。

グラフィカルインストーラ

 Moblin v2のインストールイメージは、Moblinプロジェクトのサイトよりダウンロード可能だ。また、VMWareおよびKVM用といった仮想環境で利用可能なイメージファイルも公開されている。

 インストールイメージは300Mバイト弱と軽量で、CD-RもしくはUSBメモリ内に書き込んで利用する。このインストールイメージはライブ版としても動作するので、インストール前にとりあえず機能を試すこともできる。特にUSBメモリから起動した場合には、fast bootによる高速起動が実感できるだろう。ただし、日本語キーボードは自動認識されないので、[Menu]-[Settings]-[Keyboad]で手動設定する必要がある。

 Moblinの起動後、デスクトップ上にある「Install to Hard Drive」のアイコンをクリックするとインストーラが開始される(図2)。インストールにはroot権限が必要だが、デフォルトでは「moblin」に設定されている。インストーラのUIは分かりやすく、インストール作業自体は簡単だ。利用言語として「Japanese(日本語)」が選択可能だが、まだインストーラの日本語対応は完全ではないようで、途中のメッセージはかなり文字化けする(図3

図2 デスクトップにインストーラを起動するアイコンが用意される
図2 デスクトップにインストーラを起動するアイコンが用意される
図3 Moblinのインストーラ
図3 Moblinのインストーラ

 インストール時に必要な設定は、アカウント情報と使用するディスクの選択のみだ。ネットワークは自動で設定される。なお、インストール後の管理作業はsudoコマンド経由で行う。

デスクトップはXfce4

 Moblin アルファ2ではLinuxカーネルとして2.6.29-rc7が、X Window SystemにはXorg.1.6、デスクトップ環境にはXfce4が搭載されている(図4)。インストール時に言語として「日本語」を選択した場合には、デスクトップのメニューやフォルダ名が日本語で表示され、Webブラウザなどでも一部文字化けがあるものの日本語が表示できる(図5)。ただし、まだ日本語入力システムは搭載されていないため、日本の入力/編集はできない。

図4 Xfce4のデスクトップ
図4 Xfce4のデスクトップ
図5 Webブラウザでは日本語も表示できる
図5 Webブラウザでは日本語も表示できる

 なお、現在のXfce4はあくまでも仮のインターフェースであり、インテルに買収されたのOpenedHand社が提供する洗練されたGUIライブラリである「Clutter」ベースの新ユーザインターフェースが採用される予定となっている。

パッケージフォーマットはRPM

 Moblin v2はFedoraをベースに開発が開始されたということで、パッケージ形式はRPM、パッケージ管理ツールにはyumが使用される。リポジトリとしてはmoblinとmoblin-develの2つが登録されている。また、GUIのパッケージ管理ツールとしては「ソフトウェアの追加/削除」(packagekit)が利用可能だ(図6)。

図6 ソフトウェアの追加/削除
図6 ソフトウェアの追加/削除

 Moblin v2はまだアルファー版ということもあり、ユーザインターフェースも仮のものであるため操作性などを評価できる段階ではない。ただし、Atomの発売元であるインテルが強力にプッシュしていることや、今後ネットブックのさらなる普及が期待されていることからみても、モバイルLinuxの中心的存在となることは間違いないだろう。