Linuxカーネル2.6.39リリース、GPUサポートの改善や「IP Sets」サポートなどが特徴
Linus Torvalds氏は5月19日、Linuxカーネル2.6.39を公開した。ファイアウォールの設定と実装が容易になる「IP sets」のサポートやAMDの最新GPUサポート、IntelのGMA500グラフィック機能サポートなどが特徴となる。
2011年3月14日のLinuxカーネル2.6.38公開以来、約2か月ぶりのリリースとなる。Linus Torvalds氏は「これをrc8ではなく正式版としてリリースするかどうかの判断に迷った」とLinux Kernel Mailing Listにて述べているものの、多くの修正点が加えられている。
主要な改善点の1つとしては、ネットワーク管理フレームワーク「IP sets」のサポートがある。「ipset」コマンドを用いてIPアドレスやポート番号、MACアドレスのグループを定義し、グループを使ってiptablesルールを記述できるというもので、ファイアウォールの設定・実装・運用・メンテナンスが容易になるという。グループを定義するテーブルはメモリ内に保持され、非常に高速に処理できるとのこと。
また、ブロックデバイスサブシステム内部の再構築も進められた。スケーラビリティの改善などを目的とするもので、新たなブロックデバイス接続モデルが導入されている。これはLinuxカーネル 2.6.39で初めて導入されるもので、ロックを避けることでパフォーマンスの向上を図るものという。
ファイルシステム関連では、Ext4で「Multiple Page-IO Submissions」(mblk_io_submitオプション)がデフォルトで有効となった。これによりパフォーマンスやスケーラビリティが大幅に向上したという。このコードはLinuxカーネル 2.6.37ですでに利用できたが、特定の状況でデータ欠落が発生していたのでデフォルトではオフになっていた。Btrfsもいまだ実験的サポートの段階ではあるものの、改善が進められている。また、「pstore」ファイルシステムも導入された。これは非揮発性の小容量ファイルシステムで、システムクラッシュ時の診断情報などを保存するのに有用だという。
仮想化関連では、KVMで非同期のページフォールト処理が可能となった。ゲストシステム上であるスレッドがメモリページをリクエストしている間に、別のスレッドを実行することが可能となる。
ハードウェアサポートの改善としては、USB 3.0ハブのサポートやFirewire接続のサウンドデバイスサポートなどが挙げられる。グラフィック関連ではRadeon HD 67xx/68xx/69xxシリーズといった最新のAMDグラフィックチップのサポートが追加された(ただし、2D/3Dアクセラレーション機能はDRMサポートが無いために利用不可)ほか、インテルチップセット内蔵GPUについてもドライバが改良され、消費電力の削減やGMA500の原始的なサポートが行われた。NVIDIA向けのNouveauドライバではZバッファ圧縮がサポートされ、またパフォーマンスも10~30%向上しているという。
そのほか、以前より行われていたBig Kernel Lockの削除作業も完了、コード内でBig Kernel Lockを利用している個所は完全に無くなったとのこと。
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