NECが新スパコンを投入、1ノード当たりの演算性能は従来機種の13倍に――単一コア当たり102.4GFLOPSの新CPUを搭載
SX-9は、大学や研究機関、気象・気候機関向けのHPC(High Performance Computing)サーバ「SX-8」の後継機。SXシリーズはこれまで国内外で累計約1,100台を販売している。そのうち、日本での受注数は50%を占める。
最大の特徴は、単一コア当たり102.4GFLOPSの演算性能を実現した新CPUの搭載である。NECによれば、単一コアとして100GFLOPS以上を実現したのは世界初だという。従来機種のSX-8が、1ノード当たり128GFLOPS であるのと比べれば、わずか1つのCPUでSX-8の1ノードに匹敵する演算性能を実現していることになる。
新CPUは、従来からのアーキテクチャを継承しつつ、演算器の追加、ベクトル・パイプラインの増強といった複数の改良が施されている。65ナノメートル(nm)製造プロセスにより、ベクトル・ユニットとスカラ・ユニットの1チップ化も図っている。
SX-9は、1ノード当たり最大16個のCPUを搭載することが可能だ。これにより、演算性能は1.6TFLOPSまで拡張される。13ノードで1.6TFLOPSを発揮したSX-8と比べると、SX-9では単純計算で1ノード当たり13倍の性能向上が図られたことになる。また、1CPU当たり256Gbpsのメモリ帯域幅も有しているため、1ノード当たりの総メモリ帯域幅は4Tbpsに達する。共有メモリは1ノード当たり1TB、ノード間を接続するインターコネクトは128Gbpsの高速性を実現することで、最大512ノードの接続を可能にしている。
さらに設置面積では、SX-8(13ノード)が19.3㎡であったのに対してSX-9は4.9㎡、消費電力では同じく108kVAに対して30kVAと、面積・消費電力がそれぞれ4分の1程度に削減されている。
NECの執行役員常務、丸山好一氏はSX-9について、「使いやすさと高速性をバランスよく提供することを目指して開発してきた。(IBMのように)最高性能を追求する製品開発がユーザーにとって最適とは思わない」と、ユーザー・フレンドリーな機能面を強調した。
実際、SX-9は、一連の機能強化に加えて、大規模マルチノードを構成するために最適化したOSをはじめ、HPC向け高速共有ファイル・ソフト「GSTORAGEFS」や、自動ベクトル化/自動並列化などのプログラム・チューニングを行うコンパイラ、性能解析ツールといった各種専用ソフトウェアを用意している。ユーザーはこれらのソフトウェアを利用することで、迅速にSX-9を導入・実行できるという。
SX-9の価格は、最小構成で1ノード(4CPU搭載)当たり約1億5,000万円となる。NECは今後3年間で700システムの販売を見込んでいる。現在、欧州の顧客と100ノード規模の商談を進めており、受注すれば100億円規模の売上げになるという。国内においても、2008年夏をめどに10ノードのSX-9を大阪大学に納品することが決定している。
NECのHPC販売推進本部長、笹倉孝之氏によれば、HPCのグローバル市場において、現在NECは20%程度のシェアを有しているという。「今後は、SX-9の投入によりシェアを50%まで拡大させる」と同氏は意気込みを語った。
(山上朝之/Computerworld)
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