5つの消費者団体が特許改革法案を支持――賠償額算定方法や異議申立制度を高評価――全米最大の労働組合AFL-CIOは法案への反対を表明

 米国の特許制度を全面改訂する法案に5つの消費者団体が支持を表明した。損害の度合いに応じた賠償額算定方法や、特許付与後の異議申立制度が支持の理由だとしている。

 特許改革法案(Patent Reform Act of 2007)は、一部の労働組合や零細発明業者、小規模ITベンダーから反対の声が上がっているものの、早ければ今週中に下院で投票が行われる見通しだ。

 今回、同法案への支持を表明したのは、米国消費者連合、電子フロンティア財団(EFF)、ナレッジ・エコロジー・インターナショナル(KEI)、パブリック・ナレッジ、米国公共利益調査グループ(US.PIRG)の5団体。これらの団体は8月31日、米国連邦議会のリーダーらに書簡を送付、その中で次のように訴えている。

 「現行の特許制度は、特許の乱発を促し、特にソフトウェアとオンライン・サービスの分野で訴訟のリスクとコストを肥大化させかねない多数の欠陥を露呈している」

 5団体は特許改革法案を2つの点から高く評価している。1つは、損害の配分に応じて賠償額を算定するという仕組みだ。

 現行法の場合、製品のごく一部が特許を侵害するケースでも、裁判所は一般にその製品全体の価値を判断して賠償額を決定する。これに対し改革法案の支持派は、侵害部分の価値だけに基づいて賠償額を決定することを求めている。配分条項を設けることで、「裁判所は、特許所有者が実際に被った損害の価値を参考にして賠償額を制限できるようになる」と各消費者団体は主張している。

 消費者団体が評価するもう1つの点は、特許の付与後に異議を申し立てられる新たな仕組みである。審議中の特許改革法案には、米国特許商標局(USPTO)の付与後1年以内であれば異議を申し立てることができる「付与後異議申立制度(Post-Grant Review)」が盛り込まれている。「すぐに訴訟を起こさなくても、付与後の特許の有効性を比較的安く迅速に確認できる」(消費者団体の書簡)

 MicrosoftやIBM、Cisco Systemsなどの大手ITベンダーも、同法案を支持している。同社らは、ごく軽微な侵害に反応して巨額の賠償金をせしめようとする特許所有者が後を絶たないことから、以前より特許制度の改革を訴えてきた。

 一方、米国最大のアメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)を含む3つの労働組合は、同法案への反対を表明している。

 例えば全米鉄鋼労組(USWA)は、7月下旬に議会のリーダーらに送付した書簡の中で、米国における特許の70%近くは製造業から申請されたものだと指摘。「法案が可決されると、特許付与後の訴訟合戦が頻発し、米国の特許所有者がくだらない訴訟にさえ敗訴しかねない」と述べている。

 Motorola、SanDisk、Texas Instrumentsといったベンダーから成る「The Coalition for 21st Century Patent Reform」も、同法案に反対の意を表明した。同連合の広報担当であるビル・マシェク氏は今月初め、「多数の上院議員と連邦議会の議員が法案に懸念を表明しており、もっと詳細を詰めていくべきだと考えている」と語った。

 なお、上院司法委員会では同委員会独自の特許改革法案を承認した。今後、上院全体で諮問されることになっている。

(グラント・グロス/IDG News Service ワシントン支局)

提供:Computerworld.jp