GoogleとSalesforce.comが提携へ――対Microsoftで共闘か、パッケージ・ソフトvs.ホスティング・サービスの構図が鮮明に

 米国ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙の5月21日付けの報道によると、米国Googleと米国Salesforce.comが提携に向けた話し合いを行っているという。

 WSJ紙によると、提携形態とその具体的な内容はまだ確定していないが、Googleが提供するホスティング型アプリケーション・スイートの「Google Apps」と、Salesforce.comが提供するオンデマンドCRMアプリケーションが統合される見込みだという。

 現在のところ、Google AppsとSalesforce.comのオンデマンドCRMアプリケーションは、きわめて補完的な関係にある。

 Google Appsには電子メールの「Gmail」、IM(インスタント・メッセージ)の「Talk」、ワープロ・ソフト&表計算ソフトの「Docs&Spreadsheets」、Webページ作成ツールの「Page Creator」、スケジュール/タスク管理用の「Calendar」などが包含されているが、CRMアプリケーションは含まれていない。

 一方、Salesforce.comのオンデマンドCRMアプリケーションには、Google Appsにあるようなオフィス・ツールは包含されていない。

 しかし、両社が“その気”になれば、相手の領域を侵すことは簡単であり、両社が互いの角を突き合わせるのは時間の問題と見られていた。

 GoogleにはCRMアプリケーションを開発する社内リソースも、CRMベンダーを買収する資金も豊富にあり、Salesforce.comもそれを熟知している。米国スターリング・マーケット・インテリジェンスのアナリストのグレッグ・スターリング氏は、「GoogleがCRMアプリケーションを独自開発したり、CRMアプリケーション・ベンダーを買収したりしないよう、Salesforce.comは提携によってGoogleをつなぎ止めるつもりなのだろう」と分析する。

 Salesforce.comとGoogleは昨年、Googleの企業向け検索アプライアンス用モジュールを共同開発している。また、Salesforce.comは、検索連動型広告の「Google AdWords」の効果を分析するアプリケーションを提供しており、社内ではGoogle Appsを使用している。

 また両社は将来、エンタープライズ市場におけるアプリケーションの提供形態は、従来のパッケージ・ソフトウェア型ではなくホスティング形式が主流になると主張している。コスト削減効果やアプリケーション管理の簡素化など、SaaS(Software as a Service)モデルのメリットをアピールするのにも余念がない。

 今回の提携の動きについて、アナリストの見解は二分しているようだ。

 米国Forrester Researchのアナリスト、オリバー・ヤング氏と米国ニュークリアス・リサーチのアナリスト、レベッカ・ウェットマン氏は、「Googleにとっては提携よりも(Salesforce.comを)買収したほうが得策だ。将来的にエンタープライズ・アプリケーション・ホスティング市場で両社が争うことになれば、提携はまったく意味を持たなくなる」と指摘する。

 一方スターリング氏は、たとえGoogleであっても時価総額55億ドルのSalesforce.comは高すぎる買い物だという見解を示している。

 なお、5月21日の時点では、両社からのコメントは得られていない。

(ホアン・カルロス・ペレス/IDG News Service マイアミ支局)

米国Google
http://www.google.com/
米国Salesforce.com
http://www.salesforce.com/

提供:Computerworld.jp