ユーザビリティを重視したXfceの新しいベータ版

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 マイナーリリースとはいえ、Xfceのバージョン4.6は比較的重要な意味を持つ。GNU/Linuxで第3の人気を誇るこのデスクトップ環境の改訂は、ほぼ2年ぶりであり、一般ユーザにはわかりにくいバグ修正や機能強化以外にも、膨大な数の変更が加えられている。その範囲は、予定表などのアプリケーションから、ミキサやログアウト画面、新たな設定エンジン、デスクトップの使い勝手にまで及ぶ。それらの相乗効果により、Xfceは強みである軽快さを犠牲にすることなく、ユーザビリティを高めることに成功している。

 Fuzzyというコードネームを持つこの新しいベータ版は、ソースコード、またはXubuntuのIntrepid Ibexリリース用パッケージとして入手できる。いずれも、安定した動作は保証できない、というお決まりの警告付きで提供されているが、このベータ版の完成度は実際にはそれほど低くない。私がテストした2台のマシンでは、何の問題もなく動作した。

アプリケーション

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XubuntuにおけるXfce 4.6 beta

 きびきびとした動作だけでなく、精選されたアプリケーションの質の高さもこれまでどおりだ。Xfceの軽量なファイルマネージャであるThunarやインストール済みプログラムのリストを管理するXfce Appfinderに大きな変化は見られないが、それ以外のプログラムには小さな改良が施されている。たとえばログアウト画面には、マシンのサスペンド、ハイバネーション、ユーザ切り替えの各オプションが追加されている。またXfceミキサでは、ALSAやOSSといった異なるサウンドシステムの同時使用、複数のサウンドカード、各種オーディオ入出力ソースの独立設定がサポートされている。

 私が見た限り、アプリケーション単体で特に大きく変化したといえるのが予定表アプリケーションのOrageだ。まずわかりにくいところでは、新たにmanページが用意された。デスクトップ画面では、イベントだけでなくTo-Doメモやジャーナルエントリも日付に追加できるようになった。また、エントリ内で色付きのカテゴリを作成すれば、予定表をさらに見やすいものにできる。予定に基づいたアラームの設定やデフォルトアラームの設定が行えるほか、Orageまたはマシンがオフになっていても必要に応じてアラームを作動させることも可能だ。さらに、予定を別々のファイルに保存したり、ほかのプログラムからテキストファイルのデータをOrageにインポートしたりもできる。こうした変更によってOrageは、月並みなアプリケーションから非常に便利なアプリケーションへと、見違えるほどの変貌を遂げている。

新たな設定ツール群

 このベータ版で最も大きく変わったのは、間違いなく設定の部分だ。コマンドラインのレベルでは、xconf-queryという新しいプログラムによって、以前のMCS設定システムがGNOMEのgconfベースのものに置き換えられている。この新しいシステムはXfceの上級ユーザには歓迎されるはずだが、初級および中級ユーザは手を出さないほうがよいだろう。たとえば、デスクトップの壁紙の画像を「garden.png」にするのに「xfconf-query -c xfce4-desktop -p /backdrop/screen0/monitor0/image-path -s /home/john/garden.png」というコマンドを使わないといけないことからも、このツールが万人向けでないことがわかる。

 幸いにして、この設定システムには、だれでも使えそうな新しいGUI設定マネージャが付属している。バージョン4.6になって、この設定マネージャからメニューが消えた。アイテムを選択するとそのダイアログが最上位のダイアログに代わって現れ、「Back」(戻る)ボタンを押すと元のダイアログに戻るという、KDE 4の設定ダイアログとよく似た形になったからだ。デスクトップ上に表示されるウィンドウの数が減るとはいえ、この方式は少し不格好に思える。ただし、以降の階層ではタブによって機能が整理されているので、目当ての設定項目にたどり着けないという問題は起こりにくくなっている。

 この設定マネージャをくまなく調べると、既存のコントロールの配置がかなり変わっていることに気付く。ユーザインタフェースの設定項目は、「Appearance」(外観)というわかりやすい項目の下にまとめられている。同様に、アクセシビリティ関連のオプション群は「Mouse and Keyboard」(マウスとキーボード)から独自の項目へと移り、「Autostart」(自動起動)も「Sessions and Startup」(セッションと起動)の項目から外れている。

 これらの変更の多くは単なる配置換えだが、機能自体が変化している部分もある。たとえば「Display Settings」(ディスプレイの設定)では、ガンマ補正に関する項目が消えて(おそらく、使い方を知っているユーザがほとんどいないためだろう)、モニタ表示の縦横回転のオプションが追加されている。また、「Desktop」(デスクトップ)にも、デフォルトのアイコンを選択するオプションが追加された。

 Xfceデスクトップの変更点は、まだまだある。国際化が進んでサポート対象の言語が増えたほか、以前のバージョンにはなかった各種キーボードレイアウトのサポートも追加されている。

 もっとわかりやすいのは、右クリックメニューが導入されたことだろう。この新しいメニューには、「Desktop Settings」(デスクトップの設定)のエントリだけでなく、ランチャ、リンク、フォルダの作成オプション群も(GNOMEのオプションと表記をそのまま利用した形で)含まれている。単純な追加ではあるが、こうした項目がアイコンの右クリックに隠されていてわかりにくかったバージョン4.4よりも、かなり使いやすくなった。確かに4.4にもデスクトップアイコンはあったが、4.6ではその追加を行うツールがわかりやすい場所に移っている。

ユーザを選ばないすばらしさ

 以前からXfceは、ギーク向けのデスクトップとして知られ、KDEやGNOMEの機能やディスク使用量の大きさに不満を感じている人々(おそらくは、デスクトップの概念そのものに疑念を抱いている人々)をターゲットとして作られていた。初期のXfceにおけるコマンドラインとテキストファイルによる設定へのこだわりから、こうした評判が生まれた。

 xconf-queryからもわかるように、このような印象は4.6ベータ版にも共通している。しかしXfceは、ここ1、2回のリリースで、KDEおよびGNOMEの良いところを採り入れて独自の風味を加えることにより、ユーザビリティへの注力も見せている。そうした開発者の取り組みのおかげで、Xfceは上級ユーザが重視する軽快さを維持しつつも、よりユーザフレンドリなものになっている。

 数十もの小さな変更の相乗効果によってあらゆるレベルのユーザにとってユーザビリティが向上したことに加え、処理速度も4.4より上がっている。Xfce 4.6の変更点のひとつひとつは小さなものかもしれないが、総合的に見れば、最も優れたフリーのデスクトップ環境の1つとなりそうだ。

Bruce Byfieldは、Linux.comに定期的に寄稿しているコンピュータ分野のジャーナリスト。

Linux.com 原文(2008年10月23日)