ニューヨーク州がODFの導入を検討する調査を開始――Open XMLとODFの両陣営の狭間で新法案の行方に注目が

 米国ニューヨーク州がドキュメント形式としてオープン標準を採用するかどうかの是非を検討することになった。ただし、今回の動きはISO標準のOpen Document Format(ODF)の推進者にとって必ずしも朗報とは言えないかもしれない。

 民主党の女性下院議員、ロアンヌ M.デスティト氏が提出したニューヨーク州法案A08961号は、州政府文書の作成/交換/保存方法と、これらの文書の使用基準(州政府による適切な管理、アクセス、選択権、相互運用性、ベンダー中立性)について州が調査することを提案している。

 テキサス、コネチカット、フロリダ、ミネソタ、オレゴンなどの州の議員もオープン標準のドキュメント形式の使用命令につながる同様の法案を提出しているが、いずれの州もまだODFを正式に支持するには至っていない。ODFは無料で利用できるドキュメント形式で、Microsoftの「Office 2007」スイートのデフォルト・ファイル形式「Open XML」と競合する。

 他州の動向を先例ととらえるなら、デスティト氏の法案は結局実を結ぶことはないかもしれない。州政府機関に無料で利用可能なドキュメント形式の使用を義務づける内容を盛り込んだテキサス、コネチカット、フロリダ、オレゴン各州の法案は、親Microsoftのロビーストらによって葬り去られたからだ。

 また、ミネソタ州の法案は議会を通過したものの、これは単にオープン・ドキュメント形式の使用の可能性を調査するもので、実際に使用を義務づけるものではない。

 MicrosoftとODF支持派のIBMやSun Microsystemsなどは、両陣営の仕様の普及でしのぎを削っており、両陣営ともITユーザーの最大の利益を考慮していると主張している。しかし、いずれの取り組みも自陣営の商業的利益を図っていると批判されている。

 IBMは、コラボレーション・スイート「Lotus Notes 8」に、Sunはビジネス・スイート「StarOffice」にODFファイル形式を採用している。Microsoftの主要なライバルであるGoogleもオンライン・アプリケーション「Google Docs & Spreadsheets」でODFをサポートしている。

 これまでのところ、ODFのサポートを含むオープン・ドキュメント政策を正式に採用した州はマサチューセッツだけにとどまっている。ただし、ベルギーやデンマーク、フランスなどの欧州諸国の政府は米国に先んじて政府機関にオープン・ドキュメント形式の使用を義務づけている。

 また、MicrosoftはOpen XMLを国際標準化機構(ISO)に提出して国際標準化を目指しているが、Open XML標準への管理を通常の標準技術よりも強めようとしていると批判されている。Open XMLは今年後半にISOの承認投票に付される予定だ。

(エリザベス・モンタルバノ/IDG News Service ニューヨーク支局)

米国ニューヨーク州
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提供:Computerworld.jp