デンマーク政府、ODFとOpen XMLの比較テストを実施へ――行政文書フォーマットの統一に向け、両規格を1年間試用
デンマークのNITA(National IT and Telecom Agency)IT戦略部、シニア・アドバイザーのラシッド・エルムースティ氏は、1年というテスト期間を設けた理由について、「(ODFとOpen XMLのいずれも)現時点では成熟した文書フォーマットとは言えないため」と説明している。
同国の科学技術省によると、テスト結果は2009年上半期中に第三者による評価を受け、その後デンマーク議会がさらに評価を行う予定だという。
デンマーク政府は、行政機関が購入するソフトウェア製品についても、標準化した文書フォーマットに対応できることを条件として加える意向だ。また、フォーマット変換のためのコンバータ使用を含め、行政機関で文書をやり取りする方法についても検討するとしている。
エルムースティ氏は、「市場の動向などを加味しながら、ODFとOpen XMLのどちらか一方か両方か、もしくはどちらも使わないかを判断することになる」と述べている。
特定の文書フォーマットを政府が支持すれば、市場でのフォーマット普及に弾みがつく可能性が高い。仮にデンマーク政府がODFの使用を行政機関に義務づければ、ODFを採用している「OpenOffice.org」などのオフィス・スイートにも追い風が吹き、現在市場を支配しているMicrosoftの「Office」スイートからシェアを奪うことも考えられる。
エルムースティ氏は、ODFとOpen XMLの両陣営をはじめ、すべてのベンダーと友好的に話し合いを続けてきたことを強調する。「オープンな文書フォーマットだからといって、それを採用しただけでは成功はおぼつかない。当然のことだが、ベンダーの協力も必要だ」(同氏)
一方、Open XMLの開発元である米国Microsoftの幹部は、文書フォーマットの統一に向けたデンマーク政府の動きをやんわりと批判している。同社コーポレート標準担当ディレクターのジェーソン・マツショー氏は先週、「デンマーク政府の動きは重要な一歩だ。しかし、(フォーマット統一は)相互運用性向上のソリューションにはならないと確信している」と自社ブログに記している。
デンマークでは、ODFはあまり普及していない。政府機関の大半はMicrosoft製品を使っており、外部に公開する文書についてはPDF(Portable Document Format)を用いている。
これまでMicrosoftは、各国の政府機関や組織に対し、Open XMLのほうがODFよりも多機能であることを根拠に、Open XMLを採用するよう強く促してきた。しかし、Open XMLをあまりに複雑すぎると批判する向きも少なくない。
昨年12月、Open XMLは標準化団体ECMA(欧州電子計算機工業会)の承認を得た。また今年7月には、米国マサチューセッツ州が、行政文書に使用可能な標準文書フォーマットの候補リストにOpen XMLを付け加えている。
(ジェレミー・カーク/IDG News Service ロンドン支局)
提供:Computerworld.jp