Novell、Microsoftとの歴史的提携の詳細を公表――「Microsoft Office」などの特許は使用許諾対象外

 米国Novellは5月25日、米国証券取引委員会(SEC)に提出した年次報告書に、Microsoftとの間で合意した3箇条からなる編集済み文書を添付し、同契約の詳細を初めて公にした。なお、年次報告書の提出が遅れる原因とされていたストック・オプションにかかわる社内調査は5月23日に終了している。

 公開された文書によると、Microsoftは今後5年の間に、ライセンス料金や販売およびマーケティング費用として数億ドルを支出する。例えば、「SUSE Linux Enterprise Server」のサブスクリプション費用として2億4,000万ドルを投じる予定だ。一方のNovellは、オープンソース製品から得た収入の一部を、Microsoftに歩合で支払うことになっている。

 Linuxの支持者らは今後、同契約がLinuxに何らかの悪影響を与える可能性や、MicrosoftもしくはNovellがリリース間近の「GNU General Public License(GPL)」バージョン3に違反していないかについて詳細に検討していくと見られる。GPLは、Linux OSの多数のコンポーネントが採用しているライセンス規約である。

 オープンソース陣営の有力者、ブルース・ペレンス氏も、Novellが同契約で得たものを正確に見極め、Microsoftによる特許請求を回避するためにLinuxベンダーが対抗手段を取る必要があるかどうかを確認したいと述べている。「われわれの信頼に対する裏切りがどの程度に及ぶのか、非常に気になっている」(ペレンス氏)

 Microsoftは、Linuxが256件に及ぶ同社の特許を侵害していると主張しており、今回の契約がNovell製品の利用者に特許使用を保証するものであることから、両社の提携がLinuxコミュニティにとって足かせになる可能性が高いと見られている。

 ペレンス氏は、「公表された文書にざっと目を通したところ、同契約がLinuxユーザーに完全な特許使用を保証している確証は得られなかった」と指摘する。

 「Novellは、Microsoftの特許権を完全には取得していない。例えば、Microsoft Officeなどの特許は使用対象から外されており、OpenOffice.orgやWINE、Open-Xchangeは名指しで適用除外の扱いを受けている」(ペレンス氏)

 Novellの幹部は、年次報告書提出に関するインタビューをかたくなに拒否している。ただ、同社の広報担当者ブルース・ロウリー氏は、インスタント・メッセージ経由で次のようにコメントしてくれた。

 「提携を発表した昨年11月の時点で、LinuxとWindowsのより効率的な連携、両社の技術協力、互いを告訴しないといった内容をすでに公式に発表している。Microsoftと提携した理由は、顧客の利益を確保することにある。同社との契約により、さまざまな製品のサポートが充実すると信じている」

 両社間で交わされた特許に関する契約は、MicrosoftがNovellに対していかなる特許請求も起こさないことを規定しているとされている。ちなみに、公表された文書のセクション3.4には、「本契約は、一方の当事者が所有する特許の有効性、法的強制力に制約を与えるものでも、他方の当事者によってそのように了解もしくは承諾されるものでもない」という記述がある。

 MicrosoftとNovellは、両社の提携により双方のプラットフォームの互換性が向上し、企業でのLinux採用が加速すると強調する。

 NovellのLinuxおよびオープン・プラットフォーム・ソリューション担当マーケティング・ディレクターを務めるジャスティン・スタインマン氏は先週、「Microsoftは、オープンソースとLinuxの敵というレッテルが貼られているが、同社はNovellのLinux事業における主要なパートナーであり、両社の提携はSUSE Linuxに大きな恩恵をもたらす」と発言している。

 「Novellのチャネル・パートナーの中で、2007年第1四半期に最高の成績を上げたのはMicrosoftだった。同四半期のSUSEの売上げ成長率は、前年比60%増となっている」(スタインマン氏)

(ロバート・マクミラン/IDG News Service サンフランシスコ支局)

提供:Computerworld.jp