PCLinuxOS、ハードウェア認定プログラムを開始
計画によると認定チームは、メーカー各社の製品モデルそれぞれについてPCLinuxOSの最新版を用いてテストし、互換性があるという結果が出た場合にはその製品モデルのパッケージに「Certified — Works with PCLinuxOS(認定 — PCLinuxOSで動作可)」というラベルを付けることを認めるとしている。また認定チームでは、最初のうちはこの認定テストをベンダの参加を得ずに行ない、ベンダからの要請の有無に関わらず結果をベンダに報告することを計画している。
PCLinuxOS認定となるための具体的な条件は現段階では未定だが、大まかな判断基準としては、組み立て済みのシステムに「出荷時の標準状態から手を加えない状態」で互換性があることと定義されている。HWDB創設者のJeremiah Summers氏によると「ベンダがデバイスの設計時に意図した通りの性能をPCLinuxOS上で発揮できること、あるいは、使いやすいインストーラを伴った、ハードウェアの性能を低下させることのないドライバをベンダが提供していること」を想定しているとのことだ。今後Summers氏は、PCLinuxOSコミュニティのボランティアと協力してこの認定プログラムに取り組む予定だ。
2段階の認定レベル
現在暫定的な計画として、2段階の認定レベルが設けられることになっている。一つは「シルバー」認定であり、ベンダのハードウェアがPCLinuxOSで動作するものの、ベンダはその互換性の維持について特にこれと言った取り組みを行なっておらず、場合によっては自社のハードウェアにPCLinuxOSとの互換性があることにさえ気付いていないというハードウェアベンダが該当する。一方ベンダが「ゴールド」認定を受けるためには、必要なデバイスドライバを配布したり互換性の維持に努めることによりLinuxコミュニティに対する積極的なサポートを示す必要がある。
Summers氏は、ベンダをシルバー認定することはデスクトップLinuxの認知度を高めることにも貢献するはずだと考えている。計画では製品のテストを行なった後、認定の取得を通知するためにベンダに連絡を取ることになっている。やや不意打ち気味であってもそのようにベンダに連絡することによって、Linux市場の潜在的な可能性をベンダが認識することも期待しているとのことだ。Summers氏によると「ベンダはまったく関心を持っていないように見えます。しかし私たちは大いに関心を抱いており、そういう私たちの存在がベンダにとっては考慮すべき存在であることを示す必要があります。これはベンダが好むか好まないかに関わらずベンダのハードウェアがLinuxで動くのだということをベンダに認識させる方法です。ベンダは私たちを無視することもできますが、すでに動いているハードウェアを活かして今後は意図的に『Linuxユーザのために、互換性があると分かっているチップセットを使いました』とアピールすることもできるのです」としている。
認定されたベンダには認定パッケージを配布する予定になっている。認定パッケージの内容は、まだ最終決定ではないものの、大まかには決まっている。「ゴールド」に認定されたベンダ用のパッケージは実質的に、感謝状のような証明書と、製品パッケージに付けることができる認定ロゴになる予定だ。一方「シルバー」に認定されたベンダは、ロゴなどと共に感謝状ではなく奨励書を受け取ることになる。
またシルバー認定パッケージにもゴールド認定パッケージにも、ベンダが自社ハードウェア上でブートすることのできるカスタマイズ版PCLinuxOSライブCDが含まれる可能性もあるという。このライブCDのデスクトップでは、PCLinuxOSについての情報とベンダのハードウェアについての情報が表示される予定だ。Summers氏は「どちら(シルバー/ゴールド)の認定においても、コミュニティの役に立つような情報をベンダから得ることができるように、ベンダと良い関係を築きたいと思っています」としている。
Summers氏は、理想的には、PCベンダが製品内のチップセットを変更する際に前もってそのことを知ることができるとよいと考えていて、さらにテスト用ハードウェアの提供を受けることができればなおよいと考えている。Summers氏によると、一つの製品モデル内でも警告なく製品で使用するチップセットが変更されることは珍しくなく、それによって同じ製品モデルを購入したユーザであっても他のユーザが経験しなかったようなLinuxとの非互換性を経験することがあるという。
