Adobe、RIA分野の新戦略を明らかに――Media Playerベータ版の公開や、Webアプリ・ベンダーの買収などを一挙に発表
Adobe Media Playerは、無料で利用できるソフトウェアである。AdobeでFlash担当グループ・プロダクト・マネジャーを務めるジェン・テイラー氏によると、 Adobe Media Playerの正式版は、2008年3月のリリースを予定していたが、現在の計画では、2008年6月末のリリースになる見通しだという。
Adobe Media Playerは、YouTubeなどで採用されているFLV(Flash Video)形式のビデオ・ファイルが再生できる。ストリーミング再生したり、いったんコンピュータにビデオを保存し、あとでオフライン再生したりすることも可能だ。なお、Windows版とMac OS X版が提供される予定だという。
また同社は、CBS、PBS、Yahoo!、Blip.TV、フォラTV、メレディス、モーションボックス、マイトゥーンズ、STIMTVなど、多数のコンテンツ・ベンダーと提携したことも明らかにした。
これらのコンテンツ・ベンダーは、Adobe Media Playerに対応するコンテンツを、無料で提供するという。Adobeは、コンテンツ・ラインアップを充実させることで、同ソフトウェアに対する需要が拡大することをねらっている。
なお、コンテンツ・ベンダーから無料で提供されるコンテンツには、広告も含まれるようだ。広告はコンテンツの再生前/後に表示されたり、 コンテンツ再生中にバナー広告が表示されたりといった形で提供されるという。
調査会社IDCでアナリストを務めるメリッサ・ウェブスター氏は、Adobe Media Playerを以下のように評価している。
「Adobeは現在、Webブラウザ上でビデオを再生できる『Flash Player』を提供している。Adobe Media Playerは、同社のRIA戦略の足りない部分を補完するものだ」
NPDグループでアナリストを務めるクリス・スウェンソン氏によると、 デスクトップ・メディア・プレーヤ分野でいちばん普及しているのは、Microsoftの「Windows Media Player」だが、Appleの「QuickTime」や、RealNetworksの「RealPlayer」も数1,000万人のユーザーを擁しているという。
Adobe Media Playerの強みは、Flashビデオの再生が容易なことだ。他社のプレーヤでFlashビデオを再生する場合、ユーザーは特別なコーデック・ファイルをダウンロードし、インストールしなければならないケースが多い。しかし、Adobe Media Playerを利用すれば、そうした手間は不要だ。
またAdobeは同日、Webベースのワープロ・ソフトウェア「Buzzword」を開発/提供する米国バーチャル・ユビキティを買収したことを明らかにした。
さらに複数のユーザーがオンライン上でドキュメントを共有/編集し、そのコンテンツをWikiやWebページで公開できる新サービス「Share」のベータ版もリリースした。
IDCのウェブスター氏は、「Adobeはワーカー・コラボレーション・ツール分野へ積極的に参入しているが、将来的に複数の市場で、Microsoftと競合することになる」と指摘する。同氏によると、その最たるものは、複雑なコラボレーション・ソフトウェアの購入/導入に必要な予算やIT部門がない、中小規模企業市場だという。
BuzzwordがWeb会議アプリケーション「Adobe Acrobat Connect」のような既存ツール群に加わることで、同社は同分野において、Microsoftよりも一歩リードすることになりそうである。
Buzzwordで作成された文書は、RTFやWord形式にエクスポートすることが可能。Adobeによると、将来的にはPDF(Portable Document Format)やODF(OpenDocument Format)形式のサポートも計画されているという。
Adobeで製品管理ディレクターを務めるエリック・ラーソンは、BuzzwordとShareを無料で提供する予定であることを明らかにした。
なお、IDCのウェブスター氏は、Adobeがこれらソフトウェアを無料で提供することは、AdobeのSaaS戦略の一環だと指摘したうえで、以下のように分析している。
「AdobeはSaaSをはじめとするRIA分野に取り組み始めたばかりだ。今後同社は、さまざまなサービスや機能を提供するだろう。今回の発表は、その第一歩のようだ」
(エリザベス・モンタルバノ/IDG News Service ニューヨーク支局&エリック・レイ/Computerworld オンライン米国版)
米国Adobe Systems
http://www.adobe.com/
提供:Computerworld.jp