IBMとRed Hat、Linuxメインフレーム基盤の強化に向け提携――System zとRed Hat Linuxを最適化した統合製品を本格展開

 米国IBMと米国Red Hatは5月9日、IBMのメインフレーム「System z」で稼働するRed Hat Linuxプラットフォームの強化に向けて提携したと発表した。

 両社は、Linuxシステムのセキュリティや拡張性を強化することにより、メインフレーム・システムでRed Hat Enterprise Linuxを使用する政府機関や企業を増やしたい考えだ。

 今回の発表は、System zとRed Hat Enterprise Linuxを使った多彩な製品を投入する一連の構想の先駆けであるという。最初の統合製品は、機密データへの安全なアクセスを管理する必要に迫られている政府機関ユーザーをターゲットにしたものとなるようだ。

 両社のプレスリリースには、「Red HatとIBMのエンジニアリング・チームは、Labeled Security Protection Profile(LSPP)Common Criteria認証を共同で開発してきた。このオペレーティング環境は、データを保護し、適切な認可を得た人だけにアクセスを認める環境を、政府機関の顧客に対し高いレベルで保証するものだ」と書かれている。

 IBMのSystem z対応Linuxイニシアティブ・マネジャー、フランク・モネス氏は、メインフレームでRed Hat Linuxを使用することは従来から可能であり、すでに使用しているユーザーはシステムの運用に大きな違いを感じないかもしれないと説明する。

 しかし、両社がSystem zとRed Hat Linuxの機能強化に取り組み、Red Hat Linux用に最適化されたメインフレーム・プラットフォームが提供されるという意味は決して小さくない。

 また両社は、IBMメインフレームの専門技術者で構成されるRed Hatのテクニカル・スタッフによる顧客サポートの強化にも乗り出している。

 IDCのアナリスト、スティーブ・ジョスリン氏は、今回の提携がRed Hatの信頼向上に役立つと指摘する。IBMメインフレームとRed Hat Linuxの相性に不安を持つユーザーも依然として少なくないからだ。

 ジョスリン氏によると、IBMは、すでにNovellのSUSE Linux Enterpriseをサポートしているが、Red Hatとの提携関係はそれほど強固なものではなかったという。

 メインフレームのセキュリティ機能は、Red Hatのオープンソース製品を使いたいと考えている多くの企業や、すでに使っている顧客にとって魅力的だ。

 「System zプラットフォーム上でLinuxを稼働させるメリットは、セキュリティ機能を含むメインフレーム・アーキテクチャ固有の利点をすべて生かせることにある。また、メインフレームのデータを利用するLinuxフロントエンドを提供する作業も簡素化される」と、ジョスリン氏は評価する。

 今回の提携には、IBMメインフレームの支持率低下を防ぐという意味合いもあるという。「IBMは、メインフレームの普及に向けたさまざまな施策を講じており、学校や大学と連携して、メインフレーム環境の運用に必要なトレーニングの強化や技能の向上に務めてきた。System zのメリットを生かすための余地はまだかなり残っている」(ジョスリン氏)

 モネス氏によると、IBMのメインフレーム事業は、4四半期連続で売上高を伸ばしており、利用台数も7四半期連続で拡大するなど、順調に推移しているという。

 モネス氏は、「現在、Linux市場を支配しているのはNovellとRed Hatであり、この2社が市場の大半を押さえている」と述べ、両社との提携関係を深めることにより、メインフレーム上でLinuxを稼働させたいと考えている顧客に強いメッセージを送ることができるとしている。

(ジョン・ブロウドケン/Network World 米国版)

米国IBM
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提供:Computerworld.jp