Web会議ソリューションとしての高い将来性を期待させるOpen Source版Dimdim

 Web会議用のソリューションと言えばWebExやGoToMeetingなどのサービスが知られているが、本稿で紹介するDimdimはそうしたWeb会議の開催に必要となる機能を一通り取り揃えたソフトウェアである。現行のDimdimについては、機能が限定されたWebベースのFreeバージョン、年間料金制で機能制限のないEnterpriseバージョン、Open Source Community Editionという名称でEnterpriseをベースにクローン化したバージョンという3つのタイプが存在し、最後のバージョンはユーザ各自のネットワークにてホストすることができる。今回私がテストしたのはOpen Source版であり、イントラネットおよびインターネットの双方の環境にてWeb会議をホストしてみたが、ベータリリースである点を差し引くならばかなり高い完成度に到達していると評していいだろう。

 Open Source版Dimdimの開発は、ストリーミングメディアサーバ用のRed5、Webサーバ用のlighttpd、Webアプリケーションフレームワーク用のCherryPyといったオープンソース系コンポーネントの組み合わせで行われている。現行の最新バージョンは、プラットフォームに依存しないVMwareの仮想アプライアンスおよび、CentOS 4.5にて動作するよう調整されたネイティブのLinuxインストーラのいずれかを入手できる。このうちCentOSという指定はサーバディストリビューションにとって適した選択なのかもしれないが、使用可能なLinuxディストリビューションを限定するのは潜在的なユーザの多くを遠ざけているのではなかろうか。もう一方の仮想アプライアンスに関しては導入する際の障壁は低いものの、圧縮後のダウンロードサイズが1.3GBを越えているのがネックと言えるだろう。

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Dimdim

 入手したアプライアンスを実行するにはVMware Playerを別途ダウンロードしておかなくてはならない。なお同アプライアンスはDHCP経由でのアドレス取得を行うよう設計されているので、静的アドレスを指定したいユーザは、オンライン公開されているREADMEファイルにてそうした場合のログイン手順を確認して頂きたい。またこのオンラインドキュメントには、Dimdimの仮想アプライアンスに電子メール設定を施すためのガイドも掲載されている。こうした機能はWeb会議の開催案内を通知する際に重宝するはずだ。起動後のDimdimについては、特別なツールやアプリケーションを介することなくセッションを開始できるようになっており、後はWebブラウザ(推奨されるのはFirefox)さえ手元にあればWeb会議の開催および参加をすることができる。

Dimdimで何が行えるか

 通常、Dimdimセッションの開催者となったユーザはプレゼンタ(presenter)と呼ばれ、プレゼンタからは他の参加者に対して動画と音声のブロードキャストが行えるようになっている。こうしたプレゼンタは招待状の発送を始め、今回は出席をご遠慮願いたいユーザを待機させるための待合所(waiting area)を設けたり、音声ブロードキャストの権限を参加者側に与えるなど、会議運営に関する様々な権限も保持することになる。

 会議の参加メンバは全員に共通するテキストチャットエリアを利用することになるが、プレゼンタが事前に準備をしておけば個人間のプライベートチャットの場を設けることも可能だ。その他には、手書きでの説明に使うホワイトボードを全ユーザ間で共有するようにもなっている。またプレゼンタはPowerPointによるプレゼンテーションおよびPDFファイルを参加者に提示することもでき、Windows OSを利用しているプレゼンタの場合は、そのデスクトップを共有させることも可能である。

 プレゼンタは会議のセットアップ時に、参加者の最大数を設けたり招待状の自動発送を行える他、会議の実行形態(音声/動画、音声のみ、動画のみ、テキストのみ)を設定できるが、会議の開催途中でも各種の調整を施すことができるようになっている。例えばプレゼンタは開催時に会議の予定時間を指定しておかなければならないが、必要であれば会議の進行中にこの時間を延長することもできるのだ。ただしその他の設定に関してはセッション途中での変更を受け付けないものも存在しており、例えば会議の実行形態を音声のみと設定しておいた場合にこれを音声/動画に切り換えるには、現在のセッションをいったん終了させて新規にセッションを立ち上げ直さなくてはならない。

具体的な使用状況

 ここまでの説明でも分かるようにDimdimは非常に多機能な作りとなっている。私のネットワークで試した限りにおいて、MandrivaおよびWindowsの両環境にて実行させたVMware Player上の仮想アプライアンスは、いずれも問題なく利用することができた。これらの環境にて仮想アプライアンスが起動すると、手元のDHCP対応ルータからDimdimサーバにIPアドレスが割り当てられた後、ホストOSへの切り換えとFirefoxの起動が行われ、仮想サーバへのポイントという手順が進行していくのである。

 プレゼンタによる会議の開催手順および参加者としての会議への出席方法については、Dimdimのオンラインユーザガイドを参照して頂きたい。このガイドにも説明されているように、Dimdimでは、セッション開始前におけるプレゼンタに対するチェックおよび既存セッションに対する参加者の出席資格チェックが行われるようになっている。なおDimdimは基本的に補助ソフトウェアなしで動作するようにはなっているが、自分の画面を他の参加者と共有させる場合は、この時点で必要なプラグインを1つダウンロードするかの確認が行われるはずである。