より広範囲なデータベースを
Summers氏がこの認定プログラムを先頭に立って進めているのは、HWDBで掲げていたのと同じような目的からだ。当初「The Love of Linux(Linuxを愛する心)」と称されていたHWDBは、当時MandrivaやFedoraプロジェクトによって提供されていたハードウェアFAQに対抗する形で開始された。Summers氏によるとそれらのハードウェアFAQは、ユーザからの報告ではなく社員による報告が多かったという。それに対しSummers氏はユーザの経験を信用することによって、より幅広くより信頼性の高いハードウェア互換性データベースを構築したかったのだという。
HWDBに載っているコンポーネント/組み立て済みシステム/周辺機器などの種類は今はまだそれほど多くはないものの、日増しにPCLinuxOSコミュニティのための便利で信頼性の高い資料になりつつある。さらにSummers氏は、ユーザが報告した情報を利用して、PCLinuxOS開発チームに対してPCLinuxOSディストリビューションのハードウェア互換性を高めるような変更を提言することも行なっている。またSummers氏は、データベースはウェブ上で公開されているため他のディストリビューションでも是非活用してほしいとしている。
Summers氏がPCLinuxOS認定プログラムを始めたのは、ハードウェアベンダに対してLinuxカーネルチームが無料でデバイスドライバ開発を引き受けることを提案した、Greg Kroah-Hartman氏によるFree Linux Driver Development(無料Linuxドライバ開発)アナウンスにインスピレーションを得てのことだという。そしてこのKroah-Hartman氏の無料Linuxドライバ開発プログラムや、Linuxカーネルがすでに膨大な数のハードウェアをサポートしていることを考えてみると、Linux互換性を売りとして宣伝しているハードウェアベンダの数が現状のようにそれほど多くないのは驚きに値するという。自社の組み立て済みのマシンでLinuxを問題なく動かしているユーザを世界中に抱えるベンダのうち、マシンのケースに「Linux認定」を示す何らかのマークなりを示しているベンダはほとんどない。Summers氏は「おそらく彼らに必要なのは、あなた方のハードウェアはサポートされていますよという通知であり、そのような通知さえ行なわれればマシンに『Linuxで動作可』と記載し始めるベンダもいるだろう」と考えている。
他のディストリビューターの取り組み
ハードウェア認定プログラムはPCLiuxOS以外のディストリビューションからも提供されている。例えばNovellのYES CERTIFIEDプログラムは、PartnerNetプログラムとReadyプログラムの会員に対してSUSE LinuxとNetWareの認定プログラムを提供している。Novellのパートナープログラムの会員になるには、年間1,500ドルのシルバー会員から、年間数十万ドル相当の(Novellに対する)「直接的/間接的な売上貢献」が必要なプラチナ招待会員まで様々な料金体系がある。またRed Hatからも認定プログラムが年間5,000ドルの会員費で提供されている。Red Hatの認定プログラムの場合、ベンダが自らテストと結果報告を行なう必要があるが、一製品につき1,500ドルの追加料金を支払ってRed Hatにテストを依頼することもできる。
またMandrivaは、Mandriva社員がテストし互換性を評価した結果に基づくハードウェアデータベースを公開している。Mandrivaでは一パーツ/一周辺機器あたり500ドルから一サーバシステムあたり1,500ドルまで幅のある料金体系で製品を正式に認定するプログラムも行なっており、認定された製品にはユーザに対する最高レベルの推奨が与えられる。またLinspireのハードウェア認定プログラムはユーザからの報告に基づいて行なわれているようだが、Linspireのシステム構築者向け無料パートナープログラムの会員に対し互換性情報を報告するように呼び掛けている。またUbuntuもハードウェア認定プログラムを有料で提供している。
PCLinuxOSハードウェア認定プログラムは以上に挙げたような他の認定プログラムよりも明らかにコミュニティ指向となっている。したがってすでにPCLinuxOSとパートナーシップを結んでいるSeascapeやeLinuxstopのように比較的小規模なOEMやニッチベンダにとって魅力的なプログラムとなる可能性が高いだろう。