イベントレポート:第4回 The Linux Foundation Japan Symposium――Andrew Morton氏がLinuxカーネルの開発動向を報告

 The Linux Foundation Japanは3月13日、オープンソース開発者を対象とするシンポジウム「第4回 The Linux Foundation Japan Symposium」を開催した。この記事では、Linuxカーネル2.6のメインテナーであるAndrew Morton氏の講演を中心に、同シンポジウムの午前中の様子をレポートする。

着実な進歩の道を選択したLinuxカーネル用の仮想化テクノロジ

仮想化テクノロジとは、システムを“仮想化”することによって単一ホストにおける複数システムの同時使用を可能とする技術のことであり、こうした概念自体は固体素子を用いたコンピューティングテクノロジと匹敵するくらい古くから存在している。そして近年、こうした仮想化テクノロジのブームが再燃しつつあり、例えばLinux系の大規模な仮想化プロジェクトでも10を超える団体がそうした活動を進めているところだ。ただしこのテクノロジを実現するには、カーネル、パッチ、ソフトウェアに特殊なカスタマイズを施す必要があるため、現状のLinuxカーネルについては初歩的なOSレベルの仮想化テクノロジが実装されている段階である。

LinuxカーネルのIRQをめぐる大論争

今回は普段のカーネルハッキングの話題ではなく、IRQ論争勃発の特別レポートをお届けする。本題に入る前に、PC上のデバイスが、ハードウェア的にはプロセッサに対して、ソフトウェア的にはカーネルに対して、何らかの処理を要求すると、何が起こるかの一例を挙げておこう。デバイスは何らかの処理が必要なことをプロセッサに通知するために、適当な割り込み要求(Interrupt ReQuest、略してIRQ)をオンにする。カーネルは、この要求を満たすことで仕事を処理し、その後IRQを再びオフにする、といった具合だ。

Reiserファイルシステム開発続行か

ReiserFSファイルシステムとReiser4ファイルシステムの開発者であるHans Reiser氏が、米カリフォルニア州オークランドで逮捕された。別居中の妻Nina Reiserさんの行方不明に関与しているとの疑いだ。このニュースを受け、フリー/オープンソースソフトウェアコミュニティでは、Hans Reiser氏の会社Namesys社とReiserファイルシステムの今後への影響が懸念されている。

Reiser4を取り巻くLinuxカーネルの政治力学

どうしてReiser4ファイルシステムはLinuxカーネルに取り込まれていないのか? ここ最近カーネルメーリングリスト上でこうした疑問に関する討論が展開されていたが、それは歯切れの悪い議論でしかなく、カーネル開発とは理性的な意見交換に基づいて実行されると思いこんでいた人々を幻滅させるのに充分なものであった。というのも、いずれの陣営も自分たちは技術的なメリットについて述べているのだと主張はしているのだが、いつしか議論の流れは、既存の慣例や方針を遵守すべきかという問題にすり替わってしまうのである。そして、感情的な対立が露わになるのも常であった。

FreedomHECレポート

シアトル発 ― 毎年、MicrosoftはWindows Hardware Engineering Conference(WinHEC)を開催している。今年は、このWinHECに続いて、FreedomHECと呼ばれる小規模かつ非公式な「アンカンファレンス(カンファレンスならざる会合)」が2日間にわたって行われた。WinHECほど大がかりではないにせよ、一般の開発者がLinuxのカーネル開発者と接し、意見を交換できる絶好の機会だった。

カーネル2.6.18に向けたmd拡張機能の整理

すでにここで掲載の記事、Linuxカーネルの「オーバーホール」に関するTorvalds氏のコメントにあるように、今まで成長を続けてきた2.6系カーネルの集大成として予定されている2.6.18での安定化に向けた動きがLKML(Linux Kernel Mailing List)を中心に始まっている。今回は、LinuxでソフトウェアRAID機能を提供するmd(Multiple Device)モジュールの機能拡張に関する投稿を紹介する。