Linux Foundation Collaboration Summitの価値

 現在、テキサス州オースチンでLinux Foundation Collaboration Summitが開催されている。招かれた出席者が約300人という小さなイベントだが、小さいからこそ面白いこともある。いま真ん前にすわっている誰か、自分と話をしている誰かこそ、Linuxカーネルやビジネスやオープンソースの世界でよく名前を聞く人物――たとえば、Ted Ts’o、Jon “maddog” Hall、Bruce Perens、Dan Frye、Larry Augustin――かもしれない。イベント会場になったテキサス大学のJ.J. Pickle研究センターは、1999年にIBM社が最初の「秘密」Linuxサミットを開催した場所としても知られている。IBMは、ここで同社のLinux戦略を社内的に発表し、細部を詰める作業を行った。

 昨日(4月8日)、「Linuxの現状」と題して、数人のLinuxカーネルハッカーによる今サミット最初のパネルディスカッションがあった。ディスカッション後の質疑応答で、聴衆から1人が立ち、Nortel社員だと自己紹介したのち、同社では交換機の1台をLinuxで動かしていて、その動作状況には満足していると述べた。ただし、Linuxを稼動させるのにカーネルにいくつかのパッチ当てが必要だったと言い、このパッチをメインストリームカーネルに取り入れてもらうことは可能か、またその方法は、と尋ねた。

 この問いかけに、パネリストからいくつもの回答があった。「終了後に個人的に話そう」とい言うカーネルハッカーもいたし、「採用に至るまでのプロセスに参加することが重要で、パッチをぽんと投げ出すだけで自動的に採用されると思ってはならない」とアドバイスするハッカーもいた。さらに別のパネリストから、類似のパッチがカーネルに適用されたばかりだ、という発言もあった。ただ、目的を異にするパッチだから、仕様的にNortel社の要求まで満たせるかどうかはわからず、やはり参加してもらうことが重要だ、と述べた。

 Nortel社員の質問と、それに返された答えの数々こそ、サミットの価値を如実に示すものだろう。技術的にきわめて高い水準にありながら、Linuxカーネル開発のプロセスや習慣を知らないユーザは多い。そういう人が正しい相手に正しい質問をして、正しい答えをもらえる場が、このサミットだ。プロセスへの参加とコラボ――それがこのNortel社員の必要としていた答えだった。

 サミットは明日までつづく。ビジネス関係者とハッカーを引き合わせ、それぞれが相手に何を望み、何を願い、何を求めるかをぶつけ合ってもらうことが、生産的な協力体制を築き上げていくための第1歩となる。

Linux.com 原文