Zimbra Collaboration Server Open Source Edition:前途有望なローエンド・パッケージ

 本格的なオープンソースのコラボレーション・サーバを探している方には、Yahoo!のZimbra Collaboration Suite(ZCS)をお勧めしたい。ZCSは、AJAXによるWebベースの管理インタフェースおよびユーザ・インタフェース、さまざまな便利なグループウェア機能、および電子メール・インポート機能を備えたWeb 2.0の電子メール/グループウェア・サーバである。

 ZCSには5つのバージョンがある。今回試したOpen Source Editionは、他のバージョンと比べて機能に制約があるが、純然たるオープンソースのソフトウェアだ。

 Zimbraによれば、すべてのエディションはMac OS Xと各種Linuxプラットフォーム、たとえば、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)、Fedora、Ubuntu、Debian、Mandriva、SUSE Linux Enterprise Server(SLES)、rPath(ソフトウェアアプライアンスISOイメージ)、VMware(認定仮想アプライアンス)で動作する。

 インストールはあっという間に終わった。本格的なサーバアプリケーションでこんなことはほとんど記憶にない。複数のパーツで構成されるソフトウェアだが、インストールは1ステージで行われる。多くのUnix、Linuxアプリケーションもそうだが、Zimbraは実際には複数のアプリケーションの寄り合いだ。Webアプリケーションサーバ用のApache Tomcat、電子メール転送エージェント(MTA)用のPostfix、ウイルススキャン用のClam AntiVirus、スパムフィルタリング用のSpamAssassinおよびDSPAM、ユーザ認証用のOpenLDAP、ユーザ設定/メッセージデータ保存用のMySQLから構成される。

 他にも一般的なLinuxユーティリティをいくつかインストールする必要がある。まだセットアップが済んでいないと思われるのは、cURL(URL構文を使うファイル転送用シェルツール)、fetchmail(リモートメール転送ユーティリティ)、Libidnライブラリ(多言語電子メールアドレス処理)だ。

 サーバのハードウェア要件として、Zimbraは2GHz以上の64ビット版プロセッサと2GB以上のRAMを推奨する。ハードディスクの最小要件は15GBだが、現実にはこれでは足りない。ユーザ用の電子メールストレージについて具体的な要件はないが、私は1ユーザあたり最低でも500MBをお勧めする。多すぎると感じるかもしれないが、大きなファイルを添付したままメッセージをサーバに残すユーザが増えているため、これが妥当な数字である。

 ここで、初めて不安になった。このデフォルトのインストール構成で、すべての負荷を1システムで処理できるのだろうか。それはつまり、多くのアプリケーションが、常に高速に動作するために単一システムを頼るということだ。私だったら、少なくともデータベースとストレージの機能をアプリケーションサーバと電子メールサーバから分離する。どうやらZimbraもこの点は考慮したらしく、アカウント数が100を超える場合にRAID 5の使用を避けるように推奨している。なぜか。その人数になると、ディスクへのアクセスが殺到するため、パフォーマンスが目立って悪化する可能性が高いからだ。RAID 5ストレージ翻訳記事)を使う単一システムには負荷が高すぎる。もちろん、クラスタ化でこの種類の負荷の問題は軽減できるが、クラスタ化機能や高可用性サポートは商用エディションでしか提供されない。

 テストに使ったシステム ─ 2台のHewlett-Packard Pavilion a6040nデスクトップ(1.86GHz Intel Core 2 Duo E6320プロセッサ、2GB RAM、320GB SATAドライブ)─ で、Zimbraは軽快に動作した。ただし、最高でも20人未満のユーザしか使用しない軽めの負荷でのテストである。

 非常に活発で役に立つZimbraフォーラムがあることも、小規模なビジネスやグループにとってプラスだ。メーリングリストやフォーラムを頼るのは泥縄式のやり方だが、Zimbraの場合これで間に合う。フォーラムは活発で、質問を投稿するとZimbraのスタッフやZimbraに詳しい熟練ユーザからすぐに返事がある。

 Zimbraを実際に動かしてわかったのは、システム管理が実に簡単なことだ。Webベースの管理インタフェースのおかげで、ユーザやシステム共通デフォルトを簡単に設定できる。たとえば、.exeファイルが添付されたメールを受信した場合に自動的にバイナリのゴミ箱に振り分けるように設定できる。

 また、Outlook 2003(およびそれ以前のバージョン)とZimbra Connector for Outlookの連携も良好に機能した。ただし、Outlook 2007では機能しなかった。ベータ版のConnectorはこの問題に対処したというが、あまりうまく動作しない。いずれにしても、Connector for OutlookとConnector for Apple iSyncは商用バージョンのZimbraでしか使用できない。

 もちろん、Zimbraが望んでいるのはWebベースのZimbra Desktopクライアントをユーザが使うことである。このAJAXベースの電子メール/予定表アプリケーションはWindows、Mac、Linuxで使用できる。このクライアントは見栄えがよく使いやすいが、私ならEvolutionなどのスタンドアロンの電子メールクライアントを使う方を選ぶ。フリーのZimbra Collaboration Suite Evolution Connectorを使ってEvolutionと接続できるが、ZimbraとEvolutionはどちらも電子メールにPOP、SMTP、IMAP、予定表にWebcalをネイティブでサポートするので、このコネクタがなんのためにあるのかはわからない。

 また、Open Source Editionにはバックアップと復元のユーティリティも含まれない。Zimbraを実務用に検討する場合、これは大きな減点だ。他のエディションにはこの機能がある。

 ZimbraのOpen Source Editionは、Yahoo! Public Licenseに従ってリリースされる。このライセンスはMozilla Public Licenseの変種であり、Open Source Initiativeはオープンソースライセンスと認めていない。この違いはほとんどのユーザには大きな意味はないが、オープンソースライセンスが公式なものであることにこだわる人は要注意だ。

 全体として、Open Source EditionはZimbraを試すには良い方法だ。バックアップやクラスタ化がサポートされていないことからビジネスユースにはお勧めできないが、商用バージョンは十分なパフォーマンスを発揮すると思われる。長所は多いが、Open Source Editionが機能限定試用版に近いのはもどかしい。

Steven J. Vaughan-Nicholsは、PC用オペレーティングシステムとしてCP/M-80が選択され、2BSD Unixを使うことがクールとされた時代から、テクノロジおよびそのビジネス利用についての執筆活動を続けている。

Linux.com 原文(2008年11月6日)