このハードウェアはLinuxで使えるだろうか?――その調べ方
確かに、GNU/Linuxのハードウェア・サポートはここ10年で劇的に向上し、今では、どのコンピューター・システムでも、お好みのディストリビューションがそのまま動く可能性は大いにある。とはいえ、まだ対応できていないハードウェアも多く、購入する前に調べておくのが賢明というものだ。
また、サポートされているのが当然のハードウェアも多くなった。マザーボード、ハード・ドライブ、キーボード、マウス、ネットワーク・カード、DVDドライブ、フラッシュ・ドライブの多くは、GNU/Linuxでも問題なく動作する。しかし、ドライブに付いているボタンではなくソフトウェアで操作するタイプのハードウェアについては注意が必要だ。操作のためのソフトウェアがWindowsあるいはMac OS Xを前提に設計されていると思われるからだ。もっとも、ちょっと考えれば、その種のハードウェアは却下することになるだろう。たとえば、ソフトウェア駆動型DVDドライブの場合、そのDVDからシステムを起動するには何度かリブートを繰り返すことになるのだから。
このように状況は改善されているものの、ハードウェアが使えるかどうかは、多くの場合、依然として賭だ。ウェブ・サイトはもとより、パッケージにGNU/Linux対応を明記しているメーカーはほとんどなく、インターネットが唯一の情報源になるからだ。ウェブを検索すれば数十件の情報が見つかるだろうが、その多くは古いか不完全で、整理するには長い時間が必要だ。しかも、正確には専門家にしかわからない業界用語満載でちんぷんかんぷんなものも少なくない。
そこで、カードや周辺機器に関する最新情報が得られるサイトをまとめてみた。掲載されている情報は漠然としたものから網羅的なものまでさまざまだが、私の知る限り最も簡潔にして充実した情報源である。
ビデオ・カード
特定のビデオ・カードがサポートされているかどうかについて調べる場合、情報源は2種類ある。フリー・ドライバーについてはX.orgのサイトにある 対応カード一覧 、プロプライエタリー・ドライバーについては各メーカーのサイトだ。大概は、ビデオ・カードのトップ・メーカー2社、NvidiaとATI(現AMD)のプロプライエタリー・ドライバーを調べることになるだろう。Nvidiaのカードについては、 Nouveau プロジェクトがフリー・ドライバーを開発しているので、ここも情報源の1つになる。また、 Avivo プロジェクトがATIのR500/R600シリーズのためのフリー・ドライバーを開発しているが、まだ成果は出ていない。
それでは、フリー・ドライバーとプロプライエタリー・ドライバーの両方があるとき、どちらを採用すべきだろうか。フリーソフトウェアの理念に準ずる人もいようが、大方は、サポートされている機能を考慮するだろう。概して言えば、ATIやNvidiaのカード向けフリー・ドライバーは3Dをサポートしていないことが多い。一方、ATIのプロプライエタリー・ドライバーは遅くてバグだらけ、Nvidiaのものは速いが品質にばらつきが多い。要するに、十分に満足できるものはないということだ。
もう一つ、使用予定のディストリビューションがどのようなドライバーを提供しているかも考慮すべきだ。LinspireやXandrosなどの商用ディストリビューションでは、プロプライエタリーのドライバーを提供していることが多い。一方、Ubuntuでは基本的にフリー・ドライバーを使うが、同梱されているRestricted Drivers Managerを使えばプロプライエタリー・ドライバーをインストールするのも容易だ。Debianの場合はリポジトリーにプロプライエタリー・ドライバーを扱うコーナーがある。Fedora 7は、Nvidiaカード向けのフリーNouveauドライバーを早くから提供している、といった具合だ。提供されているのがどのようなドライバーであるにしても、使用を予定しているディストリビューションの標準パッケージ形式やリポジトリーで提供されているものを使うのが一番の早道だろう。
サウンド・カード
サウンド・カードの利用者向けに十分な情報を掲載しているサイトはなく、あちこちを調べることになる。まず、Linux Soundに、簡潔にまとめられた GNU/Linuxで使えるサウンド・カードの概要 がある。メーリング・リスト Linux Audio Developers を探してみるのも一法だ。
現在流通しているディストリビューション向けにサウンド・サポートを提供するプロジェクトAdvanced Linux Sound Architectureの Soundcard Matrix も有用な情報源だ。この表は wiki に移行中で、2007年5月5日を最後に変更されていない。しかし、この原稿執筆時点では移行はまだ完了していないため、暫くは、この古い表を頼ることになる。開発者向けのため各ドライバーの詳細な情報があるが、一般利用者にとっては特定のカードが掲載されているかどうかが最大の問題だ。記載があり、備考欄にサポート状況に関する記述のないドライバーは、現在流通しているディストリビューションであれば、使えるだろう。
プリンター
PostScriptに対応しているプリンターは、少なくとも基本機能は使える。これはHewlett-Packardのフリー・ドライバーのお陰だ。購入に先だって詳細な情報がほしい場合――特に複合機の場合――は、Linux FoundationのOpenPrintingプロジェクト(旧LinuxPrinting.org)による Printer Compatibility Database がお勧めだ。
プリンターに関する情報源としてはこのデータベースはほぼ完璧で、ほとんどのプリンターが掲載されており、モデル、メーカー、ドライバーで検索可能。各モデルに対するサポートは、Perfectly(完全に使用可能)、Mostly(ほぼ完全に使用可能)、Partially(ほぼ使用不可)、Paperweight(完全に使用不可)という4段階で簡易表記されている。プリンターごとに使用可能なドライバーに関する情報があり、詳細な構成法、サポートされる解像度、利用者の意見なども記載されている。このデータベースとは別に、 Suggest Printers というページもある。カラー・インクジェット機、モノクロ・レーザー機、カラー・レーザー機、高性能レーザー機別に、要件と予算に応じた推奨メーカーとモデルが示されている。これは主としてOpenPrintingフォーラムでの報告を基にしているため、フォーラムを調べればより詳しい情報が得られる。
