OSAのCommon Customer Viewによる相互運用性の向上

 サンフランシスコ発 ― 昨日(7日)のLinuxWorldでOpen Solutions Alliance(OSA)がプロトタイプアプリケーションを披露し、オープンソースアプリケーション間の相互運用性の向上を実演してみせた。このCommon Customer View(CCV)のプロトタイプは、JasperSoft、Centric CRM、Adaptive Planning、TalendをはじめとするOSA会員組織によるオープンソース製品間でデータの統合を行うものだ。CCVには、SpikeSourceが手がけ、Open Source License(OSL)の下でリリースされた新しいシングルサインオン(SSO:Single Sign-On)機能も含まれる。

 CCVはOSAの提案を実現したプロトタイプであるため、OSA会員(とその他一部の組織)は動作コードを使ってOSAの提案内容を評価することができる。

 SpikeSourceでディレクタとしてプロジェクト管理を担当し、OSA理事会の会長も務めるDominic Sartorio氏は、相互運用性の問題はオープンソースを“採用する際の大きな障壁”になっている、と語る。顧客が求めているのは単独のオープンソースアプリケーションではなく包括的なソリューションだ、と彼は言う。顧客は、組織のビジネスニーズに合致した単独のソリューションを構築するために、コンテンツ管理システム、CRM(Customer Relationship Management)アプリケーション、モニタリングアプリケーションなど、その他多くのアプリケーションを必要とする。こうしたタスクのすべては質の高い多くのオープンソースアプリケーションによってカバーされているが、それらの間には十分な相互運用性がない。顧客データは複数のアプリケーションにわたって存在していることがあるため、ユーザ側では別々のアプリケーションで複数のサインオンを管理するといったことが必要になる。企業ではアプリケーション間の連携を可能にするために多額の費用をかけなければならないことがあり、そうなれば初期コスト面でのオープンソースの利点は失われてしまう。

 CCVのようなプロジェクトは、OSA会員が利用すべきベストプラクティスの創出を容易にする、とSartorio氏は語る。CCVのようなプロジェクトに協力して取り組むことで、会員組織は実際に活動を行いながらベストプラクティスを見つけ出すことができるからだ。さらに「目指すべき方向について意見がまとまれば、その採用の推進はずっと容易になる」とSartorio氏は述べる。

 JasperSoftの最高技術責任者(CTO)でOSAの相互運用性委員会の議長でもあるBarry Klawans氏は、CCVのプロトタイプによって企業資源計画(ERP:Enterprise Resource Planning)、顧客資源管理(CRM:Customer Resource Management、予算管理などが1つにまとめられ、すべてのアプリケーションで同じデータを共有できるようになる、と話す。

 こうしたアプリケーション群は今や同じデータを共有するだけでなく、それぞれの更新が即座に反映されるようにもなっている。Klawans氏は、あるアプリケーションで顧客データが変更されるとその内容がその他のアプリケーションにすぐに反映されるわけだが、こうした機能はこれまでオープンソースのアプリケーションどうしでは行えなかった、と説明する。

 プロトタイプに過ぎないとはいえ「そうしたければ現時点でCCVを導入することも可能」だが、「まだ評価用なので、システム間でのデータ共有の手法が体系化されていないことに注意が必要」とKlawans氏は述べている。別の解析システムやCRMシステムを導入する必要があったとしても「CCVとの連携は難しい」とのことだ。

 また、CCV本体もすっかり完成しているわけではない。足りない部分の1つが(計画書には「できれば実現したい」と記されていたが)、すべてのアプリケーションでの外観の統一である。Sartorio氏によると、開発グループ側に時間がなかったため、今回のプロトタイプのリリースには間に合わなかったそうだ。

 将来的には、あるタイプのアプリケーションを顧客が別のものに入れ換えられるように、OSAは“その他のアプリケーション”とCCVとの接続を容易にしたいと考えている、とKlawans氏は語る。

 Linux Foundationなど他の組織との協力はないのだろうか。この点についてKlawans氏は、Linux Foundationとの間には公式な協力関係がないが、それは2つの組織が同じ問題の別々の部分に注力しているからだ、と述べている。Linux FoundationがLSB(Linux Standard Base)を通じて、さまざまなアプリケーションをすべてのLinuxディストリビューション上で確実に動作させるための規格に取り組んでいるのに対し、OSAはそうしたアプリケーションどうしの連携に重点を置いている。「Linux Foundationと我々は、問題を2つに分け、それぞれの解決を試みようとしている」

 またKlawans氏は、OSAではLinux以外にも目を向けており、Windows用のオープンソースアプリケーションどうしの連携にも関心がある、と指摘している。オープンソースアプリケーションは概してLinuxを対象にしているが、ユーザは最初にWindows上でアプリケーションを試すことが多く、Windowsでアプリケーションのダウンロードや評価を行うからだ、と彼は言う。

 CCVをリリースした後のOSAの予定についても尋ねてみた。「我々は相互運用性のフォーラムで多数のプロジェクトが相次いで立ち上がる」ことを期待している、とKlawans氏は答えた。現在、OSAでは、Webアプリケーションを対象としたシングルサインオン、管理およびモニタリング、データ統合の規格、一般的調査の提案など、相互運用性に関する5つの提案が挙がっている。

Linux.com 原文