Xfce 4.4: 最良の軽量デスクトップ環境
Xfceの初リリースは1997年であり、今では成熟したアプリケーションだ。これまでの長い年月の間に数々のリリースを重ね、ドラッグ&ドロップやウィンドウマネージャや他言語サポートなどの機能やコンポーネントが追加されてきた。またSlackwareベースのZenwalkやUbuntuベースのXubuntuなど、Xfceに特化したディストリビューションもいくつか存在する。
最新版のXfce 4.4は、GNOMEやKDEと肩を並べるだけの機能を持った最初のリリースだ。Xfce 4.4には、Thunarという本格的なファイルマネージャやきれいなSVGアイコンや装飾的な視覚効果までもが備わっている。
Xfceをインストールする最も簡単な方法は、各ディストリビューションのパッケージマネージャを利用して、適切なバイナリを入手することだ。一方Xfceプロジェクトからも簡単に利用できる4種類のグラフィカルインストーラがリリースされている。一つ目は基本的なXfceのインストールに使うことのできる(新しいThunarファイルマネージャも含む)xfce4-4.4.0インストーラ、二つ目は古いバージョンのXfceでThunarを使いたい人向けのthunar-0.8.0-installerインストーラ、三つ目はUSBドライブなどのデバイスの管理にGNOMEのボリュームマネージャではなくXfceのボリュームマネージャを使いたい人向けのthunar-bundle-0.8.0インストーラ、そして最後の四つ目はXfce Goodies Projectによるきれいで便利なプラグインやアートワーク集を使いたい人向けのxfce-goodies-4.4.0インストーラだ。
Xfce 4.4で、まずはじめに気が付く変更点はデスクトップ上のアイコンだろう(私はよく必要となりよく使用するファイルやアプリケーションランチャのアイコンをデスクトップ上に置いておくのが好きだ)。新しいアイコンはUbuntu上のGNOMEでの同じアプリケーションに対応するアイコンよりもきれいだ。ただ新しいアイコンやランチャを追加するには、既存のアイテム上で右クリックし適切なアクションをDesktopサブメニューの中から選ぶという方法しか用意されていない。他のデスクトップ環境ではフォルダやショートカットの作成にはデスクトップ自体を右クリックするのだが、Xfceではデスクトップで右クリックするとXfceのアプリケーションメニューが立ち上がった。また不思議なことに、新しく作成したフォルダが再びXfceへログインし直すまで現れないこともあるかと思えば、また別の時には直ちに現れたりすることもあった。また別の思いがけないこととして、ファイルやフォルダやランチャのアイコンを削除したのに何も起こらない(ように見える)ということがあった。ところがもう一度試すと、デスクトップ上では存在しているように見えているのに、Xfceがそのようなリソースは存在しないと警告することがあった。
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「お気に入りのアプリ」では、システム上で利用可能になっているものの内、Xfceがデフォルトとして使用するべきウェブブラウザやメールクライアントや端末エミュレータを設定することができる(以前のバージョンのXfceでは、このようなデフォルトのアプリケーションを設定するためにはシェルの設定ファイルを手動で編集する必要があった)。また、Xfce 4.4では、Xfceにログインした後に自動的に起動されるアプリケーションを設定することもできるようになっている。
Xfce 4.4リリースでの目玉は間違いなく「Thunar」だろう。Thunarは薄気味悪いほどまでにGNOMEのNautilusに似ているファイルマネージャなのだが、Nautilusが持つ機能の大部分を提供しつつも、RAMの消費が少なくなっている。Thunarには、ワイルドカードによるファイルの選択や、さまざまな場所へのすばやい移動、ツリー表示、サムネイル表示といったファイルマネージャとしての通常の機能だけでなく、いくつかのプラグインをインストールして機能を追加することができるようにもなっている。私が特に気に入ったのはarchive-pluginで、これを使うとアーカイブファイルの作成や展開を行なうことができる。またThunarには、指定した条件に基づいて複数のファイルの名前を一括で変更することができる機能も用意されている。なお条件の指定には正規表現を使うことさえできる。
