Adobe、「Apollo」のベータ版をリリース――正式名称を「AIR」に、Flashアプリ開発環境「Flex 3」のベータ版も提供開始

 米国Adobe Systemsは6月11日、これまで「Apollo(開発コード名)」と呼んでいたアプリケーション実行環境のベータ版をリリース、正式名称を「Adobe AIR(Adobe Integrated Runtime)」としたことを明らかにした。同時に、Flashアプリケーション開発環境「Flex 3」のベータ版の提供も開始している。

 Adobeの製品マネジメント/開発者関係担当バイスプレジデント、ミシェル・ターナー氏によれば、同社がWebおよびデスクトップの両方で動作するリッチ・インターネット・アプリケーション(RIA)のプログラミング・モデルとランタイムを同時発表したのは、今回が初めてのことだという。

 FlexとAIRを合わせて利用することで、「Adobe Dreamweaver」「Flash」などのツールを用いてリッチなマルチメディア機能を持つインターネット・アプリケーションを開発するデザイナーは、コードを書く開発者と、より緊密に連携できるようになる。

 現在、同分野をリードしているのはAdobeだが、MicrosoftもFlash対抗のWeb技術「Silverlight」と組み合わせて利用できる「.NET」ランタイム・バージョンを提供するなど、攻勢を強めつつある。Silverlightは、各種ブラウザ上で映像およびマルチメディア・アプリケーションを再生するクロスプラットフォーム対応のプラグインだ。

 AIRおよびFlex 3のベータは、Adobeのhttp://labs.adobe.com/technologies/からダウンロードできる。

 AIRを利用すれば、開発者はFlashだけでなくHTMLやAjax、その他のWeb開発言語で開発したアプリケーションを、ユーザーのデスクトップ上でローカルに動作させることができる。Flexは、AIR対応アプリケーションを開発できる開発環境だ。

 AIRでは、デスクトップ環境にランタイムという“覆い”をかぶせることで、既存のWebアプリケーションから取得したコードを、デスクトップ上に効率的に転送し、実行させることが可能になる。開発者は「Flex Builder」を使用して、WebアプリケーションのコードをAIRランタイムに転送することができる。

 Webブラウザ上でFlashアプリケーションを実行するFlashプレーヤーと同様、AIRランタイムをローカルで動作させるには、デスクトップにインストールするか、アプリケーションに直接埋め込む必要がある。

 AIRのベータ版では、HTML、Ajax、Javascriptのサポートや、PDFをAIRアプリケーションに統合する機能が強化されている。また、Dreamweaverとの連携も強化され、開発者がDreamweaverアプリケーションに手を加えることで、容易にAIRを搭載したデスクトップ上で動作させることができるようになった。

 一方、Flex 3のベータ版では、Web、マルチメディアおよび画像の設計制作ツール「Creative Suite 3」との統合性が高められたほか、開発中のアプリケーションのパフォーマンスを分析し、動作の遅い部分を最適化・高速化する方法を特定する新たなツールも追加された。

 さらに、Flex 3を利用して開発されたアプリケーションがより高速に動作するよう、ファイルのサイズを縮小している。

(エリザベス・モンタルバノ/IDG News Service ニューヨーク支局)

米国Adobe Systems
http://www.adobe.com/
「Adobe AIR」のサイト
http://labs.adobe.com/technologies/air/
「Adobe Flex」のサイト
http://labs.adobe.com/technologies/flex/

提供:Computerworld.jp