Lindependence:町ごとLinux化を目指すイベントがカリフォルニアで開催
Starks氏はLIN08の動機について次のように説明した。「Microsoft Windowsのひどい悪夢に悩まされている人々を放っておくなんて冷たいじゃないか。ほんの少しの時間を用意してもっと簡単にできる方法を教えてあげれば良いだけだというのに。必要なことをコンピュータにさせるのにもっと簡単な方法があることを知らない人々に対しては、救いの手を差し延べる道徳的な義務がわれわれにはある」。
一方Cafiero氏は次のように述べた。「オペレーティングシステムは一つしか存在しない――AppleのOSとして台頭してきているOS Xも考慮すれば2つかもしれないが――という認識があることからも分かるように、人々がデジタル環境について持っている認識は根本的に事実とかけ離れている。アイスクリーム店ではバニラやチョコ以外の種類のアイスも選ぶことができる。車の販売店ではフォードやシボレー以外の種類の車も選ぶことができる。そのように生活のあらゆる局面において選択することが可能で、しかも選択肢がたった一つや二つに限られていないということは、自由の基本精神の一つだ。われわれのデジタル環境に対してMicrosoftはそこまで大きな支配力を持つべきではない」。
LIN08(Lindependence 2008)は、CDを配布したりLinuxへの移行を手伝うという案内をCraigslistに掲載したりするという方法などよりずっと野心的な試みだ。着想のもとになったのは、Starks氏が覚えていた、町を挙げて禁煙するという内容の1970年代の映画だった。このアイデアは2007年にTux Projectのフォーラム上で発表された後、様々な人々の貢献によって現実のイベントへと形作られた。当初プロジェクトには名前がなかったのだが、Stephen Rufle氏による提案である「Linux」と「independence(独立)」をくっつけた「Lindependence」という名称に落ち着いた。
Linuxの宣伝のためにそのような派手なパフォーマンスを行う理由についてStarks氏は「Christian Einfeldt氏を見習って、FOSSを売り込む必要がある。今はちょっとした派手さ、わくわく感、盛り上げなどが必要な時だと思う」と述べた。一方Cafiero氏はLIN08を単なるメディア向けの宣伝とは一線を画するものにしようとしている。「私がペンギン柄のパラシュートで飛行機から飛び降りても構わないが、そうしたところで単なるメディア向けの宣伝にしかならないだろう。LIN08はそうではなく、どちらかと言えばもっと長期的な効果を期待したものだ。今回Linuxを町の人々に紹介しようとしているわけだが、われわれはLIN08の後も人々がLinuxを使い続けることを願っている」。
これまでのところLIN08に向けての計画として4、5回のタウンミーティングやインストール大会などが予定されていて、最初の2回の開催日は7月13日と15日に決定している。LIN08についての最新情報はCafiero氏によるLindependence 2008 Felton日記やStarks氏のブログを見たり、Freenodeの #lindependence IRCチャンネルに参加したりすれば得ることができる。また運営グループでは各種イベントのライブビデオのフィードを用意したいとしている。なおプロの映画監督/作家であるChristian Einfeldt氏も、同氏が現在制作中のFOSS文化についてのドキュメンタリーThe Digital Tipping Pointの撮影のためにLIN08に参加する予定だ。
これまでの反省
イベントの準備開始前に気付くべきだったと思う点が何かないかとの質問に対してStarks氏とCafiero氏は、これまでの最大の反省点の一つとして、今回のイベントには拠り所となるべき単一のLinuxコミュニティがないという点を挙げた。Cafiero氏によれば「何か特定のディストリビューションやFOSSプログラムを中心としたコミュニティはあるかもしれないが、残念ながらそれらのコミュニティは――少なくとも今のところは――LinuxやFOSSを全体としてもり立てることができるほど一致団結してはいない」とした。各コミュニティはプロジェクトやディストリビューションやカーネルを中心として構築されているのだが、FOSSを促進しようと思う活動家が話をもちかけるべき包括的なコミュニティが確立しているわけではないという。とは言えありがたいことに、いくつかのディストリビューションやプロジェクトとそれらが抱えるコミュニティがすでに支援を約束していて、フェルトン住民に対するトレーニングに協力する予定とのことだ。Starks氏は「このイベントは特定のディストリビューションやベンダにはできるだけ依存しないようにするつもりだが、協力してくれるのであれば彼らの意見も尊重したい」とした。
またStarks氏には一点、今でも非常に後悔していることがあるのだという。「LIN08開催計画を最初に発表したとき、有名な大手Linuxディストリビューションのエグゼクティブから連絡があった。LIN08のアイデアに乗り気で喜んで資金提供すると申し出てくれたのだが、イベントでそのディストリビューションだけを使用して欲しいという条件もあったため、できる限り賢明に考えたつもりで断った。LIN08はコミュニティのためのものであり、特定のディストリビューションのためのものではないと感じたためだ。しかしもう一度やり直せるなら、LIN08の開催費用を完全に持ってくれるというのであれば、そのディストリビューションを使用することも良しとするだろう」。
一方これまでのところの成功点としてStarks氏は、NPR(ナショナルパブリックラジオ)で特集されるかもしれないことやFox Newsでの部分的な紹介など、全米規模の報道がある予定だという点を挙げた。また同様のイベントに挑戦したいと思っている町が他に現われるきざしもあって、すでにStarks氏もCafiero氏もLIN08と同じイベントを開催しても良いかという問い合わせを受けているのだという。このことについてCafiero氏は次のように述べた。「地元のコミュニティでLindependenceプロジェクトを開催することに興味がある人がいたら、できるだけ早いうちに是非相談してもらいたい。ちなみに町全体にこだわる必要はない――例えば地元の学校や学区など、GNU/LinuxとFOSSを有効に活用できる可能性があると思われるグループなら何でも構わない」。
Thomas Kingは大手コンピュータ企業のサーバ技術者。30年間に渡りコンピュータを使用している。FOSSを体験し始めてから7年が経過した。