俳優で作家のStephen Fryがフリーソフトウェアを推薦

 GNU Project発足25周年を記念してFree Software Foundation(FSF)が主催する一連の行事が始まった。フリーソフトウェア紹介ビデオの公開を皮切りに、1カ月にわたって各種行事が続く。ビデオでは、英国の俳優でコメディアンのStephen Fryがフリーソフトウェアへの傾倒振りを披露している。

 フリーソフトウェア・コミュニティーのメンバーならご存じのとおり、GNU Projectはフリーソフトウェア・プロジェクトの集合体であり、その誕生は一般にフリーソフトウェア運動の始まりとして認識されている。FSFのキャンペーン・マネージャーであるMatt Leeによると、現在、典型的なGNU/Linuxディストリビューションの15%弱がGNUソフトウェアだという。

 しかし、GNUにしてもフリーソフトウェアにしても、その理念は特定のコンピューター・グループの枠の中にとどまり、それを越えて大きく広がってはいない。そうした現状を改めること。それがこのビデオの大きな目的だとFSFのディレクターPeter Brownは言う。Fryの人気、そして巧みな話術と著作で、このビデオはそれを実現する大きな可能性を持っている。

 Fryは、2月2日付けのブログで自身がサポーターであることを明らかにした。「オープンソースの2つの柱はGNU ProjectとLinuxだ。ここで詳しく紹介することは差し控えるが、次のことだけは声を大にして言いたい。今後5年以内に、皆さんのコンピューターでも、この2つに連なるソフトウェアが動いていることだろう。そして、それによって皆さんの生活がより良くより満足できるものになっているはずだ」

 このブログがMatt Leeの目にとまり、LeeはFryに依頼、ビデオはこの春ロンドンで収録された。

ビデオ

 「Happy Birthday to GNU」と題されたこのビデオで、Fryは、古いれんが造りの建物の2階か3階で肘掛けいすに座っている。まず、自分がパーソナル・コンピューターができて以来のコンピューター・ファンだったことから話を始め、次のように続ける。「しかし、最近はご多分に漏れず、『フリーソフトウェア』に関心が移っている。フリーソフトウェアの意味についてはいろいろ複雑な点もあるから、整理しておこう」

 そして、ソフトウェアを下水管に喩え、下水管を使っている人はたとえ修理方法を知らなくても修理する権利を持っているが、ソフトウェアの場合、MicrosoftやAppleなどのプロプライエタリー企業はそうした権利を否定しようとすると説明する。

 次に、フリーソフトウェアを学術界に喩える。学術界では伝統的に知識を共有する。「(共有)しなければ、それは悪しき科学であり一種の専制だ」。かくして、聞く者はソフトウェアの完璧なアナロジーを思い描くことになる。

 Windowsのライセンス画面や若い頃のRichard Stallmanの写真などを挟みつつ、Fryはフリーソフトウェア・コミュニティーとその歴史を説明していき、gNewSenseなどの完全なフリー・ディストリビューションを使おう、もし可能であればコードで貢献しようと呼びかけて話を終える。

 そして、「ともあれ、GNUの誕生日を私と一緒に祝ってほしい」と言うと、今まで画面の外にあったバースデー・ケーキを取り出し、「未来のオペレーティング・システム」GNU/Linuxに誕生祝いを述べ、「自由を!」と言ってローソクの炎を吹き消す。

 漂っていたローソクの煙が薄れると、指についたクリームを舐めてFryは言う。「チョコレート味、世界で最も味のあるオペレーティング・システムだ」

そのほかの行事

 FSFのGNU Project記念行事はFryのビデオだけではない。「行事は1カ月間にわたる。このビデオを皮切りに、Software Freedom Day(9月20日)を経て、9月27日の誕生日までだ」(Brown)。Richard Stallmanのキャンペーンとイベントが少なくとも1回予定されている。

 Brownは、GNUプロジェクト記念行事にはいくつかの目標があると言う。

 第1は「GNUがどれほど広がっているか、どれほどのGNU(ソフトウェア)が使われているかを一般の人々に知ってもらうことだ。多くの人はGNUの新しい製品が次々に登場していることに驚くと思う」

 さらに重要なのは、Microsoftがフリーソフトウェア・コミュニティーにフリーソフトウェアがWindowsでうまく動くように表向き協力すると提案しているときであり、この記念行事はフリーソフトウェア運動の最終目的を再確認する絶好の機会だと言う。

 「いくつかのフリーソフトウェア・アプリケーションが人気を博しただけで、ソフトウェアの自由が達成できなければ、誰にとっても不幸なことだ。だから、このコミュニティーが掲げる目標はソフトウェアがMicrosoftプラットフォームでうまく動くという以上のものだということを思い起こしたい。これはそのための我々なりの方法なのだ。その目的はすべての人に使ってほしいフリーソフトウェアの完全な環境を作ることであり、最終的には、すべてのプロプライエタリー・ソフトウェアを置き換えることだ」

 この意味で、Brownは、この記念行事はGNUだけのものではないと言う。「我々は特定のプロジェクトの成功や普及を望んでいるのではない。GNUの普及活動は素晴らしいことだが、それは問題の一部でしかないことを認識しなければならない。我々は、協力して取り組むことによってのみ成功できるのだ」

Bruce Byfield コンピューター・ジャーナリスト。Linux.comによく執筆している。

Linux.com 原文(2008年9月2日)