スキャナー
プリンター複合機のスキャン機能については前出のPrinter Compatibility Databaseにも情報があるが、あらゆる種類のスキャナーについてとなると、主な情報源はSANEプロジェクトの Supported Scanners Search Engine になる。これを見れば、特定のスキャナーがGNU/Linuxで使えるかどうかがわかる。対応状況の説明は、2~3年以上前のものでは若干詳しい説明のあるものが多いが、大概は完全対応か未対応のいずれかで、素っ気ない。検索フィールドにはドロップダウン・リストがなく、メーカー、モデル、製品IDを直接入力しなければならない点も欠点だ。さらに詳細な情報がほしい場合は、SANEプロジェクトのフォーラムを調べることになる。
デジタル・カメラ
最近出回っているほとんどのデジタル・カメラは、かつてのような独自形式をやめてオープンUSBプロトコルを使っているため、GNU/Linuxでサポートするのは容易になった。しかし、例外もあるため調べておいた方が無難だ。 gPhoto はカメラのサポートに必要となる主要なライブラリーをフリーで提供しているプロジェクトだ。ここで914機種に及ぶカメラのサポート状況がわかる。ほかに、Hubert Figuiereの Digital Camera Support for Unix, Linux and BSD も有用だ。サポートされているカメラに関する詳しい情報のほか、構成方法、サポートされていない機能、サポートでの問題点についての記載もある。どちらのサイトも、検索可能なデータベースではなく、一覧表だ。
ワイヤレス・カード
数年前まで、サポートが大きく遅れていたハードウェアといえばモデムだった。今日では、ワイヤレス・ネットワーク・アダプターがその状態にある。新しいモデルが次々に登場することもサポートを困難にしている。同じモデルのはずなのにファームウェアが異なるカードがあり、別のドライバーが必要な場合さえあるのだ。
ワイヤレス・サポートの状況については、Jean Tourrilhesが維持管理しHewlett-Packardが資金を提供している Wireless LAN Resources for Linux が最も有用だ。サポートに関する問題点や経緯に関する最新情報もある。記述は雑然としているが、辛抱強く調べれば有用な情報が見つかるだろう。
使用予定のワイヤレス・カードがサポートされていなかった場合でも、ndiswrapper(Broadcomカードの場合はbcm43xx-fwcutter)を利用すれば使える可能性がある。どちらも、WindowsまたはMacドライバーのリソースを利用して、それがサポートするカードをGNU/Linuxで動かそうというプロジェクトだ。
しかし、これらのプログラムにはどちらにも大きな欠点があり、lspciコマンドを使ってカードのバスIDを調べなければ、サポートされているかどうか確かなことはわからない。したがって、カードを購入する際は、それに類似のカードがどれくらいndiswrapperでサポートされいているかで判断するほかはない。
ノートパソコン、モバイル機器
ノートパソコン、音楽プレーヤー、携帯電話、PCMCIAカードなどのモバイル機器については、 Tuxmobil に情報がある。複数のPDF文書に分散しており、情報の詳細さや品質はまちまち、多くはディストリビューションごとにも異なる。しかし、若干の検索と創意工夫により有用な情報が得られる可能性が高い。
その他の情報源
以上のサイトを調べても必要な情報が得られなかった場合は、使用予定のディストリビューション向けに開設されているメール・フォーラムやIRCチャネルで尋ねてみよう。問題のあるハードウェアを動かす方法について具体的に手取り足取り教えてくれたり、そのハードウェアに関する調査法や構成法を気軽に指導してくれることが多い。
また、使用予定のディストリビューションは違っても、DebianやFedoraなどの大規模ディストリビューション向けのフォーラムを検索してみるとよい。大規模ディストリビューションのフォーラムは情報が多いため、何かと役に立つ。この方法の欠点は情報が多すぎて検討しきれないこと、そしてファイルの場所を実際に使う予定のディストリビューションに合わせて読み替える必要があることだ。
Linux Hardware.org や Linux Devices なども見ておこう。こうしたサイトでは、GNU/Linuxでのハードウェアの動作について定期的にレビューを掲載している。通常網羅的な情報ではないが、運良く、現に必要としている情報が見つかるかもしれない。
利用者の評価によって、使えるハードウェアのリストを作ろうというサイト Hardware4Linux も、将来、有用な情報源になるだろう。しかし、今のところは、寄せられた情報が1200件、評価は5300件足らずしかない。現時点では、利用者が投稿したコメントが最も役立つ情報かもしれない。
出来合いのシステムを買う場合は、使用を予定しているディストリビューションのライブCDを持って店に行ってみよう。本当に買う気があることを店員に話せば、店員の多くは、たとえライブCDについて何も知らなくても、試用させてくれるだろう。ライブCDで得られるパフォーマンスなどの情報から大概のことはわかるはずだ。
こうした情報源を利用すれば、適当にハードウェアを購入しGNU/Linuxを動かしてみるという賭けをしなくても済むはずだ。当然のことながら、ここで紹介した以外にも役立つサイトがあるだろう。ご存じの方は、この記事にコメントを書き、補足してほしい。
Bruce Byfield コンピューター・ジャーナリスト。Linux.com、IT Manager’s Journalの常連。
Linux.com 原文