注目集めるストレージ仮想化技術――企業は管理コスト削減に期待、管理コストを95%削減した事例も

 増大するストレージ需要に悩む企業の間で、ストレージ仮想化技術への期待が高まっている。物理的なストレージ・リソースを効率的に活用でき、管理コスト削減が見込めるという点に魅力を感じる企業が多いようだ。

 カリフォルニア州サンディエゴで先週開催された「Storage Networking World(SNW)」でITマネジャーたちにインタビューしたところ、ストレージ仮想化技術によって技術コストと管理コストの両方を削減できたと評価する声が数多く聞かれた。

 バンク・オブ・アメリカ子会社のバンク・オブ・アメリカ・セキュリティーズ・プライム・ブローカレージも、ストレージ仮想化技術の導入を進めている企業の1社だ。同社は、複数のデータセンターを十分に活用できていないことが判明した2005年ごろから同技術に注目するようになった。

 同社のテクノロジー・ソリューション担当バイスプレジデント、ガリー・バーガー氏によると、仮想化技術を導入する前のストレージ・システムは、サイロ化されたストレージ、ディスク全体の不適切な割り当て、オーバープロビジョニングなどが原因で、管理面でもパフォーマンス面でも問題を抱えていたという。

 データ・アーカイビング、IPテレフォニー、ファイル共有、VoIP、ディザスタ・リカバリなどのホステッド・サービスをヘッジ・ファンドの顧客に提供している同社は、IBMや3PARdataの技術を使ったホステッド・サービス対応仮想ストレージ・システムを構築した。物理ディスクが256MBずつの固まりに分割されたためI/Oのスループットは改善され、洗練されたシン・プロビジョニングも可能になった。

 仮想化技術を導入するまでは、同社のストレージ・システムでは月に4~5回障害が発生していたが、1年前にストレージ仮想化技術を導入して以来、障害は起きていないとバーガー氏は語る。

 バーガー氏によると、仮想化モデルの採用後、同社のストレージ管理コストは95%削減され、ストレージ容量の追加需要も50%低下したという。同氏は、仮想化技術のサービス提供機能や障害回復レプリケーション機能を活用することで、さらにITコストを削減できると考えている。

 一方、カリフォルニア大学の医療センターであるUCデービス・ヘルス・システムは、HIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)を順守する取り組みの一環として、昨年末に仮想ストレージ・システムを導入した。HIPAAとは、医療画像や記録を安全に保管したり、移動させたりすることが可能なシステムの使用を義務づける法律である。

 同社のテクニカル・サポート/情報通信サービス担当ストレージ・マネジャー、アレハンドロ・ロペス氏によると、UCデービスの仮想化システムは、IBM Shark ESS 520とFAStTストレージ・サーバを接続したIBM AIXベースのメインフレームで構成されているという。

 UCデービスは昨年12月、新たに導入した日立データ・システムズのTagmaStore Universal Storage Platformのネイティブ機能を使い、メインフレームとテープ・ストレージを仮想化した。同医療センターは現在、かつては光ディスク・システムに保存されていた4TBに及ぶ心臓病関係の画像とPDFドキュメントを仮想AIX環境の中に保存している。

 ロペス氏は、「仮想化による低コスト・ストレージへの移行で、およそ40%のコスト削減を達成できた」と語っている。同氏によると、当初は仮想化技術がニーズにマッチするかどうか確信を持てず、500GBのデータだけを仮想ストレージに移行させる計画だったが、初期フェーズの成功を受けて移行データを4TBに拡大したという。

 ちなみに、SNWの会場で多くのユーザーと議論したロペス氏は、ストレージ仮想化の概念が完全に理解されていないことに不安を持ったと告白する。「仮想化のことを、ツールではなくソリューションと考えると誤解を招きやすい。すべてのベンダーが仮想化の意味をしっかりと念頭に置いておかないと、ユーザーは混乱してしまう」

(ジョン・フォンセカ/Computerworld オンライン米国版)

提供:Computerworld.jp