Adobe、次世代アプリ実行基盤「Apollo」のアルファ版をリリース――最終版のリリースは今年後半に

 米国Adobe Systemsは3月19日、現在同社が開発を進めているマルチプラットフォーム対応のアプリケーション実行環境「Apollo」(開発コード名)のアルファ版を同社の「 Adobe Labs 」サイト上に公開、開発者への無料提供を開始した。

 同社によると、同技術はリッチなインターネット・アプリケーションのオフライン実行を可能にするもので、「Java」や「.NET」といった人気の高いプログラミング・プラットフォームを代替することもできるという。

 同技術には、Apolloアプリケーションの開発や利用に用いるコマンドライン・ツールセットなどの無料ソフトウェア開発キットが含まれており、 Adobe Labsサイトからダウンロードできる。アプリケーション開発に際しては、Web開発者が任意に選んだアプリケーション開発環境(IDE)を使用できると、Adobeは説明している。

 Apolloは、Flash Playerと同様、実行環境を提供するが、HTML、Flash、Ajaxといった一般的なインターネット開発技術で開発されたアプリケーションをオフラインで実行することができる。

 Adobeの上級副社長兼最高ソフトウェア・アーキテクトを務めるケビン・リンチ氏は、今回公開されたアルファ版では、Adobe FlashやFlex、HTMLがサポートされるが、完成品に搭載される予定の全機能が含まれているわけではないと説明する。最終版は、今年後半に提供される見込みという。

 「Apolloにはまだいくつかの機能を追加するつもりだが、アルファ版に搭載されている機能だけでも、試用や検証は十分可能だ」(リンチ氏)

 またリンチ氏は、同製品の技術内容は最終版のリリース前に「再調整」されるとしたうえで、今回のアルファ版ではAjax対応を実現していると述べた。

 現時点では、デンバーに拠点を置くコンサルティング企業エフェクティブUIがApolloを利用しているほか、イーベイのオークション・サイトと連動するデスクトップ・アプリケーションを開発している。

 イーベイが開発を進めているアプリケーションは、インターネットに常時接続していなくても、オークション・アプリケーションをデスクトップ上で動作させることができるという。

 オフライン・モードをサポートする他のWebアプリケーションとは異なり、Apolloアプリケーションはオフライン実行中に追加された情報を、ユーザーがインターネットに再接続すると同時にWebへ自動アップデートする。その際、ユーザーは何らかの特別な操作をする必要はない。

 Adobeは、Webブラウザとは無関係にデスクトップ上で動作させることもできるWebベースのアプリケーションを開発する新たな技術としてApolloを売り込み、Microsoftに対抗しようとしている。

 Microsoftも独自の戦略を展開し、開発者にWebアプリケーション開発ツールを提供し、対応アプリケーションをWindowsや自社開発環境と連動させる方針を採っている。

 リンチ氏によれば、AdobeもMicrosoftも同じ問題に対応するソリューションを提案しているが、それぞれのアプローチは大きく異なるという。

 「われわれは、デスクトップにおけるWebのプレゼンスを強化し、Web開発者が開発したアプリケーションをデスクトップにインストールできるようにすることを戦略の中心に据えている。あくまでもWebとデスクトップの距離を縮めることが目標だ」(リンチ氏)

 これとは対照的に、Microsoftは、アプリケーションを標準的なWindowsユーザー・インタフェースを用いて実行し、Webからの情報はそうしたアプリケーションを介して取得するというアプローチを採っており、Windows Vistaもそうしたコンセプトに基づいて開発されている。さらに、Webベースの「Windows Live」サービスをWindows OSと緊密に連携させる計画も進めている。

 Adobeのリンチ氏は、「当社とMicrosoftの考え方には違いがあるが、Webとデスクトップ・アプリケーションの橋渡しをするという目標は共通している」と述べた。

(エリザベス・モンタルバノ/IDG News Service ニューヨーク支局)

米国Adobe Systems http://www.adobe.com/
「Adobe Labs」サイト http://labs.adobe.com/

提供:Computerworld.jp