Sun、HPC市場への復帰を目指して0.5PFLOPSのスパコンを投入
Sun Constellation Systemは、Sun製のマルチコアCPU搭載ブレード・サーバ、InfiniBand対応スイッチ、ストレージ・システムで構成される、HPC用途のスーパーコンピュータである。
Sunが投入を準備しているSun Constellation Systemの実装モデルは、米国テキサス大学(テキサス州オースチン)のテキサス先端計算センター(TACC)に納入されるもの。「RACC Ranger HPCクラスタ」と呼ばれるそのモデルは、500TFLOPS(テラフロップス:1秒間に1兆回の演算が可能)のデータ処理能力を持つという。なお、 Sun Constellation Systemは、最大で2PFLOPS(ペタフロップス。1PFLOPSは1,000TFLOPSに相当)まで拡張可能とされている。
Sunは、新しいハイエンド・クラスタ実装モデルの発表タイミングを、今週、ネバダ州リノで開催される「International Supercomputer Conference」(ICS)に合わせたもようだ。ICSは半年に1度開催され、世界最速のHPCをランキングした「トップ500リスト」が発表されることで知られている。TACCでの導入作業が2008年1月までに完了しないため、RACC Rangerは今週のトップ500リストへの掲載資格を満たしていないが、2008年6月に発表予定の次回のリストでは、資格を満たしてランクインできる見通しだ。
500TFLOPSという性能が実証されれば、現在のチャンピオンであるIBMのスーパコンピュータ「BlueGene/L」に勝つことができる。280.6TFLPSの性能を有するBlueGene/Lは、今年6月に発表されたトップ500リストで1位にランクされている。IBMは今週のトップ500リストに、478TFLOPSまで性能を引き上げた拡張版のBlueGene/Lを送り込み、首位を堅持する見通しだ。さらに、次世代システムとして、3PFLOPSに達するとされるBlueGene/Pの開発計画を発表済みである。
米国のIT市場調査会社Forrester Researchの主任アナリスト、ジェームズ・スターテン氏は、「(新しい)Sun Constellation Systemは非常に有力な製品だと思う。Sunにとっては、HPC市場への復帰を強烈に印象づけるものになる」と語っている。
スターテン氏によると、Sunは、かつてHPC専業ベンダーだったが、1990年代末のいわゆる「ドットコム・ブーム」以後、インターネット関連の新興企業に業界標準のサーバを販売するという方向に重点を移したという。しかし今では、他のコンピュータ・ベンダーと同様、Sunも、大学や政府機関、特定業界の研究所だけではなく、企業のデータセンターなどにもHPCの潜在的な市場が存在するということを認識するようになっている。
SunのHPC/統合システム担当ディレクター、ビヨン・アンデルソン氏は、「HPC市場の進歩に追いつくため、長期的な視点でかかわっていく」と語っている。
Sunは今年6月、ドイツのドレスデンでSun Constellation Systemを初めて披露した。この地でのISC開催直前のことである。TACC Rangerの最終的な構成は、サーバ「Sun Fire X4500」と合計1.7PB(ペタバイト)のストレージからなる80以上の「Sun Constellation System」ラックからなり、1万5,000個のクアッドコアCPUが500TFLOPS、つまり0.5PFLOPSの処理能力をたたき出す。
Sunのチーフ・アーキテクト兼シニア・バイスプレジデント、アンディ・ベクトルシャイム氏は、業界標準のコンポーネントとオープンソース・ソフトを使って構築されているという点がSun Constellation Systemの長所であると語っている。IBMのBlueGeneは、完全なカスタム・メードであり、システムの構築に多くの時間と費用がかかる。
「われわれは、業界標準のオープン・アーキテクチャが特定用途向けコンピュータにようやく追いついたと考えている」(ベクトルシャイム氏)
(ロバート・マリンズ/Network World米国版)
米国Sun Microsystems
http://www.sun.com/
提供:Computerworld.jp