Microsoft、「ソフトウェア+サービス」の具体的ビジョンを披露――対応ハードウェア/ソフトウェア・フレームワークの開発に注力

 米国Microsoftは7月26日、同社の「ソフトウェア・プラス・サービス」のビジョンについて、これまでで最も明確な例を交えながら詳細に解説した。

 Microsoftのチーフ・ソフトウェア・アーキテクト、レイ・オジー氏は、同社の年次金融アナリスト向け説明会で、「ソフトウェアからソフトウェア・プラス・サービスへの転換は、われわれにとってきわめて大きな取り組みだ」としたうえで、「この転換は今後数年にわたって、われわれのすべての製品に重大な影響を与えるだろう」と強調した。

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米国Microsoftのチーフ・ソフトウェア・アーキテクト、レイ・オジー氏

 オジー氏によると、ソフトウェア・プラス・サービスは、Windowsオペレーション環境の場合であれば、例えばデバイス設定を保存するサービス・コンポーネントといったかたちで提供されることになるという。こうしたサービスが実現されれば、さまざまなデバイスから同じアプリケーションにアクセスすることが容易になるほか、新しいデバイスを購入する際にもに設定の手間を省くことができる。

 またオジー氏は、Officeを購入したユーザーは、Officeアプリケーションとともに、パブリッシング、共有、編集といったホステッド・サービスを利用できるようになる可能性があると語った。

 オジー氏によると、Microsoftは現在、すべてのソフトウェア製品でソフトウェア・プラス・サービスのビジョンをサポートできるようにするためのハードウェア/ソフトウェア・プラットフォームの構築に精力的に取り組んでいるという。

 Microsoftは今年、このサービス・フレームワーク作りに集中する方針で、その後1年から1年半の間に、新しい主要コンポーネントのリリースを開始するという。

 このサービス・フレームワークは、Microsoftの大規模データセンター群と、それらをインターネットに接続するネットワークを土台に構築される。同社はこの1年でデータセンターの規模を2倍に拡張しており、来週からは、テキサス州サンアントニオで新データセンターの起工に入る、とオジー氏は語った。

ユーティリティ・コンピューティング・ファブリックを構築

 同氏によると、これらの土台の上に、ユーティリティ・コンピューティング・ファブリックといった最も基盤的なレイヤを構築する。このファブリックは、仮想化コンピュテーション・レイヤ、アプリケーションの負荷分散を管理するインフラ、水平的な拡張が可能なストレージから構成される。

 また、このプラットフォームには、アプリケーション間で共有できるサービス・レイヤが含まれる。そうしたサービスには、アイデンティティ・サービス、在席情報管理、連絡先管理などがある。

 オジー氏は、このプラットフォームはMicrosoft社内で、Windows Liveなどの自社サービスの運用にも使われるが、パートナーもこのプラットフォームを利用して、Microsoft製品と連携する自社アプリケーションを運用できるようになると説明した。

 さらに、このプラットフォームは、企業アプリケーションの運用もサポートし、企業が複数のサービス・モデルのいずれかを選択できるMicrosoftのソリューションの一部になる。「こうした選択肢は、Microsoftにとって大きな差別化につながる」(オジー氏)

 同氏によると、このソリューションでは、企業は次のような選択が可能だ。(1)Microsoftのサーバ製品を購入する。この場合、企業は徹底したカスタマイズ、管理、コンプライアンスを行うことができる。(2)特定分野で独自のノウハウを持つサードパーティ企業のホステッド・サービスを利用する。(3)Microsoftのホステッド・サービスを利用する。

巨大なインストール・ベースとサービス提供経験、
資金力を駆使してホステッド・サービス市場を席巻する

 オジー氏が紹介したようなホステッド・サービスは、他社もすでに提供している。例えば、Googleは、消費者向けと企業ユーザー向けの両方のホステッド・サービスを多数提供中だ。だが、Googleの企業向けサービスについては、必ずしも企業ユーザーが利用しやすいサポートが提供されていないという批判も多く聞かれる。

 オジー氏は、Microsoftは、そうした点で有利だと強調する。「われわれは、消費者から企業まで幅広い層の顧客を抱えており、サービス機会に対する理解と対応、そして、それをビジネスに結び付けることについては、ほかに並ぶものはない」

 またオジー氏は、Microsoftは、現在の市場環境の大きな変化を利用するために必要な資金力を持っている数少ない企業の1社だと強調した。

 Microsoft製品のインストール・ベースの大きさも、競合他社に対する同社の強みになる可能性が高い。「われわれはインストール・ベースの大きさを自覚し、ユーザーに不都合を感じさせることなく、ソフトウェアとサービスを堅実に発展させている」(オジー氏)

 それでも、MicrosoftもGoogleもそのほかの新興企業も、この分野ではまだ実験的なレベルを脱していない、とオジー氏は指摘する。同氏は、Microsoftのすべての開発者が、先行するライバルのビジネスを奪うということではなく、「いかにサービスを利用して市場機会を得ることができるか」ということに注力しているという。

(ナンシー・ゴーリング/IDG News Service シアトル支局)

米国Microsoft
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提供:Computerworld.jp