Linuxカーネル 2.6.34リリース、新ファイルシステム対応や電源管理機構の強化など改善点多数

 Linus Torvalds氏は5月16日、Linuxカーネル 2.6.34のリリースを発表した。2月末の2.6.33公開以来、約3か月ぶりのリリースとなる。「特に興味深いものはない」とTorvalds氏は記しているが、新たに2種類のファイルシステムに対応するなど、多数の機能強化が図られている。

 ファイルシステムでは、「Ceph」と「LogFS」に新たに対応した。Cephは数ギガバイトから数ペタバイト以上まで、シームレスにスケールできる分散ファイルシステム。信頼性や障害復旧性能、柔軟なメタデータ管理機能などが特徴。LogFSはSSDやUSBメモリといったフラッシュメモリ系ストレージ向けのファイルシステムで、高速なマウントやメモリ(RAM)の利用効率の高さなどが特徴。ただし、現在はまだ実験的サポート段階としている。また、次世代ファイルシステムとして開発が進められている「Btrfs」にも多数の改良が加えられている。

 仮想化関連機能では、「vhost(vhost-net)」と呼ばれるカーネルレベルでの仮想ネットワーク機能が追加された。仮想マシンでのネットワーク利用を効率化するもので、パケット処理の際に必要なシステムコールを削減し、仮想化によるオーバーヘッドを削減できるという。また、ゲストOSが使用するメモリ量を動的に制限する「VMware Ballon driver」も追加された。これは仮想化ホストがVMwareの場合にのみ利用できる。

 電源管理機構も改善され、非同期のサスペンド/レジュームをサポートした。デバイスごとにサスペンド/レジューム処理を並列実行できるようになり、サスペンド/レジュームに必要な時間が大きく短縮されるとのこと。デフォルトではPCIおよびUSB、SCSIデバイスにおいて非同期サスペンド/レジュームが行われる設定となっている。

 ネットワーク周りでは、RFC 5082で規定されているGeneralized TTL Security MechanismやVLAN Aggregation for Efficient IP Address Allocation(RFC 3069)をサポート。そのほか、カーネルの実行状況を動的に取得する「Kprobes」やパフォーマンス解析ツール「perf」の改善、ロック機構「RCU」の改善、2基のGPUを搭載するノートPC向けに動的なGPU切り替えを行う機構なども追加されている。Radeon HD 5000シリーズの実験的サポートも追加された。

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