ソフトウェアのライセンス変更でコミュニティの心をつかんだDimdim

 Dimdimは、オープンソースのプラットフォームを利用した世界初のフリーWeb会議サービスを謳っている。ユーザはチャットやビデオ会議をしながら、参加者とデスクトップ環境とファイルを共有できる。もともとDimdimはMozilla Public License(MPL)のライセンス下にあったが、ある大学との間に大口案件が持ち上がった際、上層部の意向でGNU General Public License(GPL)に切り替えたのだった。ソフトウェアのライセンスをMPLからGPLに切り替えることで「コミュニティに我々の製品を使ってもらいやすくなった」とDimdim創設者のDD Ganguly氏は語る。

 Dimdimの創設メンバーたちはそれぞれ場所の離れたほかのプロジェクトから共同作業を行っていたので、ミーティングのような状況でファイルを共有してその内容について議論できる手段を必要としていた。「使えそうなものでコスト効率に優れたものは1つもなかった」とGanguly氏は話す。そこでメンバーたちは、そろそろ独自にWebベースの会議アプリケーションを作り出す頃合いだと判断した。「我々には2つのアイデアがあった。Web会議の機能をすっかり簡素化してしまうか、どんな組織でも使えるように価格を変えるかだった」

 Ganguly氏とチームのメンバーたちは、オープンソースのライセンス条件で自分たちの製品をリリースしたいと当初から考えていた。「Googleでデータベースを検索すると最初に表示されるのはMySQLだ。それはつまり、オープンソースによる大衆化のプロセスが機能しているということだ。我々は、自分たちのソフトウェアを誰もが使えるものにしたかった」

 DimdimがMPLによるライセンスから出発したのは、このプロジェクトには広く認知してもらうだけの価値がある、とGanguly氏が確信していたからだった。MPLは一般に「帰属ライセンス」と呼ばれている。すべての派生成果物には元のコードを提供したプロジェクトの名前を残すという要件があるからだ。

 「だがMPLや帰属ライセンスについては、一部から懸念の声が出ていた。そういう人々は商標化を目指す動きとして捉えているが、我々にそうした狙いはなかった。我々が意図していたのは、ただ自分たちのしていることに何らかの信用を与えることだった」

 信用を求める気持ちが収入を求める気持ちに負けたのは、Ganguly氏がスウェーデンのウメア大学(University of Umeå)とフィンランドのヴァーサ応用科学大学(Vaasa University of Applied Sciences)からDimdimの利用開始と有償サポートの申し出を受けたときだった。「我々は真夜中に起こされて、Dimdimを使いたいのだがMPLが気に入らないと言われた。MPLの利用に伴うマイナス面は、プラス面よりも大きいのだと悟った」

 オープンソース製品のマーケティングにおける最大の課題の1つは、取引相手が安定した会社であることを顧客に納得させることである。「オープンソースでどうやって稼ぐつもりなのか、とよく訊かれる。そんなときはJBossやRed Hat、そしてMySQLのような会社の話をする。スライドショーを引っ張りだしてきてオープンソースのやり方を説明するわけだ。顧客が知りたがっているのは、取引しようとしている会社が持続的なビジネスモデルを持っていて今後も事業を継続していけるかどうかだけなのだ」

 Dimdimはかなり注目されている、とGanguly氏は言う。「(オープンソースであることには)びっくりするほどの利点がある。我々のもとには、人々が求めている機能そのものについて膨大な件数のフィードバックが届いている。それに投資家たちのほうからやって来てくれるので、こちらから外に出て行く必要はなかった。もちろん顧客も集まって来る。以前、プロプライエタリな製品を扱う別の事業を立ち上げていた。ドットコム・ブームの全盛期だった。ちょうどその事業に取り組んでいる真っ最中だったのだが、知名度はまったくなかった。しかし、Dimdimを手掛けるようになって、Googleを見て驚くべきことがわかった。Dimdimのマーケティングをまったく行っていないアルゼンチンの人々が確かにDimdimを知っていて、はっきりとその名前で検索を行っているのだ。どういうわけか、アルゼンチンの人々は我々のことを知っている。こうした大衆化のプロセスが実際に機能しているのは、Dimdimがオープンソースだからだ」

 Ganguly氏は、仮に最初の頃に戻ってもう一度やり直せるとしたら、始めからGPLの下でDimdimをリリースするだろう、と語る。「ライセンスの切り替えは避けられなかった。実はMPLを使う必要などなかったのだ。法的な面で不十分なところはあるが、オープンソースといえばGPLという認識があるのは事実だ。その点を見落としていたのは、法律用語が重要だと思ってそちらに気を取られていたからだ。しかし結局のところ、それはあまり重要ではなかった」

Tina Gaspersonは権威あるいくつかの業界誌でビジネスおよびテクノロジ関連の記事を執筆している。1998年からフリーランスのライターとして活躍。

Linux.com 原文