 ただし今回私がこの操作を行おうとしたところ、ベータリリースでよく見られる典型的な不具合に遭遇することになった。それは、テストに使用していたマシンの1つにおいて会議情報を要求するページでFirefoxが固着するという現象で、新規の会議を立ち上げることも既存の会議に参加することもできなくなってしまったのだ。この問題については色々と試行錯誤させられたのだが、結局のところ私が独自にインストールしておいたFirefox機能拡張のいくつかがDimdimと衝突していたようであり、具体的にはWindows版におけるOrbit Downloaderとの統合用機能拡張および、Linux版とWindows版双方におけるLinkification機能拡張との相性が悪かったようで、Firebug機能拡張については特に問題ないようである。

 会議にログインしたすべての参加者とプレゼンタによるテキストメッセージの交換については、パブリックおよびプライベート形式のいずれにおいてもトラブルフリーで実行できている。次に私がプレゼンタとしてMandriva環境から実行したセッションにて、Linux互換のQuantum QHM500LM Webカメラを用いた動画のブロードキャストを試したところ、すべての参加者に動画は配信されたものの、音声については聴き取れないほど途切れがちな状態となってしまった。これはおそらくWebカメラに装備されたマイクの感度の問題だろうと判断した私はヘッドセットのマイクロフォンに切り替えたが、このマイクロフォンが拾う私の声はリスの鳴き声のようになってしまったので、次に別のマシンに移動したところ、今度は映画『トゥルーライズ』にてアーノルド・シュワルツェネッガーがボイスチェンジャを介して喋っていたような声になってしまったのだ。このヘッドセットはDimdimを介さない限りどちらのマシンでも正常に機能していたので何か別に原因があるのかもしれないが、最終的にAudio Technica製のATR-35S Lavalier Microphoneを試したところ、やはりMandrivaでは途切れがちな音声になるもののWindowsでは良好な音が拾えることを確認している。

 単純かつサイズの小さいPDFドキュメントとPowerPointのプレゼンテーションファイルおよび、プレゼンタの使用するWindowsデスクトップの共有は基本的に問題なく行えている。ただし細かい点に注目すると、ベータリリースには付きものである不具合のいくつかが、すべてのプラットフォームに共通して発生した。その1つは会議への出席および退出時にFirefoxがランダムにクラッシュするというもので、これは新規ユーザの参加時に発生することもある。また時折ホワイトボードの挙動が不安定になることもあり、この現象についてはプレゼンタと参加者が異なるプラットフォームを使用している状況で起こりやすいようだ。

 今回私が最大の失望を味わったのは、インターネット経由でのDimdim使用時に遭遇した出来事である。私の自宅には固定式IPアドレスを有さないDSLが引いてあるので、ここではDynDNSを用いて手元のDSLモデムをポイントするホスト名をセットアップし、このDSLモデムによってDimdimの使用ポートにおけるトラフィックをNetgearルータに転送させ、そこではNATを用いたDimdim仮想サーバへの送信が行われるという流れにしておいた。ただしこの場合、ネットワーク内のマシン群によるDimdimサーバへのアクセスを行わせるのであれば、/etc/hostsファイルを介したローカルループバックを行うのを忘れてはいけない。このセットアップに関する情報はDimdimのSourceForge.netフォーラムにて多数寄せられており、具体的にはDynDNSを使う場合のDimdim設定というスレッドが参考になるはずだが、既にこうした使用法をしている場合はDimdimサービス群のポート変更のスレッドも役立つだろう。

 このようにネットワーク上に集められた有用な情報を参考にした結果、ネットワーク外から参加するユーザ(他のISPを利用したDSL接続によるテストを実行)による新規セッションの立ち上げやネットワークのサーバ上でホストされた既存セッションへの出席はできるようになった。ところが何をどう設定しても、Dimdimによる動画/音声コンポーネントの接続は確立できなかったのである。同様の問題に遭遇したユーザは他にも多数存在しており、その他のトラブルについては豊富な情報の寄せられている各種フォーラムをあたっても、残念ながら現状でこの問題に関する具体的なソリューションは何1つ投稿されていなかった。

今後の展望

 このようにインターネット経由での動画/音声の配信に関する問題は残されているものの、Dimdimの最新版ベータリリース全般については高い将来性を感じさせる完成度に仕上がっている。また開発陣は現在、Linux環境におけるプレゼンタのデスクトップ共有を実装することを目指しているそうだ。実際の利用者側からの要望としては、プレゼンタから参加者に各種の権限を委譲できるようにして欲しいところで、例えばプレゼンタからの許可を得られた場合は参加者間でのデスクトップや動画の共有ができるようにするというのはどうだろうか。

 こうした1人のプレゼンタが残り多数の参加者を統括するという方式は1人の教師が多数の学生の相手をする学校の授業スタイルと通じる点が多いため、Dimdimはコンテンツ管理システムとの親和性が高いとも見なされている。例えばMoodleやClarolineなどのシステムにDimdimを統合したいという場合は、そうしたプロジェクト向けに必要な仕様に関するガイドが既に公開されているくらいだ。あるいは将来的には、個々のCMSにプラグイン形式で追加可能な機能拡張として提供されることになるかもしれない。

 現状のDimdimベータリリースについては本稿で取り上げたような完成度となっているのだが、これを“高い将来性を感じさせる”と捉えるか“現状では使い物にならない”と捉えるかは、インターネット経由で参加者が集まる会議をホストするという機能が、各自にとってどの程度の重要性を有すかによって変わってくるだろう。私個人の評価を述べると、ベータリリース段階であるにも関わらずDimdimの開発陣はかなりいい仕事をしていると感じているし、次回以降のリリースでは安定性と整合性を高めた上で更なる機能の追加が果たされることを期待する次第である。

Linux.com 原文