Xfce 4.4でのもう一つの改善点として、好みによって複数種類のキーボードのショートカットをテーマごとにまとめてグループ分けすることのできる機能が挙げられる。キーボードテーマは様々な動作に対応するキーボードのショートカットから構成されており、複数のテーマを作っておくと同じキーの組み合わせを異なる動作に対応させることができる。つまり例えば「Ctrl-V」というキーボードのショートカットを、「テキスト」というキーボードテーマでは「テキストの貼り付け」に対応させ、「マルチメディア」というキーボードテーマでは「音量調節マネージャの起動」に対応させるといったようなことができる。
Xfce 4.4ではまた、パネルに関して徹底的に書き直された。デフォルトではXfceには上方と下方に2つのパネルが用意されている。上方に位置するパネルにはページャや最小化されたアプリケーションが収まっていて、下方に位置するパネルにはXfceのアプリケーションメニューやファイルマネージャ/ウェブブラウザ/テキストエディタ/端末エミュレータなどのランチャに加え時計や終了ボタンなどが収まっている。どちらのパネルの位置も変更することができる。あるいはまったく新しいパネルを追加して見掛けを好きにいじくり回すこともできる。またGNOMEでのアプレットと似た感じでパネルにプラグインを追加したり削除したりすることもできる。
前バージョンからの大きな改善点の内、表面的に見えない部分についての改善点としては、プラグインをパネルとは別のプロセスとして実行できるようになったということがある。これによりプラグインのバグによってパネル全体がクラッシュしてしまうことがなくなった。なお私は音量表示/調整プラグインを追加してみたのだが、一方で、GNOMEでのネットワーク監視アプレットに相当するものは見つけることができなかった。
Xfce 4.4にはまた、Xfce独自のOrageカレンダー/時間管理アプリケーションが含まれている。Orageは、約束の予定を入力したり定期的なアラームを設定したりスケジュールの進捗状況を把握したりなどの、よくある時間管理タスクのほとんどをサポートしている。Orageは以前のXfceのカレンダーアプリケーションとは異なり、広く利用されているiCal形式にデータを保存するので、他のカレンダーアプリケーションとの互換性がある。
Xfceのウィンドウマネージャにもいくつかの改善点がある。Xfce 4.4では、Xorg 6.9で導入されたコンポジット拡張に基づいたコンポジットマネージャが新たに導入されている。これによりXfceで半透明ウィンドウやウィンドウ枠の影などの装飾的な視覚効果を楽しむことができるようになった。なおコンポジットマネージャをオンにするためには、以下の行を(通常/etc/X11/にある)xorg.confに付け足す。
Section "Extensions" Option "Composite" "true" EndSection
コンポジットマネージャの設定の調整は、設定マネージャ経由でアクセスすることができる「WMの調整」の中にある「コンポジット」タブから行なうことができる。これらの設定をオンにしても、(少なくとも視覚的な部分に関しては)Xfceが遅くなったというように感じることは特になかった。
最後に、Xfce 4.4ではXfceの端末エミュレータである「terminal」にも大幅な変更が加えられ、複数のタブを利用したり、柔軟な設定を行なうことができるようになった。ただterminalは概して優れた端末エミュレータではあるものの、wgetでダウンロードを激しく行なっているタブでスクロールができなくなってしまうという不具合にも遭遇した。
Xfce 4.4は、前回のリリースから大きく改善している。今現在利用できる選択肢の内で最も軽量なソリューションというわけではないかもしれないが、パフォーマンスと使いやすさとのバランスという点ではベストのソリューションだ。以上に紹介したような新機能を伴ったXfce 4.4は、旧式のローエンドなコンピュータ上だけでなく、より新しいマシン上でもデスクトップ環境としての有力な候補であると言って良いだろう。